おはら汁

水嶋かおりん著 『風俗で働いたら人生変わったwww』

2015/03/20 15:36 投稿

コメント:1

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私が運営人としてこき使われているFrameチャンネルの人気MCである性戯の味方・水嶋かおりんが、新しく本を出した。

風俗で働いたら人生変わったwww (コア新書)

この本は事前に話を聞いていた段階で気になっていたので、発売されたら是非買おうと考えていたのだが、なんとかおりんが 「あげますよ~」 と気軽にくれてしまったもんだから無駄に恩義が出来てしまった。 許せない! アタシそんな安い男じゃないんだから! 本1冊貰ったくらいでアンタの為に何かするなんてありえないから!

という訳で、近頃ブログ放置が酷かったので、今回は水嶋かおりんの著作『風俗で働いたら人生変わったwww』がいかなるものか解説しようと思う。

ただし、ネタバレになってしまっては申し訳ないので、具体的な内容についてはなるべく触れない。 あくまで空気とか雰囲気とかを感じていただければと思う。

で、いきなりこう言うのもなんだが、この本の内容はこれまでFrameチャンネルの放送を何度か見てくれた人にとっては 「またこの話か」 と感じてしまうはず。 なんせあの女は 「父親のDVが酷くて~、アタシ子供の頃からイタズラされてて~、14でレイプされて喪失して~、15で初めて身体を売って~……」 と、人の迷惑も(ついでに日本の法も) 顧みず何でもかんでも喋ってしまうタイプだからだ。

そのため 「この本のために今までナイショにしてきた隠し球を!」 といった要素は殆どない。 いつもの平常運転のかおりんである。 ただ唯一違うのは、放送中はいつもキャイキャイとぶりっ子キャラで語っているかおりんが、書籍ということもあって、非常に固い口調で自分と風俗について語っているという点だ。 ヤツの話す内容は一般人には非常に重く、普段のぶりっ子混じりの天然キャラ風の語り口だからこそ 「なんとか耳に入れられる」 ものなのだと痛感した。 かおりんに文章を書かせちゃダメなんじゃないかと思うほど痛え。 何かが痛え。 闇が凄いよかおりん……。

このままでは水嶋かおりんという女の業の深さや、触手でも飛び出しそうなドス黒いオーラや、身体を包まれた瞬間に即死しそうな真っ暗闇ばかりフィーチャーしてしまいそうなので話題を変えるが、序盤で特に印象的だった言葉がある。

「”媚び” は売るだけじゃ無意味だ。 売ったからには買わせろ」

水嶋かおりんという女の生き様や覚悟、そしてこの本の内容は、この一言に集約されているような気がしてならない。 ただ単に男に媚びを売るだけでリターンがないと、それは男に支配されて生きるだけになってしまう。 だからかおりんは男と無駄に張り合わず、必要であれば媚びを売り、売ったからには適正価格で買わせる。 この場合の適正価格とは何も金銭に限らない。 売った媚びに相応しい何かを得ろと言っているのだ。 逆を言えば見返りが期待できないなら媚びなんか売る意味がねえだろと。 これぞプロ風俗嬢(変な言い方だが) が心の均衡を保つための命綱なのだろう。 しかし考えてみれば風俗に限らず、セックスワーカーや水商売の女性、大袈裟に言えば男社会の中で生きる女性すべてに言えることなので、もしかすると世の女性が肝に銘じておかねばならない共通の 「健康に生きるためのコツ」 なのではなかろうか。

この書籍はタイトルだけ読むと風俗ネタに特化した内容だと感じるだろうが、中身を読んでみると決してそれだけじゃない。 むしろ本当に大事なテーマは 「女として生きるためには」 である。 女という性別を持って生まれてしまったからには、どうにかして女の身体で幸せに生きてやろうという気迫を感じるのだが、それはジェンダーとかLGBTとか、そういう性のお悩みといった次元の問題ではない。 もっと根本的な、負けたら死とでも言わんばかりの、生物として天から授かった身体を使っていかに生き抜くかという 「野生の王国かお前は」 というものである。 風俗がどうこうというより 「サバイバル術」 や 「戦場で生き残るノウハウ」 と言われた方がしっくり来るくらいだ。

かおりんは 「男に喰われるくらいなら喰ってやる」 という思考を持って以降、男性への恐怖や嫌悪、それ故の女性に対する嫌悪や、女の身であることの無力感などがス~っと消えて楽になったという。 そう、ハナから持っている武器が違うのだから、何も相手に有利な状況で戦う必要などない。 自分が手にしている武器のリーチや特性に合わせて、絶対的に自分が有利な状況に持ち込んでからドンパチやればいいというだけの話である。 それは至極正論だとは思うのだが、どうにも引っ掛かる。

確かにかおりんは風俗業界で働き、そこで心を病まずに生き残るためのコツを色々と身に付けたのだろう。 だがそれは 「得られた」 のではなく 「それ以外を捨てた」 とか 「それしかなかった」 という類のものではないか。 ごく一般的な女性の人生と比較した場合、もしかすると差し引きでマイナスかもしれない。 本当に恵まれた人生を送っている女性は、かおりんのようにサバイバル感など出さないし、そんなものを感じたことすらないだろう。 ついでに言えば異性をそこまで敵視する感覚が理解できないはずだ。 彼女は普通の世界で普通に生きているだけでは ”どマイナス” のままで、他に選択肢がなかったからこそ、題名の通り 「風俗で働いたら人生変わった」 のである。 よりキツイ言い方をすれば、彼女にとって 「風俗しかセーフティネットがなかった」 のだ。

風俗やセックスワーカー業界は、世間一般の尺度からすればあまりに特殊な世界である。 リスクが多過ぎて時として生き死にに関わる。 だからこそ普通に生きていては得られない知識や ”普通の人々” が思いもよらない発見もある。 だがそれは特に問題なく幸せに生きていられるならば、まったく必要のないものだ。 なんせ、その知識を得るために失うものが大きすぎる。 私もそもそもAV監督という出自ではあるが、裸商売の世界で得たものなど、わざわざ ”普通の幸せ” を捨ててまで身に付ける必要があるのかどうか判断がつかない。 私の場合はそこにしか居場所がなかったから、そこで必死こいて生きていた訳で、唯一の居場所で生き残るためには ”気付く” しかなかったというだけだ。 当たり前のように友人知人が自殺しただの行方不明になっただのする世界がマトモな訳がないし、他があるならそんな世界にわざわざ立ち入らない。 事実、他の道を見付けた途端に距離を置いてしまった。

かおりんがどう考えているか定かではないが、この本はセックスワーカーに偏見や差別意識を持っている人間が読んでも面白くもなんともないだろう。 むしろ暴論と受け取られ、単なる炎上案件で終わるかもしれないし、そもそも興味を持たれない可能性の方が高い。 またごく普通に幸せに生きられている人が読んでもピンと来ないはずだ。 私もどうせなら 「この本をキッカケにセックスワーカーに対する偏見が少しでも~」 などと言えればいいのだが、あいにく性根がねじ曲がっているので、そんなもん期待できないと考えている。 この本で偏見がなくなるようなら、もっと早くに他の何かで変わっていただろう。

この本を手に取るべきは、他の人と同じようにやっているつもりなのに、どうにもこうにも生き辛いとか、不幸な目にばかり遭うとか、いわゆる ”普通の世界” で ”普通に生きる” ことに 「ハードルが高い」 と感じてしまっている人である。 そうしたバッドエンドルート直行中の人にとっては、男も女も関係なく 「それ以外の分岐もあるよ」 と知れるという意味で、文字通り命の恩人になれる可能性を秘めている。 折ろう。 とりあえずバッドエンドのフラグを折ろう。

最後に、かおりんは繰り返し 「セックスワーカー=不幸ではない」 と主張しているが、かといって 「風俗で働けばみんな幸せになれるよ」 といった無責任かつバカげたことも言っていない。 彼女が言いたいのは、あくまで 「アタシは風俗業界に入って、やっと普通に生きられるようになったんだ」 であり、もっと極端な言い方をすると 「アタシはもう不幸じゃない!」 ではないかと受け取った。 この本のかおりんの言葉は、一見すると外に向いているようではあるが、実は自分自身に向けられているのではないかと感じてしまった。

なんかこう、目に涙を浮かべて、ムキになって自分に言い聞かせるかのように 「アタシもう不幸じゃないもん! ホントだもん!」 と言い張ってる感じ? かおりんカワイイよかおりん。 なんかそう考えたらキュンときた。


・水嶋かおりん著
風俗で働いたら人生変わったwww (コア新書)

コメント

nohostar
No.1 (2015/07/10 00:02)
たまに時間が出来たらぼくらもかまってください。
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