ニコニコチャンネルメニュー

ブロマガ - ニコニコチャンネル

大倉多紀小説創作

ファンタジー小説「楽園のピリオド 」1

2014/08/02 15:55 投稿

  • タグ:
  • 小説
  • オリジナル
  • ファンタジー
  • バトル

←プロローグへ



新緑まぶしく生い茂る森の中、炭焼き小屋に薪を集める少年は小屋の陰で手ごろな薪を一つ握り、遠くから自分の呼ぶ声も聞こえずに戦場の剣士ごっこに没頭していた。


「シキー!シキ!どこでサボっているんだい!」体格のいいふくよかな女性が、どかどかと音を立てながら鶏のなく頃に戻ってこない少年シキを低い大きな声で探し回っていた。

―――しまった!ど、どうしようこれ隠さないと。
シキは手に持った薪を近場の茂みに投げ入れると地面に置いた薪を背負い、さも山から下りた風を装った。

「シキ!なにやってるんだい!時間はとっくに過ぎてるよ!」
小屋かげからぬっとその大きな体で現れた女性は、この村で両親のいないシキを引き取ったガーナだった。

「あの……。あたらしい山菜場の様子を見に行ってたんです……。」
それらしい言い訳でこの場を繕うのは、ガーナ相手だとなかなか難しい。
無論、剣の練習をしていたなどと言った日には軒下の倉庫に閉じ込められ、次の日まで食事もとらせてもらえないありさまだ。

「ふん。それを入れたら、宿場に卵をもっていきな。そしたらその新しい山菜場から明日の分を取ってくるんだ。それが終わったまき割りだよ!」
「……はい。」

周りの子供たちが戦場ごっこや死神ごっこで遊ぶ中、そうゆうものには一切触れさせてもらえず、繕いや料理、山菜とりなど遊ぶ暇なく仕事を言いつけられた。
この村では、若者はすぐ戦場に行ってしまう。
親のいないシキは若い労働力として貴重なのだ。


「明日の王に!てやー!」「王はここだー!」「死神がきたそー!」「きゃははは」

鶏小屋から宿場までの途中にある広場ではシキより幼い子供たちが戦場ごっこをして遊んでいた。子供たちの人気は、今のところ話によく聞く聖国の王と鬼神王に二分している。

「聞いたか?昨日また扉がでたって」「なにあ?開いたのか?」「いやまたすぐに戻ったって」「またか。今回はどのくらいでたんだ?」「だいたい2年分ぐらいだろうって噂だ」「取りに行ったやつは?」「西は大部分撮り損ねたってさ。南に張ってる鬼神が一番らしい」「それは荒れるかもな。」

ざわつく宿場は、商人や戦場帰りやこれから向かうであろう軍人まで飯をまつ人々で席が埋まり、戦況や諸国の噂話でどのテーブルでも盛んに話し合いが持たれていた。


「ハウンズ。お待たせ」
「おおシキ!やっときたな」
「扉ひらいたの?」
「いや出ただけだって。結構な量の石が出たらしく商人達は忙しそうだ。」
「ふーん一番は?」
「ここの連中の話じゃ、エムニードの鬼神が一番手柄だったらしく、その次が聖国の姫さんだって。まぁ姫さんのところは信者達が多いからなー集めるのも簡単だろう。」
「西国(うち)は?」
「わからんが、少ないって話だ。鎌や斧は大事にしとけよ。」
「壊したらガーナに牢りにされるよ」


噂話なら宿場のハウンズが一番いい。
昔戦場に出たとき真っ先にけがをして食事係に回されたのをきっかけに村の街道沿いに店を出して兵士に人気がある。
ハウンズは商人たちの話をしながら壁の大きな地図に現在の戦況を逐一張り出していた。
シキは出された朝飯を食べながら壁にある勢力図と陣営予想をう食い入るように見ていた。

戦場の真ん中にある大きな石はこの世界と楽園を繋ぐ不思議な扉、と言っても普段目にするこの岩は本当にただの岩だが、時おり扉の形に変わるというのだ。
実物を見たことのある人間は少ないが、岩が扉になるとそこから刃物の元になる石が飛び出す。商人達は軍人達が集めるるそれらを取引し剣にしたり斧にしたりしている。
なぜそんなものが出てくるのか解明されれいないが、扉の中には大量の石や財宝があると信じられている。


「だからさー俺は王として戦場に行くわけよー。でもいまは親父がさー。でもさー。」

人一倍大きな声で回りに聞こえるように耳につく甲高い声で言い訳がましい話が聞こえてくた。「でもさー」が口癖のシキより大きな背丈だがヒョロッとした青年は、この村の長の息子で最近ではいつ戦場に行くのか腰ぎんちゃくの子分たちと盛んに話合い「自分は王になるために戦場に立つんだからこの村の若者は全て俺と一緒に戦場に行くんだ」などと大声で話している。
だが戦場に向かう気配は一向にない。
シキはもしかしたら自分もつれててもらえるのではと淡い期待を抱いていたが、そんなものはもろくも崩れた。

「おぃ。シ〜キ〜。いまこっち見てわらっただろ〜?」
「や、やぁノース。わらってなんていないよ。」
ノースは自慢話や言い訳の途中でシキを見つけるたびに絡んでくる。憂さ晴らしにシキの座る椅子をがたがたとけりったり揺らしたり、あげくには横倒しにして自分は強いんだ!なんて顔をする。腰ぎんちゃくたちはにやにやと笑いながらその様子を見ている。

「あ?なにか?下働きはおれさまの剣より強いってか〜?ぉうら!」
「おぃこら!店壊すな!」大皿料理に取り掛かっていたハウンズはカウンターの奥から大声で叫んだ。
「あーあ。よわっちー奴はいいよなー村にいれば守ってもらえるんだからさー!んーやるか?なまい…」
すこしでも生意気に歯向かおうとすれば、後ろの腰ぎんちゃくたちが一斉に立ち上がってこちらにむかっってくるが、喧嘩になる前にハウンズが間に入ることが多い。
だが今回はノースたちの近くに座っていた二人組の軍人がノースの肩をたたいた。

「ようにいちゃん!腕っぷしつよいねー。見てたよ~今の!さっきの話きいてたけどさ…」
「へ?あっ……はい?」

―――はやくいけ!
ノースが軍人に気を取られてるうちに、ハウンズが外に行くように手で合図し、シキはすっと宿場を抜け出した。


「よわっちーやつ」
ガーナにこき使われるシキの村での評判は、大人の間ではよく働く子でも子供の間では弱くて反抗できない奴だ。普段男のやらない裁縫や洗濯を行うシキの腕は女の子たちにも引けを取らない。手先の器用で頭もいいシキは大人の間でも下手に戦場にでられて怪我でもされたらせっかくの労働力が……とゆう暗黙の了解があった。

あまり裕福ではないガーナに育てられ、厳しくもしっかり作業を教えてくれるガーナ。
そして命を守られたのことはシキの心にここから抜け出すことの出来ない楔を打っていた。


―――ノースだって口ばっかりじゃないか。もう戦場に行ってていい年の癖に。
頬膨らませたシキは小さなころから歩き慣れた山道を歩き崖を降りた沢の近くにある山菜場までの荒道をすいすい上る。
ガーナから教えてもらった山菜場は大分手前だが、最近とれる量が減ってきたため森を抜けたこの場所までシキは歩くようになった。


―――よしよし今日もいい出来き。……あれこれ血……?
手を伸ばした先に落ちたどろっとしたものを見つけ、はっと顔をあげた。
ここには大型の獣が出たことはなかったはず。
山を歩き回るうちに出会う獣は、子供を育てる母親でない限り自ら襲ってくる事は無いが、目があった瞬間襲い掛かるほど一番凶暴なのは手負いの獣だ。

シキは撃退する武器を持たない。
結果、突進してくる獣をよけて逃げることに専念する。
ぎりぎりまで間合いを取り、突進してくる一瞬でよけ、避難できる大きな岩や木や崖に上る
。不意に襲われたとき逃げ切るとは限らない、相手よりの先にその姿をとらえることが必要だ。周囲を警戒しながら血の続く方へ音を立てないようにそっと歩くと、木の陰にかすかに動きを感じた。
ゆっくりゆっくり……。


「!おい!どうしたんだ!」

血の続く木の陰にいたのは、装備もよごれ剣を杖にぎりぎり体を支えていた衰弱した兵隊だった。
「おい!あんた生きてるのか?人を……!」
シキは兵士をのぞきこみ、人をよびに行こうと立ち上がろうとした。
「お……。」
兵士は、覗きこむシキの腕を最後の痛いほどの強い力でぎゅっとつかみ、シキを逃がさないよう引き寄せた。
「囮だ……新しい奴はみんな囮……罠に……みんな死んだ……さ、西王に殺された……」
「囮?西王に?だってお前の紋章も西国じゃないか?おいしっかりしろ!」
「あたしいやつらはみんな……お…おれ…のそうびやる…から…つたえてくれあの作戦は囮だ…だれも…残れない……」
生きも絶え絶えの兵士は、必死に訴えかけた。
そして、もうその口から声が漏れることがなかった。
「おい!しっかり……だめか。」

―――戦場で死ねずにここで死ぬなんて、やりきれなかっただろうに。こんなに衰弱して。あの戦場から歩いてきたのか。
歳はノースより上ぐらい、兜と胸当て剣は最後まで手放さなかった。
腕についた紋章は西国と黄色の葉。
黄色の葉は秋口に入った新参ものとゆうことだ。
装備資源の少ない戦場で、戦死したものはたいていその場に亡骸を残し装備一式を誰かが使いまわすことになる。
それを兵士以外が見つけたときには、その兵士が所属していたであろう国の兵士に渡されることが多い。

―――これが本物の剣。
亡骸を埋葬したシキは、少しだけ少しだけと回収した装備を身に着け剣を振ってみた。
「うわっ!ととと…。へぇー!全然違うな!」無邪気にも初めての武器の重さに感動を思えていた。
薪をどんなに振ったとしても絶対に持つことはないと思っていた剣をもてた気持ちを抑えきれず、山道の帰り途中に出くわした獣相手に必殺の剣を繰り出していた。
―――持って帰ったら取り上げられる。
楽しい時間はすぐに過ぎ、シキは薪を投げた茂み近くに剣と装備を隠し、家へ戻った。
「シキ!こんな時間までなにしてたんだ!」
「あ。」武器に感動し浮かれすぎて山菜を取ってくるのをすれたのだ。
ガーナは怒りのものすごい力でシキを引っ張り引きずって半地下になった納屋にの中に放り込んだ。


―――これは食事ぬきだな。
扉の開かない部屋で、シキは死んだ兵士の言い残したことを考えていた。
―――新しい奴…新兵ってことか?みんな囮…罠…殺された…西王に…だれも生き残れない作戦ってどんな……。
固い箱の上でいつの間に眠ってしまっていた。

何かの物音でうすぼんやりと目を覚ますと、外の陽はすっかり落ちていた。
扉の外では泣き叫ぶ女の声がする。
ガーナと幼馴染らしくしょっちゅう家に来ていたノースの母親だ。

「ノースが!戦場に行くって!西国の兵隊に見込まれたって!王への近道だからっていって家を飛び出したの!」
「ノースも男なんだ。戦場に行くのも仕方がない。」
「あの子は私の子よ!まだ子供なのに!」
「戦場に行ったて無事帰ってきてるやつのほうが多いじゃないか。あんたの旦那だってそうだろ。」
「でも…でも……」
―――宿屋でノースに話かけてた兵隊も西国だった。マントで二人組ってことは徴兵を探してるやつだ。さっきいってた囮ってノース達のことか!
「ガーナ!ガーナ!聞いてよ!囮にされるんだって!」ドンドンと扉をたたいても返事はなかったが、それでも叫びつづけた「ノースは囮にされるんだよ!だれも生きて帰れないんだ!」
「それはどうゆうこと?」扉の外からノースの母親の声がする。
「おばさん!死んだ兵隊に聞いたんだ!新しく徴兵されるは囮だって!生きては帰れないって!だから伝えに行かないと!ここを開けて!」

そうシキが叫ぶと、少しの間をおいてゆっくりガチャリと鍵の外れる音がした。開いた扉の外には目を赤くはらし、声も枯れ気味のノースの母親が立っていた。
「ノースはいつ出たの?」
「ひ、昼に……お願いあの子を……」
シキは無言でうなずくと納屋から勢いよく飛び出し、茂みにかくした剣と装備を持ちハウンズの宿場に駆け込んだ。
「おぉ?シキどうしたんだ、そんな格好で」仕事も一段落し、酒を飲む客らと一緒にパイプに吹かしていたハウンズは、突然兵士の格好をして駆け込んできたシキを見て目を丸くした。
「ノースは?」
「ああ!あいつらなら昼には戦場に行くって悪ガキたちと親父の装備盗んで、軍の早馬についていっちまったよ。お前も誘われてたのか。全く軍も送り出しぐらいさせろよなー。村から戦場にいくやつなんて久々なのに。」
「早馬だって?そんな……」シキは息を整えながら壁に貼られた大きな地図を見た。
「なんでも何個かの隊で共同作戦するらしくてな、集合場所までいくって言ってたぞ。」
「それはどこだって?」
「細かい場所まではわからんが、鬼神の陣がどうとか言ってたから、南に行ったんじゃないか?」
鬼神王と呼ばれるサーコダイラは南の最大派閥で、複数の拠点を持つといわれている。シキは壁の大きな地図で戦況を確認死ながら、隅に貼ってあった小さい地図を剥ぎ取り、あいさつもなく宿場を後にした。
「おい!シキ!どうしたんだ?!」
そんな声が聞こえるわけもなくシキは月明かりのしたを走り出し軍の跡を追った。


あとがき
2話へ→


コメント

コメントはまだありません
コメントを書き込むにはログインしてください。

いまブロマガで人気の記事