農家としては3、4か月、長くは半年以上かけて栽培した農作物を高く買ってもらいたいというのは当たり前だと思います。
しかし現状は、かなり安く農作物は買われているのが実情です。
その仕組みを市場の流れを含めざっくりと説明したいと思います。
なお、記載内容は私が直接市場で聞いた内容等を元にしております。
間違い等がございましたら、ご指摘をお願いいたします。
1.農産物の流れと手数料
①農家から農協、もしくは市場へ
農家からの農産物は農協に出荷、もしくは市場に直接農産物を出荷する。
農協に出荷を行った場合、手数料:十数% + 配送料
②農協から市場へ
農協に集荷された農産物は、農協が地方市場や中央市場等の価格、入荷量を見て
最適な市場に出荷
地方市場での農産物価格が安い場合は中央市場へ持ち込まれる場合もある。
③卸売市場から仲卸業者へ
セリ等が行われて、卸売業者に農産物が売られる。
卸売市場は原則どのような農産物でも受け取り拒否が出来ない。
代金は3日以内に支払い
手数料:8.5%
ここでの売買価格ー手数料が農家への収益
④仲卸業者から買出人へ
箱での出荷物もあるので、小分けに袋詰めや買出人の要望により個数を個別に設定
手数料不明
※基本的に手作業の為、
買出人から消費者へ
手数料不明
以上が昔の基本的な流れです。
今は、上記システムが崩壊している為、更に農家にとって厳しい状態になっています。
2.儲けが少ない農業システム
ここからが本題、上記を踏まえた上で問題点を上げて行きます。
問題点1:手数料
市場で1000円で売れた場合、手数料+配送料+箱代等を合わせると農家の手元に残るのは
大体700円前後。3割ほど目減りする。
農協を通さず、市場に直接持ち込んだ場合、農協手数料は掛らないが遠くの市場に運ぶ場合
配送に時間が掛り手数料の代わりに時間を消費する。
問題点2:価格設定
農家はどんなに経費や人件費が掛っても、農産物に費用を上乗せ出来ない。
価格決定権は市場にあり、農家は口出し出来ない。
この為、理不尽に値段が下げられた場合は泣くしかない。
また、肥料や種代等経費が上がった場合でも価格が上がる事は無い。農家が我慢する。
問題点3:セリがほとんど行われない
昔は八百屋等たくさん存在していた為、セリが行われていたが、現在は行われていない。
市場は大規模に仕入れを行う大手スーパーの仲卸バイヤーの権限が強くなり
要望が通りやすい。
(参考:東京のある市場でのセリは野菜、果物含めて全体の1割)
価格の決定は卸売業者とバイヤー間で決まる。
セリが行われるのは初セリや急な持ち込みに対して行われる。
急な持ち込みは大体安値。買い叩かれる。
問題点4:個人が高品質な品を納品しても価格に反映されない
安定供給、品質のバラつきが少ない、市場の要求が通りやすいとの理由で価格優遇は、
農協 > 個人での持ち込み(市場に連絡済) > 急な持ち込み
問題点5:売れ残りの理不尽な扱い
売れ残りは、他の市場に流すか、大手スーパーに安く買ってもらう。
市場としては次の日にも入荷がある為、残すと場所も取り鮮度も低下、また売れ残る
可能性がある為、なるべくその日の内に売りたいそうです。
勝手に安くするなと言いたいが、別に違法でもなんでもない。
問題点6:等級検査
農協が行う品質検査。名目は品質を高める為だが、明らかに価格を安く抑える為に
導入したようにみえる。
A品:導入前よりちょっと高い
B品:導入前より価格が低い
C品:加工用、理不尽な値段設定。規格外品
大まかに1つの畑で取れる農産物は
A品は数が少なく、B品が大半、C品は多いと半分近く出来る事もある。
問題点7:豊作だと野菜の値段が下がる
豊作だと農家は儲かるというイメージがあるが、実際には暴落する事が多い。
市場に来る野菜が1割多いと暴落、1割多いと急落すると言われており、
今年のように10月11月が温かいと野菜が急成長し、時期をずらして作付した野菜も
一斉に大きくなる。この為、市場に流入する野菜が増え大暴落を起こす。
去年の1.5倍出荷しているのに収入は去年と変わらないとか結構起きる。
農家が儲かる場合は、自分が大豊作、他が大凶作にならなければ大儲けは難しい。
しかも収穫量が減ると市場が判断すれば、海外から輸入する事もある。
まとめると農家は
・農作物を売るのに、かなりの手数料が掛る。
・価格決定権が無い。しかし市場からの要望は、結構ある。
・豊作でも利益が多くなる訳では無い。
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