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のすじいのそーさく日誌141・・魔王の眷属Ⅳ(小説擬き)・・

2019/10/08 02:42 投稿

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其処は・・あまり繁華とは言えぬ街の片隅に

忘れ去られたように在る小さな建物。
季節ごとに葉の色を変える何本かの老いた木のみが
其の境内に彩を添えているばかりの人気の無い社(やしろ)。

古ぼけた鳥居から社(やしろ)までの参道は
特に鬱蒼と茂った名も知られぬ広葉樹で覆われていて
真昼でもぼんやりと暗い細道に成っていた。

$のすたる爺の電脳お遊戯。

音も絶えたような初夏の午後4時過ぎ・・
此の景色にはあまり似合わぬ、若い女・・いや・・
まだ娘と言うにはあまりに子供こどもした=少女=が
其の初々しい顔立ちや肢体に似合わぬ
何処か暗くさびしい表情で、独り其の参道を
俯(うつむ)きながら、上っていた。

歳のころは、そう、まだ16~7と言った所だろうか

だが、其の服装は妙に派手で、何処か崩れたもの。
夜の巷で媚を売る女性のような匂いを漂わせるもの。

其れがある程度、似合って見えてしまうあたりが

此の=少女=の憂い顔をさらに暗いものに見せていたかも知れない。

・・あたし・・何で・・
いまさらこんなこと・・してんだろ。

少女は、重い足取りで参道を登る途中、
ふと、疲れを覚えた表情で、誰にとも無く呟いた。

まさか、其の独り言に返事が返ってくるとは思いもせずに。

「其れは、贖罪ですか?・・其れとも・・ああ、そうか・・
 貴女たちの思う=ほとけ=の流儀で言えば・・供養?」

愕然として振り向いた彼女のすぐ後ろに其の声の主は立っていた。

・・誰も、・・誰も居ないような神社・・だと思ったのに・・。

少女が心中に漏らした驚愕の言葉を捉えたかのように
其れは白昼の木下闇(このしたやみ)よりなお暗い・・
黒羅紗(らしゃ)のような深い細やかで密度の高い声で囁(ささや)いた。

「何れにせよ・・貴女のしようとしていることは・・ああ、
 誰の許しも適わない類のこと・・ではないのですか?」

其の姿も、初夏の季節には凡そ合わぬような黒ずくめ。
しかもご丁寧に貌も黒い美髯(びぜん)で半ば覆われ
目は全く視線の覗えぬ黒眼鏡で覆われている。

そして、其の言葉も、口調こそ丁寧で穏やかだったが
声には冷徹で容赦のない・・厳冬の風のような匂い。

「あ、あんた・・誰よ!・・いったい・・何の・・」

驚愕と本能的恐怖で、思わず喧嘩腰の口調になった彼女を
下の石段に影のように佇立した其の=黒の男=は
殆ど同じ高さ、いや、其れでもまだ高い位置の目線で
睥睨するかのように無言で見つめ・・突然、=歌い=始めた。

♪通りゃんせ 通りゃんせ 
 此処(ここ)は・・
 何処(どこ)の・・細道じゃ・・♪

絶句して、思わず怒気を沈めた少女に向かって
其の=黒の男=は・・今度は何処か憐憫を含んだ笑いを見せた。

$のすたる爺の電脳お遊戯。

「 此のうた・・ご存知ですか?・・古いわらべ唄・・
 と、言うことに・・今では成っているようですが。
 ああ、貴女も、以前は唄ったのでしょうね、なんの気もなく。」

少女といっても良い年恰好の其の=娘=は、
男の突然の言葉にさらに戸惑い、何かを恐れ、・・絶句する。

「しかし・・本当に宗教者とは・・始末に負えぬというか
 底意地が悪い手合いですな・・小生の眷属も顔負けなことを
 時として行い、本質の痕跡を隠してしまう・・・。」

=黒の男=の声に幾分の揶揄のようなニュアンスが漂い始める。
そして、佇立する彼女のみを聞き手に・・独白は続いた。

「♪此処は何処の細道じゃ・・
 其れは=天神=に続く細道・・と、続くのでしたね。
 
 天神様とは、あなた方の一人と申しますか
 古い時代に生きた=人間=だったものが
 非業と怨嗟の死を遂げたことによって
 生まれた=カミ=なのですが・・・
 いわば、=カミ=の=レプリカ=です。

 其れにどれ程の呪力や霊験があると?」

 会話の突然の飛躍に、其の若い娘は更なる困惑を覚え
 呆然と立ったまま、男の話術に引き込まれていく。

「 実はね、其の=天神=とは・・
 本来=転神(てんじん)=。
 
 人が=カミ=に変わる、いえ、

 変えられる事を意味するのですよ。
 
 人間は不思議と賢い、そして、狡猾(ずる)い。
 =カミ=に変えるとは良くも言ったものだ。

 ああ、=人柱(ひとばしら)=なぞと言う言葉・・
 貴女は・・ご存知ありませんか?
 
 ああ、知らぬ・・無理も無い・・貴女の若さでは、ねえ。


 其れはね、何か成し得ぬほどの事を成さんとするとき
 =ひと=が=ひと=の信じたもの、=カミ=に対し
 最良のものとして捧げた=贄(にえ)=の事でしてね。

 其の=贄(にえ)=の行為を婉曲にぼかして
 =転神(てんじん)=する、させる、と言ったのですよ。
 
 天神さまの細道は・・死への階段・・だったのですな。

 =贄(にえ)=として捧げられる=にんげん=の。」

呆然と立つ彼女の全身を、初夏とは思えぬ冷たい空気が包む。
心なしか遅い午後の木漏れ日の色さえ何処かくすんだかのよう。

「そりゃあ・・♪ちょっと通して・・と言っても
 ♪御用のないもの・・は、通せませんよねえ。
 
 いや、通りたくもないですよねえ・・そんな=道。=
 
 でもね、其れでも其処を通っていくものは居たのですよ
 其れほど多くは無かったものの・・ね。
 そう・・殆どがあなたのような・・=おんな=の方でしたか。」

=黒の男=は、其の覗えぬ視線で遥か遠くを見た。
そして、さらに深く重く黒くなった=闇の声=で続けた。


 「遠い昔・・=転神(てんじん)=させられた=贄(にえ)=
 其れはね、大概の場合、無垢で稚(いとけな)い・・・
 世俗の汚れがない故に、一番=カミ=に近いと思われた
 =こども=や=乙女(おとめ)=が主(おも)だったのです。

 =乙女(おとめ)=、まあ、娘の場合は、まだしも・・
 ご本人の意思は兎も角、何故自分が捧げられるか・・
 其の理由くらいは理解できたでしょうから・・
 其の慟哭や憤りは深くとも、諦めもし、中には・・
 自発的な勇気を奮って献身した子も居たでしょう。
 
 =にんげん=とは、ある意味、真に恐ろしい・・
 そして気高く、理解しがたいものなのですから。

 ですが・・其れが=こども=・・いたいけな子供の場合・・
 小生たちの眷属でも憐憫を覚えるくらいに
 其の光景と其れに続く物語は哀切を極めるもので。」

何故か、其の少女の肩先が、細かく震え始めていた。
そして、其の表情はどうしようもないほどの内面の葛藤を
必死に堪えるかのような苦悶の其れに近づいていた。

=黒の男=の独白のような=物語=は、なお容赦なく続く。
木下闇(このしたやみ)の古い社(やしろ)の参道で

$のすたる爺の電脳お遊戯。

すべての音が幽かになり、景色の色が褪(あ)せて行く。

「まだ、何も知らず、母に甘える事が全ての=こども=
 其れが、泣き叫ぶ母の手から無残に奪い取られるように
 引き剥がされ、つれさられ、まるで何かの神輿のように
 引き回され、晒されてのち・・=命を絶たれる=。

 =贄(にえ)=になった=こども=も哀れを極めますが
 それ以上に哀れで切ないのは・・=母(はは)=。」

$のすたる爺の電脳お遊戯。

男は、大きく溜息を吐くと其の美髯を幾分辛そうに撫ぜた。

「=贄(にえ)=になった子が此の存在平面から
 永久に失われた、奪われたと判っていても
 こころは納得など出来はしなかったのでしょうね。

 母とよばれた=おんな=たちのなかでは
 失われたわが子は永遠に、可愛く、愛らしく
 日々を重ねるごとに育っていくのですから。
 
 其の子が捧げられた日が、繰り返し訪れるたび
 母は、其の=贄(にえ)=の亡骸の打ち捨てられた
 そう、=転神(てんじん)さま=へ続く=ほそみち=を
 精一杯の己が思いと子に与える品を携えて通ったのです。

 乳飲み子の母は己が乳房を亡き子に含ませんとさえし
 貧しい母は精一杯の馳走、白いご飯のお結びを携え
 また、我が子が喜んだであろう玩具を手にしてね。
 
 決して忘れることなく、ですが、人目を憚りながら・・
 こういう=ほそみち=を・・通い続けて・・
 そう、七度目の通い路を重ねたときにね・・」

=黒の男=の幾分情感の篭った声に、初めて・・
彼女、其の、何処かやつれたような、少女のような女が応える。

「・・この子の・・ななつの・・=お祝い?=・・・」

=黒の男=は、此れも何処か達観したような声音で応じた。

「そう、七度目の通い路・・七(なな)と言う数は
 古(いにしえ)から奇妙な力を宿すと言います。

 まあ、八(はち)と言う数(かず)が完全を意味するなら
 七(なな)は其れに届かぬ永遠の渇望なのかも知れず。
 
 ああ、其のとき・・大概の=母=はね、お嬢さん。
 こう、何者かに願ったのですよ・・殆ど例外なく。

 ~此の子の七つの=○○い=に・・私の願いを叶えて下さい。

  此の子が再び戻らぬのなら・・ああ、戻らぬのなら

  私を此の子のもとにお連れ下さるように・・~」

 ♪行きはよいよい 帰りはこわい・・

「其れでも、どんなに怖く哀しく切なくとも
 あの=おんな=たちは・・通っていった。」

 ♪怖いながらも 通りゃんせ とおりゃんせ

「小生はね、其れを見て、不覚にも泣いてしまいました。
 本来、小生たちには涙なぞ赦されてはいないのですが、ね。

 此の映し世(現世)に長く居ると、あなた方、人間の・・

 ああ、そんな処まで伝染(うつ)ってしまうのでしょうか。

 ですが、其れは不快なことでは無かったですけれど・・。」

=黒の男=の声は・・一瞬、異様な重さと深さを増し
立ち尽くして震える其の少女のような=おんな=に
静かだが突き刺さるが如き鋭さで・・投げかけられた。

 「其れでも貴女は・・今、思っている事をなさいますか?
 ああ、其れが避けえぬ事情は、恐らくお在りなのでしょう。

 ですが、其れをなさったなら小生は、貴女を・・
 いや、正確を期すならば・・小生の眷属が、ですが・・
 
 生を終えんとするときの貴女を・・あの永劫の奈落の
 底の底にお連れしなければならなく成るのですが。

 其れでも、貴女は、ご自分の手で・・其れをなさいますか?
 慈しむ手ではなく、殺める手を選ばれますか?

 ならば、せめて・・此処の社(やしろ)に
 =赦(ゆる)しを請うのはおやめなさい。

 そう、此処は・・母から奪われ、葬られた=贄(にえ)=が
 其れを追って逝った母と眠る・・そんな場所なのですから。」

=黒の男=は其の影を翻すように石段を音もなく駆け下り・・
少女は無言で泣き崩れて、参道の石段の半ばに蹲(うずくま)る。
 
先ほどまで止んでいた夏蝉の声が・・再び、
木下闇(このしたやみ)の暗がりに響き始め・・・

 「ごめんなさい・・ごめんなさい・・ごめんなさい・・」

すすり泣く様に繰り返す細い声だけが
鳴き交わす蝉たちに応えるように静かに続いていた。

   ♪通りゃんせ とおりゃんせ 此処は何処の 細道じゃ
   転神(てんじん)さまの 細道じゃ
   ちいと通してくだしゃんせ 御用のないもの通しゃせぬ
   此の子の七つの弔いに 我が身を捧げに参ります♪

遠く低く、あの黒羅紗(らしゃ)のような=闇の声=が
唄う声が聴こえたのは・・彼女だけだったのかも知れない。

  ♪行きはよいよい 帰りは こわい
    こわいながらも 通りゃんせ とおりゃんせ・・♪ .

通りゃんせ 緑咲香澄(CeVIO)

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