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のすじいの小説もどき・・どれみふぁ・らぷそでぃー③

2019/09/13 01:52 投稿

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「あの子・・なかなか可愛いとこ・・ある子だなあ
 ・・うん、素直だし・・音も性格も。

 まだ2~3回在っただけの俺なんか・・真顔で心配してくれて・・・
 そ、其れに・・ああいう小さいのって・・妙に=好き=なんだよな俺(笑)。」

大講堂階段踊り場でお手当してくれた先程のちいさな看護婦さん(笑)の
真剣であどけない表情など思い浮かべ、珍しくちょいと照れくさそうな顔で
夕暮れの板橋の商店街一角を闊歩する大きな影がひとおつ・・・

$のすたる爺の電脳お遊戯。

其れは、立ち去った後の現場(笑)での予想外の展開なぞつゆ知らぬ・・=先輩=。

此の、のほほん男は都営6号線に飛び乗り・・数駅を経由して
板橋のちょっとしたアーケード商店街が近くにある駅で下車し
ちょいと浮かぬ顔をしつつも、かつて彼が1年ほど棲み暮らした
あの時代でも珍しくなった賄い付きの安下宿に向かっていた。

・・なんか、懐かしいな・・あの四畳半と冷たくなったお櫃(ひつ)の飯・・

彼自身、其の賄い付き下宿が合わずにおん出たと言う訳では無い。

夜のバイトで生計を立てはじめて以来、時間の決まった夕飯に在り付けなくなり
あまりにもちと不合理と思ったことと・・銭湯に通う暇が無くなり
無理してでも好きな時に体の洗える環境を求めたことが其処を出た原因であって
下宿の大家、兼、賄(まかない)の=おっかあ=にはある意味可愛がられ
彼自身も家賃滞納することも無く、良好な関係を続けていたのだから。

・・=おっかあ=元気かなあ・・相変わらず大盛り食わせてんだろうか・・

$のすたる爺の電脳お遊戯。

妙に懐かしい万年青の鉢が並ぶ玄関を入り、雑然と溢れた靴の隙間に
器用に自分の靴を脱ぐあたりは手慣れた元住人の行動・・・
管理人と言うか大家の本宅に繋がる廊下にある呼び鈴を鳴らす。

夕飯時とあってちょいと忙しげに割烹着で出てきたのは中年の婦人。
妙にエネルギッシュで明るい感じは数年前のまま、だ。

「誰?・・あらあらあら・・○○君じゃないのぉ・・ひさしぶりねえ。

 あら、どうしたの?怪我?・・気を付けなきゃ駄目じゃない」・・・
でも、まあ、すっかり大人っぽくなって・・もう4回生・・あら・・そう・・まあ・・」

懐かしがって饒舌になる=おっかあ=に一礼すると
=先輩=は此処に来た目的を告げ、其の新入生の部屋を聴く。

「・・そうなの、後輩さんなの・・偶然、○○君の居た、二階の角部屋よ。
さっきご飯食べて上がって行ったから・・居ると思うけど・・・」

お騒がせはしませんから呼んでもらえますか・・
いや・・宜しければ部屋尋ねて直接話したいんですが
・・ご迷惑はかけませんから・・と、礼儀正しく話す=先輩=を
柔らかい視線で見ていた=おっかあ=は
○○君もほんと、大人になったねえ、と微妙に感慨深げに頷(うなづ)き

「上がって・・ただノックはしなさいね・・一応、此処の部屋は=家=なんだから」

そう言い残すと、母屋の食堂から聴こえてくる
住人学生の声に応え忙しげに引っ込んで行く・・

相変わらず元気で良く動く=おっかあ=だ、と幾分の感慨に耽りつつ、
=先輩=は其の逃亡新入生の居室に向かった。

見慣れた懐かしい部屋の引き戸には段ボールに手書きで=桃川=。

・・・みんな、最初に此れやるんだよなあ・・表札作り・・来てすぐに・・

$のすたる爺の電脳お遊戯。


独り暮らしの自由への歓びと不安が具現化したような月並みの行動
ふっと笑って引き戸を叩くと・・中からちょいと弱弱しい声が返ってくる。

「誰・・・大家さんですか?・・」 

どことなく不安げな響きの声である。

「あ、夜分にすみません、俺、○大の吹奏楽研究部の○○と言うんだが
突然で申し訳ないけど・・ちょっと話出来るかな・・桃川君。」

部屋の中から少し躊躇したように幾つかの物音と息遣い・・・

・・そりゃあ、そうだ・・いきなり先輩押しかけて来るんだから・・
でも、体育会なら・・有無言わさず此の戸開けてるけど・・

まあ、うち一応=音楽系=だし・・
其れにこの坊やの気分もまんざら判らんでも無い・・

まさか此のご時世に竹刀ぶん回して
びっしばしぶっ叩くブラスバンドなんざ、大學にしか・・・

=先輩=が、ふと、出てこないならこのまま見逃してやっか・・と
如何にも此の、のほほん男らしい、同期の幹部に言わせれば
=甘い=行動に出るのも・・・其れほど悪くも無いかな、
いや、駄目か・・・なぞと思案しつつ軽く何度か
無意識に首を振りながら如才無げに引き戸の前で待っていると・・

「あ・・あの・・やっぱり退部したいって・・言ったからですか・・・」

$のすたる爺の電脳お遊戯。

先程より更に弱くなった声と共に、其れでも引き戸が半分ほど開いた。

其処にはちょいと天然のウェーブが掛かった髪の毛の
線の細そうな、だが性格の良さそうな若干暗めの印象の坊やが居り
真剣に結構切羽詰った表情で此方を・・上目づかいに見て

何故か、急に顔を赤くし・・息をひくひくさせ・・・いきなり・・=吹き出す=

流石の=先輩=も、此れは非礼と感じたのかそれとも単に驚いたのか
ちょいと眉をひくっと動かして・・威圧する様に顔を近づけて

「何だ?・・俺の顔に何か・・笑える要素でも
顕在(けんざい)してるのかい?・・君(きみ)・・」

微妙に哲学科っぽい語彙も交えて詰問口調で迫れば
其の坊やの笑いは更に激しくなり苦悶の域に近づいて行き
そして、必死に涙目で・・何とか口をひらくと・・・

$のすたる爺の電脳お遊戯。

「・・せ、先輩?・・その・・おでこ・・な、何ですかあっ?
僕のこと、笑わせにわざわざ来たんですかあっ・・」

そう言いつつ=先輩=を部屋の中にすんなりと迎え入れ
震える手で壁のちょい洒落た男性化粧品のおまけらしい鏡を指し示す。

=?(はて?)=・・と思いつつ=先輩=がその鏡を覗き込むと・・其処には・・

見慣れたのほほん顔の上部、さっきまで念のために、と
弓丘嬢が上に軽く抑えるように貼ってくれていた薄いガーゼが
いつの間にか落ちており、横一本の切り傷を覆うように額一面にぺったり貼られた・・
大判の白い薬剤塗布済み医療用カットバンもどきが一枚。

で、その上に・・ピンクのサインペンらしき達筆な文字が
鏡文字に成って・・麗々しく見事に書き込まれていた。

「いたいの いたいの とんでけぇ~ (はあと)」

$のすたる爺の電脳お遊戯。

文面を把握し、状況を理解し・・大きな溜息を一つ吐いてのち・・
=先輩=は思わず絶望的な脱力感に満ちた悲鳴を上げた。

「・・・ゆ、ゆ、弓岡ぁ~~~  勘弁してくれぇ~~・・・・・」

後ろで逃亡者候補の1年坊やが堪えきれずに再び吹き出すように・・笑った。



「で、・・結局・・桃川のやつ・・戻るって・・か・・あ、其れポン」

「牟田口さあん・・また、ドラっすかあ?勘弁してくださいよお・・」

「ああ、まあ、あそこまで笑っちまうと・・力が抜けたんだろうなあ・・
 理由はやっぱ、此の額の傷ってえ・・事みたいだったけど。

 まあ、あれは=不幸な事故=だったって・・力説して・・
 納得させたから・・明日来たら・・あんまり責めんように・・
 
 =統制=の蒼(あお)には・・言っといて・・くれんか・・山内よお。


ああ、此れ・・通らんかなあ・・通らばリーチっ・・」

$のすたる爺の電脳お遊戯。

「おっ 危険牌ど真ん中・・、牟田ぁ・・弱いのお、当たらんのか?」

「うわあ~、其れ切るかあ?此の終盤で?・・素人は怖いべなあ・・」

「駄目だ、こりゃ・・=先輩=運、強いっすねえ・・さっきから・・えいっ」

「むっふっふ・・リーチ一発タンピン一盃口(イーペイコー)ドラ1(いち)っ
 跳ね満決定っ・・必殺っ=ピンクいたいのとんでけビームっ=
 見たかっ、天下御免の向う傷、人呼んで=吹奏退屈男=っ。」

此の兄ちゃんは幾つだ?と思うような古い時代劇の台詞を添えて
ウルトラセブンのエメリューム光線ポーズで額を麻雀卓上に突き出し
対面の後輩、テナーSAXの高橋に妙な顔芸を決める。

全員がぶっ、と吹き出し、其の後なんとも脱力した笑みを漏らし
無言で洗牌を始めつつ妙に和やかに集う其の夜のひととき。

深夜ほど近い板橋区役所前の安い学生アパート。
後輩、SAX吹きの高橋の部屋はちょいと隔離された離れのような
増築の過程で出来た6畳間で麻雀にはもってこいの環境。
周囲気にせず徹夜で打てる廉価の貸切雀荘のような様相で
10日に一度は卓が立つ吹奏の男どもの隠れ社交場でもあった。
無論場代は食い物や酒、時に煙草のカートンに流行のエロ本まで
現物支給の持ちよりなのは如何にもこのころの貧乏学生ならでは。
中でも=先輩=の故郷の名産、日本酒と米は人気の場代だったりした。

思ったより早く牛丼5人前抱えて現れた=先輩=を
手ぐすね引いて待ち構えていたのは此の部屋の主(あるじ)に
先程の牟田口、同期で=主将=の山内と=管理=の深沢。

無論麻雀が本来の目的だが・・真の話題は別に在った。

「いやいや、=哲(てつ)=よお・・俺は嬉しいぞ・・
 お前(めえ)にもようやく=春が来た=って聞いて。」

「はあ?山内?・・何(な~に)が言いたい?・・おめえ。」

「何ってよお、まだ一カ月の新人と、おめえ、階段で(笑)」
「ねえ、ねえ、ねえ・・どんな子?・・可愛い系?それとも美人?」
「哲つぁん、木管の女に手ぇ出すのにリーダーの俺に挨拶なしかぁ?」

微妙な揶揄と笑いを含んで始まった興味津々な野次馬どもの質問は
=先輩=の額のナニ・・ピンクの流麗な女文字を全員が確認するに至り・・・
そして、其の顛末を微に入り細を穿って聞き及ぶに至って・
周囲に響き渡らんばかりの大爆笑と脱力を呼んであっけなく終了する。
締めは、SAXの牟田口の呆れたような一言・・・

「やっぱ、哲つぁんに限って・・まあ、まさかと思ってたけどなあ。」

と、言う、ある種予定調和な台詞めいた言葉だったのだが・・

だが、其の後の麻雀卓でも、何故か・・・
額のピンク文字付きカットバンを面倒だからと言い張って
あえて剥がそうとしない=先輩=の態度を見て
=管理=の深沢だけは、ふっと何か違う予兆を覚えたようだった。

此の深沢と言う兄ちゃんは、此の吹奏には希少な=お洒落系=。

実家は結構大きな名刹寺院、それゆえか結構優雅な学生生活を満喫中で
住まいも兄弟で同居ながらも都心の3DKマンションと言う
いいとこのボンで打楽器のパートリーダー・・ティンパニ叩くのが得手。

其の上=管理=と言う役職柄、演奏会やバイトの際には
楽器運搬のため2トントラックを自らころがすと言う都合上運転免許もちで・・
しかも、この大学では更に稀な=自家用車=所有の学生なうえ
身長は普通ながら細身のちょいカッコいいモデル系の美青年体型
ルックスも長めの睫が微妙に女性っぽいと言うか中性的な美男顔に
インテリな雰囲気の眼鏡が妙に似合う、如何にもなモテ男の風情で
事実、天性のプレイボーイと言う噂の堪えぬ=いろおとこ=でもあった。

$のすたる爺の電脳お遊戯。

ただ、此の兄ちゃんは決して吹奏楽部内の女子に声を掛けることは無く
部内では優しくちょっとフェミっぽい繊細な先輩の顔を演じながら
近隣の女子短大や専門学校、女子高のお嬢ちゃんたち複数と
結構ヨロシクやっていると言う硬・軟派うまく取り混ぜたとこのある
=先輩=の同期じゃ頭抜けて=大人な男=でもあったのである。

彼は何故か=先輩=を微妙に親近感を込めて時に=哲くぅん=と呼ぶ。

其のちょいと中性的な細身の体躯とお洒落さ加減も相まって
深沢くん=ホモ疑惑=なんてえ莫迦話が一時女子部員に広まり
在ろうことか其の相手が、良く一緒に喋ったり飯食ったり飲んだり
時に二人で仲良く図書館に籠もると言う仲の此の=先輩=ではないか、という
なんともとんでもない妄想な噂が女子部員の間で蔓延したと言う
二回生時の噴飯ものな出来事が在って以来の事である。

真相は印度系の宗教や哲学の話と言うコアな会話が成立するのが
部内では此の二人以外に居なかったと言う単純なものだったのだが。

そんな密かな共通項ゆえか、この男も=先輩=とは親友のような関係・・
まあ、牟田口とはちょいと違う感じではあるものの=先輩=と仲が良い・・
いや彼の場合、此の朴念仁の=先輩=が、彼にとって
何故か雰囲気の割に子供で妙にほっておけない幼馴染・・のような
気分を感じているかにも思える付き合い方の=ともだち=でもあった。

冷静に全員の点棒の推移なぞ眺めつつ、こりゃ山内くん喰えば独り勝ちだね、と
次の半荘以降の戦略を抜け番の位置から冷静に考察しつつ・・・

此のレンアイ慣れ?した兄ちゃんは独りつらつらと考えていた。

・・・=哲くぅん=・・まあ、普段から見てくれは気にしないけど
あの、額の看板みたいな・・あれ・・流石にねえ(笑)

でも・・あえて、あれ付けて平然としてるってのは・・
付けてくれた子?剥がしたら其の子に悪い・・・とか思ってるんかなあ。

・・・僕と同じで吹奏(うち)の女の子には興味無いと思ってたけど・・
ああ、哲くぅんって、実際は純情ってか・・お子ちゃまだから・・・
案外、そんなタイプの女の子・・弱いかもねえ、可愛すぎるタイプ。

はは、・・此れ、本当に=瓢箪から駒=・・かも・・・

そんな事をぼんやりと考えつつ=先輩=を密かに観察しつつ
深沢は何処か鷹揚でおっとりした独り笑いを漏らしていたが・・

其の局が済んで場替えと入れ替えが始まった8畳間の窓、
此のアパート大家である寺の境内に面した窓を換気のために開け放とうと
其の細身の身体をちょっとリズミカルに動かしてひょいと立ち上がると
其処からぼんやりと外の都会にしては静かな春の夜景を眺め、
時折妙に色っぽく背伸びなどして、誰にともなく長閑其の物の声音で

「ああ・・本格的に・・春だねえ・・そう思わない?・・
何か、妙に・・わくわくする、ロマンチックな夜だよぉ。
あ、ほら・・桜・・もう散り始めてる・・夜桜。」

と、何処か此の面子に似合わぬ恋愛詩のような=感慨=を呟く。

$のすたる爺の電脳お遊戯。

部屋の片隅では牛丼の残りをもっさりと食う主将の山内。
牟田口は結構まめに点棒を各々の箱に入れ直し・・
部屋の主の高橋は先輩の奢りで自販機にコーラ買いに。

額にピンクのおんな文字カットバンを、妙に誇らしげにさえ見えるほど
堂々と貼り付けてハイライトを喫ってた=先輩=だけが
其の独白のような感慨に、ああ、と柔らかく静かに頷いた深夜近く。

板橋の古い住宅地の外れ・・実におとこ臭い8畳間の一角で
深沢と言う、ちょいとお洒落な兄ちゃんは、再度柔らかく微笑んで
今度はこころのなかで、面白そうにひそかに呟いた。

・・まあ、本当の・・本格的に春、で・・・
ロマンチックなのは・・・=哲くぅん=・・君かもね。

其の瞬間、何故か・・=先輩=、此の=のほほん男=は
紫煙に噎(む)せたのか・・春の夜風に噎(む)せたのか

ちょいと小さく、存外可愛げに・・=くしゃみ=をしたのだった
                  

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