未来の普通:たまに馬車目線付き

安倍首相の「コピペ」で見えた日本の異常な平和への思いは、世界の普通になるのか

2014/08/08 13:00 投稿

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(8/9 追記: 長崎の挨拶も確認しましたが、同様に昨年とほぼ同じだったようです。
 広島と長崎の挨拶が酷似しているという指摘もあります。個人的にはそれは仕方ないかと思いますが。
 また 6/23 の沖縄全戦没者追悼式のスビーチも去年と今年でほぼ同じだったそうです。7/1が集団的自衛権の閣議決定という微妙なタイミングだったので、戦略的にコピペしたのかもしれませんが、単にもともとコピペでいいと考えていたのかもしれません。変化の乏しい年ならともかく、今年のタイミングでは「パス」と見られても仕方ありません)

 安倍首相の「広島原爆の日」の挨拶がおざなりだったと話題です。

 安倍首相、「広島原爆の日」の挨拶 "去年のコピペ"疑惑を検証する 

 毎年やってる式典だから、そんなもんなんじゃないの?と思う方もいるかもしれませんが、そうは問屋が卸しません。しかし、安倍首相は、海外から見れば「異常な」日本人の思いから、そうせざるを得なかったのです。

 毎年「広島原爆の日」の平和記念式典では広島市長による平和宣言が発表されます。これで、何に触れてどう言うのかというのは、毎年すったもんだしています。少なくとも2011年の大震災以降、原発の問題、尖閣諸島の問題、集団的自衛権の問題と微妙な案件が目白押しです。平和宣言作成の様子はローカルニュースにも取り上げられますし、直前には骨子も発表されます。

 こちらは本文はありませんが、去年骨子が発表された時の新聞の見出し。
平和宣言で“脱原発”触れず 広島市長「核兵器は絶対悪」「原爆と原発は明確に違う」との考えを改めて示した (2013/8/1 毎日新聞)
 とてもシビアです。

 今年も事前に発表されました。

 広島市長、平和宣言の骨子発表 集団的自衛権に触れず - 朝日新聞デジタル 

 とこのように、がちんこで作られた平和宣言が広島市長によって宣言されるわけです。(過去の平和宣言は分かりやすく遡れます。毎年出だしは違います)

 ですから、その後こども代表2名による平和への誓いをはさんで語られる首相の挨拶が去年と同じ文面で始まるというのは、毎年聞いている人からしたらコピペを後から検証するまでもなく、あまりのおざなりさにその場で落胆したことでしょう。途中実績のところは変えたようですが、そんな始まり方では現場ではまったく同じ挨拶にしか聞こえなかったのではないでしょうか。

 つまり、今回首相は事実上挨拶を「パス」したのです。誰もが気付くと分かっていたにもかかわらず。

 なぜ首相は「パス」しなければならなかったのでしょうか。

 こちらは今年の平和宣言の一部です。集団的自衛権には触れていませんが、「平和国家の道を歩み続け」るよう訴えています。
唯一の被爆国である日本政府は、我が国を取り巻く安全保障環境が厳しさを増している今こそ、日本国憲法の崇高な平和主義のもとで69年間戦争をしなかった事実を重く受け止める必要があります。そして、今後も名実ともに平和国家の道を歩み続け、(後略)
 日本人にとってはごく自然な文言に思えますが、これは「中国とかが台頭してきてやばいけど、平和国家として歩み続けよ」というメッセージです。

 一方で、首相は挨拶を「パス」。これは海外からすると普通ではありません。せっかく集団的自衛権を容認したばかりですから、ここは「二度と核を落とされることのないよう、集団的自衛権など安全保障を強化していきます」などと、自らの成果をアピールする絶好のタイミングです。
 たとえばオバマ大統領で想像すれば容易にイメージできるのではないでしょうか。平和記念式典ですから、あまり赤裸々な表現は場にあいませんが、きっとその実績をほのめかしてくるでしょう。

 つまり、平和宣言では建前上自治体長が「平和国家を続けよ」と言うけど、現実は隣国の脅威は増しているから実務的には「平和のために集団的自衛権で安全保障強化」するよと首相がバランスを取るというのが、世界的には普通の安全保障感覚です。実際式典後の記者会見ではその主旨の発言をしています。

 安倍総理 広島で“集団的自衛権”に理解求める 

 しかし、今回安倍首相は挨拶ではそうできませんでした。今集団的自衛権の容認を挨拶でほのめかそうものなら、大炎上するのは明らかだったからです。しかし、あれだけ騒いで容認した集団的自衛権を封印した挨拶を新たに起草することは、集団的自衛権に及び腰と判断されてしまいます。ですから、批判覚悟で手抜きしたのです。

 しかも「平和国家を続けよ」というのは、単なる理想論ではありません。69年間維持してきた実績であり、今後も維持せよという実務的なメッセージです。「パス」をしてしまった安倍首相も消極的に賛成したことになります。世論もまったく問題にしていません。コピペは問題にしていますが。
 画して、尖閣諸島で物理的な衝突がいつ起きても不思議ではない状況にも関わらず、「平和国家主義」を全国民で再確認したのです。

 私たちにとっては極自然なことですが、他の国には考えられないようなことです。他の普通の国だったら、このような状況では「え、そんな建前だけで、武力衝突あったらどうすんの???」と不安になる人が続出し、当然メディアでも「こんなことで国が守れるのか」と議論されるはずです。
 集団的自衛権で日本は「普通の国」になると言われます(たとえば【社説】集団的自衛権で日本は「普通の国」へ、東アジア安保に寄与 )。それが普通で、今回の「平和国家を続けよ」だけを宣言するのは異常です。私たちは69年間平和国家をするうちに、他の国とは考え方がすっかり変わってしまったのです。

 しかし、異常だから悪いというわけではありません。世界が平和になるにはそう考えるしかありません。個人的には、この日本の異常は世界の普通になると思っています。

 先日、

 「こっちの方が平和だぞ!!」メーヴェが飛ぶ日本  

で、しりあがり寿さんの「こっちの方が平和だぞ!!悔しかったら平和憲法にしてみろ!!」という 

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