この間「日本人が実力を発揮できない」理由に気づいてここミラフツに書いたのですが、それ以降その考えが日本に蔓延していることを日々思い知らされています。
たとえばこの記事のタイトル。
日本選手が五輪で実力を出し切れるようになった理由|SPORTS セカンド・オピニオン
もうこのタイトルに「日本人が実力を発揮できなかった」理由が表れています。
ごく普通のタイトルのように見えますが、この「実力を出し切る」という表現には、選手には普段の実力があり、それを発揮できればいい成績を収められるという論理が見え隠れします。
つまり、普段が100%、本番は、緊張などからそれが発揮しきれないことが起こりがちだけど、それをどれだけ少なくできるか。
つまり、マイナス思考なんです。
しかし、競技はそんなものではありません。時に普段の実力以上の力が発揮されます。もちろんそのことは良く知られていますし、上記の記事の中でもそういう面は書かれています。
でも肝心な点が見落とされています。
それは、逆に実力以上の力は大舞台であるほど発揮しやすいということです。銀メダルに輝いた男子400mリレー。予選のタイムから、それではメダルに届かないかもしれないからと、決勝ではさらにリスクの高いタイミングでバトンを渡すことにしています。
予選でいい感じに走れて、でもまだ上がいて、それを追っかけるために、普段やってないタイミングで臨む。つまり練習でやってないことを、より大きな舞台でやろうと言って、やってのけたのです。
多分、練習でもっかいやれって言われてもできません。こんな感想からも想像できるように。
飯塚 歓声が思ったよりすごくてアドレナリンが出た。山県が流れをもってきてくれた。桐生へ向けて突っ走った。ミスることは一切考えなかった。信頼できるチームです。いい記録を出すのに、より緊張する大きな舞台が必要ないのであれば、ウサイン・ボルト始め、トップアスリートたちに必要な戦略は、予選から全速で走ることです。その方が絶対いい記録が出ますよね? 疲れてないし、よりリラックスできるし。
日本400mリレー銀メダル!北京の銅上回る最高位 - 陸上 : 日刊スポーツ
違うんです。彼らが世界記録を出せるのは、決勝だから、少しでも失敗したら自分以外の選手が勝つようなギリギリのレースだから、もっとも緊張する場だから、出せるのです。逆にいえば、緊張すればするほどいい結果を出せる人が、ああいう場では勝つのです。
いい記録を出すのに、より緊張する大きな舞台が必要ないのであれば、日本選手が100m を 10秒切るためには、10秒切るまで国内で条件の整った競技会をやればいいのです。
でも私たちは、それよりはオリンピックに送り込んだ方が出やすいということを、直感的には知っているのです。
今回の日本の成績が良かったのは、おそらく、そのことを選手たちが知ったからだと思います。メンタルトレーニングが進んでいるのでしょう。もちろん、緊張のあまり実力が発揮できないこともありますが、緊張のあまり自己新をバンバン出すつもりで出てきて、出せる人が出てきたのです。男子400mリレーだけでなく、競泳女子100メートルバタフライの池江璃花子選手が、予選、準決勝、決勝と日本新を更新したように。
英語だと、こういう状況に対して "Enjoy!" という言葉をかけたりしますが、日本のスポーツ選手もそうなってきているのだと思います。大きな舞台というのは、もちろん緊張で失敗する不安もあるけど、普段出せない力を出せる場でもあるのです。
選手は変わりました。その結果が今回の41個のメダルです。予想されてなかったメダルがたくさんあります。それは彼らがオリンピックという大舞台で緊張を "Enjoy" したからでしょう。
私たちは、東京オリンピックを "Enjoy" することになります。選手たちには、緊張の重圧に潰れ、実力を発揮できない人もいるでしょう。でも、それ以上に緊張を "Enjoy" し、過去の自分を軽々と超えていく選手もたくさん出てくるのです。
東京オリンピック、楽しみですね!
《ワンポイントミライ》(?)
ミライ: で、これは、私達自身にも言えると。
フツクロウ: ホッホ。ホノ通りじゃ。
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