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【超会議3】超乗合馬車レポート

2014/05/10 04:16 投稿

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 超会議3で運用した人力馬車「超乗合馬車Mk.2」の報告をしよう。
 これは6ホール「まるなげひろば」内の運営支援企画で、運営が経費とスタッフ7名を提供してくれている。しかし企画の主体はユーザー、ニコニコ技術部馬車グループにある。
 超会議の大通りを馬車が巡るさまは「アニメの学園祭みたいだ」と言われる。超会議にはこんな「絵」がほしい。異なる企画や人を結び、シナジーを生み、超会議をさらにカオスにしたい。ニコニコ技術部の作品展示として、一箇所に居座るのではなく、こちらから移動して見せてまわりたい――超乗合馬車はそんな気持ちから生まれた企画である。

 馬車は4~6ホールを貫く二本の大通りを端から端まで反時計回りに一周して、まるなげひろばの停車場に戻る。混雑時にはショートカットして円筒ディスプレイ下でターンする。
 馬車は二日間で42便、218人を運んだ。事前のチャーターは4件しかなく、ほとんどが当日その場で決まった便だ。
 便といっても、馬車は遊覧目的で走ることはあまりない。ざっくり言えば「簡易パレード発生装置」である。馬車は歩行者の邪魔になるから、乗客が周囲を眺めるだけの遊覧では迷惑と釣り合わない。邪魔になるかわり、面白いものを見せれば喜ばれるか、少なくとも許されるムードになる。遊覧ができるのは通路が空いている時だけだ。

●馬車に乗るには? 馬になるには?
 ひとつ前の記事に書いたのだが、超会議に来る大部分の人は記事を読んでいない。運営がやっていると思い込んでいる人も多いだろう。
 馬車グループには運用隊、メイド隊、技術隊という3班があり、当日馬車をどう動かすかは運用隊に任せられている。
 すでにチャーター予約が入っていて、その時刻に搭乗者が現れれば、予定どおりに馬車を出す。予約のない時間帯、運用隊は臨時便を編成するのだが、先述の通り、これがメインだ。コスプレイヤーや面白い展示物を持った人が通りがかると「馬車乗りませんか? 10分ぐらいで終わりますよ」などと声をかける。1~2人では物足りないので、乗客は6人前後になるように、どんどん詰めていく。
 先に来た人を待たせることはあまりない。超会議で大通りに立っていれば、面白い人はひっきりなしに通るからだ。換言すれば、超会議ぐらいしかこの方式は成立しない。
 まるなげひろばや他のブースに営業をかけることもある。ニコニコ技術部員は基本的に自衛隊や米軍、JAXA、JAMSTECのような団体が大好きだから、こうしたブースには「馬車でブースの宣伝しませんか?」と声をかける。搭乗者が少なくて寂しいときは、コスプレイヤーに声をかけて同乗してもらう。マリオとルイージの公式着ぐるみが乗ったときは、ニコニコ技術部のファミコン楽器の二人も乗り合わせた。企業も公的機関も一般参加者も、馬車の上ではごちゃまぜである。

 運用隊はまた、馬の調達もする。通行人の中から、馬車に興味を持っていそうな人に「君、馬やらないか」と勧誘するのである。馬は重労働のように見えるかもしれないが、馬車は一人でも軽々と動くから、普通に歩いているのと変わらない。
 馬車が通りかかると、まずウケを取るのは馬だ。馬マスクを頭に乗せた人を指して大笑いしてくれる。これが楽しいので、一日中馬をやる人もいる。馬は当日スタッフとして事前に申し込むこともできる。

 仮装パレードではないが、車椅子や妊婦、幼児同伴、ベビーカーなど、難儀していそうな人には優先的に声をかける。この場合は通路が混雑していても遊覧をする。馬車に乗ると周囲の歩行者より頭一つ高い視点が得られるので、大相撲でも歌ってみたステージでも、遠くまで気持ちよく見渡せる。人壁の中を進む車椅子の人にこそぜひ味わってもらいたい、自慢の眺めだ。
 メイド隊は運用隊をアシストし、馬や搭乗者を誘導する。御者として馬車を運転したり、同乗してアナウンスをしたりもする。馬車が停車に戻ると、記念のお菓子をサービスしたりもする。ERでいうなら看護婦にあたる重要な役どころだ。
 馬車を実際に動かすメンバーとして、御者1名、馬3~4名、交通整理4~5名がつく。

 通路の混雑状況をにらんで、それに見合う演し物になるかどうかを判断し、わずか数分でパレードを組み立て、実施するのはなかなかの手際だ。これは運用隊・メイド隊の熟練スタッフによるもので、技術担当の私はほとんど関与していない。

 二日間の運用実績は以下の通り。青い字の便名は運営がチャーターしたものだ。

4月26日
便名発車時刻搭乗者数電光掲示板メッセージ
試運転10003馬車テスト運行
超Ocufes+車椅子10304(デフォルト) ニコニコ技術部presents 超乗合馬車運行中!
グフさん(青)+プレス10356青グフ搭乗中!
ファミコン楽器+コスプレ11005ニコニコ技術部 ファミコン楽器演奏中!
在日米軍11306在日米軍といっしょに写真撮りませんか? コスプレ、ノンコスプレ、ウェルカム
超Ocufes+コスプレ(大型巨人とか)12306まるなげ広場にてOcufesやってます
兵器局ニコつく13006ニコニコ兵器開発局 ニコつく見に来てね!
SML自転車POV+自宅警備隊13203俺の自転車が光って唸る!ANIPOVmini
車椅子・コスプレ13404(デフォルト)
コスプレ14254(デフォルト)
EPSON15404スマートプラス MOVERIO by EPSON
調査兵団コス160010壁外調査中! 調査兵団団員随時募集中!
コスプレ16202(デフォルト)
JAXA+コスプレ16456明日も宇宙ブースでフェアリング抽選会があるよ
一般遊覧1655?(デフォルト)
一般+コスプレ+ニコニコ学会β17007(デフォルト)
コスプレ17106(デフォルト)
車椅子、八田パネル、遊覧17255(デフォルト)
コス、八田パネル、ぜかまし風船17386(デフォルト)
結婚式リハーサル18302Happy Wedding!! ペチパーライス&かつな
4月27日
便名発車時刻搭乗者数電光掲示板メッセージ
力士4名(着席のみ)09554(デフォルト)
超ユーザー記者10003超ユーザー記者取材中
ぜかまし風船+羅針盤10403馬募集中!
石仮面+寅さん+ジャグラー1050412:30よりニコつくステージでジョジョ立ち!
超宇宙ブース11004JAXA様ご来場中@超宇宙ブース 本物のロケット部品(フェアリング)があたる抽選券配布中!(増量しました)
川上会長クルーズ11106ドワンゴ会長”かわんご”が挨拶に参りました!
ニコニコ学会β11207シンポやってます! グッズや本も好評販売中!
ニコニコ女子部11405女性うp主集まれ! まるなげひろば ニコニコ女子部で待ってます。
一般、モヒカン、大和コスプレ11504ニコニコ技術部presents 超乗合馬車運行中!
超ニコニコ結婚式12204Happy Wedding!! ペチパーライス♡かつな 末永く爆発します♡
ドイツ祭ニコニコ分隊13106ドイツ祭ニコニコ分隊搭乗中 我ラ自衛隊ニアラズ
コスプレ14206(デフォルト)
一般+コスプレ14406(デフォルト)
コスプレ14506(デフォルト)
マリオ&ルイージ+nicobow+へけけくん15054(デフォルト)
EPSON15204シースルーモバイルビューアー MOVERIO by エプソン
コスプレ+母子15406(デフォルト)
車椅子+コスプレ15456(デフォルト)
タイバニコスプレ16007\|宣|/<ありがとう!そしてありがとう! タイバニ
コスプレ+ニコつく病棟16108ニコつくにてプロジェクトディーバやってます♪あそびに来てね♪」
コスプレ16257(デフォルト)
自衛隊16405航空自衛隊、海上自衛隊で~す
運営慰労17008運営さん3日間お疲れ様でした。ありがとうございました!

「川上会長クルーズ」というのがあるが、これは私が事前にメールで招待した。運営幹部にはぜひ馬車から会場を眺め、空気を肌で感じてほしいと思うからだ。馬車に乗れば場内を俯瞰でき、手を伸ばせば通行人と握手もできるから、ちょうどいい距離感になる。
 運営スタッフはホストの立場だから、原則としてゲストのいる時間帯には乗らない。しかし感謝もしたいし、馬車から何が見えるかを知ってほしいので、開場前の練習走行と、閉会後の慰労で乗ってもらった。












●馬車Mk.2の改善点
 超会議2で運用した時の反省から、馬車Mk.2にはいくつか改良を加えた。

(1) 電光掲示板を装備した。
 馬車にはいろんな人が乗るが、その便が何を運んでいるのか、どんなネタなのかは遠くからではわかりにくい。近くでもわからないことがある。そこで電光掲示板を搭載することにした。
 設計主任はエン/129氏にお願いした。彼は超会議のモニュメントになっている円筒LEDディスプレイの縮小版を作っており、馬車の電光掲示板にも意欲を見せていたので一任したのだった。経緯は彼のblogに詳述されている。
 電光掲示板の1文字は16個×16個のLEDで描かれ、モジュール基板1枚で1文字を表示する。基板1枚で256個のLEDをハンダ付けしなければならない。電光掲示板全体では8文字、それが前後につくから16文字+予備2文字ぶん、合計4608個のLEDをハンダ付けする。これは大変なので、ボランティアに手伝っていただいた。10人ほどのボランティアは一週間とかからずに受け持ちの基板を完成させて返送してくれた。
 エン氏の苦闘が始まったのはこの後からである。2~3文字程度の連結ではうまくいっていたものが、8文字連結すると文字化けが発生した。オシロスコープで調べてみると、基板間のシリアル伝送で波形が崩れていた。
 モジュールを人海戦術で量産してから問題が表面化し、一人で全部手直しするという、悪夢のようなシチュエーションである。Twitterのニコ技クラスタに基板デザインが公開されると、たちまちベテラン技術者諸氏から問題点が指摘された。エン氏はアドバイスに耳を傾け、さらにニコ生で作業を実況するようになった。
 寝る間を惜しんでの改修作業の甲斐あって電光掲示板は完成し、超会議本番では完璧に動作した。
 だが、初日が終わって超ニコニコ結婚式のリハーサルを行なったとき、運営スタッフから「電光掲示板のメッセージにハートマークを表示できませんか」という要望が出た。
 実装されているフォントにハートマークは入ってなかった。これではどんな文字コードを送っても表示できない。

 



 そこで「できません」と言わないのがニコニコ技術部員である。晴れの舞台で結婚する二人のために、独身アニオタ堤督のエン氏はホテルで深夜までプログラムを組み、27日朝、結婚式のわずか3時間前、ドット絵によるハートマークの表示に成功したのだった。これはもう、プロジェクトXばりの武勇伝といえよう。彼こそニコニコ技術部員の鑑だ。



(2) 座席をワンタッチで着脱可能にした。

 超会議2のとき、座席は木ねじでデッキに固定していた。このとき車椅子の乗車テストも行なったのだが、木ねじを抜いて座席を外すのが面倒だった。このときは指定の時間に車椅子の人に来てもらい、馬車側では事前に座席を外して待っていた。
 今回はデッキに爪付きナットを埋め込んで、ノブつきボルトで簡単に着脱できるようにした。この改修により、いつ車椅子の人が来ても即応できるようになった。

(3) ステアリング機構を改良、小回りが効くようにした。



 最初のバージョンでは前輪に角度検出用のスライドVRを取り付けていたのだが、前輪が外乱で揺れると、それも制御にフィードバックされてしまう。そこでステアリングを駆動しているギヤードモーターの軸にロータリーエンコーダを取り付けた。
 前輪を動かす梃子にあたる部品(写真右)も短く作り直した。前回はYUYA氏が作ってくれたのだが、今回は自分でアーク溶接して作った。最初の設計では、急操舵で馬車が転覆しないように、操舵範囲をごく狭くしていたのだが、そのため小回りが効かなくて苦労した。転覆の心配はないとわかったので、今回は左右45度くらいまで振れるようにした。

 超会議には魔物が棲むといわれている。新しいステアリング装置は安定感があって使いやすく、順調に動いていたが、初日の午後になって突然動かなくなった。制御系は正常だったが、モーターを固定していた2箇所のナットとスペーサーが振動でゆるんで脱落したのだった。スタッフの姫野氏が部品の回収に駆け回ってくれたが、全部は見つからなかった。ある部品は雑踏に押し流され、モールをまたいで7ホールまで移動していたという。(そこまで探しに行った姫野氏もすごい。かたじけないことである)
 ナットに予備がなかったので修理はあきらめ、前輪をフリーにして人力で操舵することにした。そのため御者の横にもう一人「操舵手」がつくことになったが、運行に支障はなかった。

(4) 音響装置を本格的なものにした。

 馬車はたいてい何かをアピールするために使われるので、拡声器は重要な装備だ。楽器を演奏する人もいるから、アンプやミキサーもほしい。
 今回、音響装置の構築にあたって武井一雄氏が名乗り出てくれた。初音ミクのライブなどでたびたび音響システムを担当している、国内有数のエンジニアだ。
 馬車前部のパネルにミキサーとアンプ、電光掲示板の下にスピーカー2台、御者席にDJ用のパッドが取り付けられた。マイク、PAに加え、パッドを叩くと馬のいななきやベル、ぱかぱかいう走行音など、サンプリング音が流せる。
 複雑すぎて操作に戸惑ったが、音の通りが素晴らしく、かつ無駄に騒音を撒き散らさないように指向性を持っていた。さすがプロの技であった。

●そのほか

 まるなげひろばの停車場の隣は「超歌ってみた」ステージで、ここはいつも大賑わいだった。有名人がサプライズで現れたりすると、左のような状態になる。
 こうなると馬車は臨時運休するしかない。だが、超会議はこういうものだと覚悟しているので、別に腹は立たない。停車場の馬車は格好の観覧席になったので、「遠慮するな、どんどんやれ」と思いながら見物していた。
 ただし写真の状況はさすがに混みすぎで、群衆事故が危惧されるレベルだ。抽選発表などで人が滞留しすぎない工夫が企画側にも必要であろう。
 設営日にはこのステージで「超あわせてみた」のテストがあって、我々も駆り出され、ステージに立って「ハッピーシンセサイザ」を歌った。これはとても楽しかった。

 メイド隊・あさぎさんの発案で馬車の乗客・馬に技術部特製パッケージのチロルチョコを配布した。包装にはニコニコ技術部の作品写真が使われている。
 ニコニコ技術部の作品には初音ミクをあしらったものが多い。この包装にミク作品の写真が使われたものはクリプトンの許諾が必要になった。
「初音ミクチョコ」などと銘打って販売するわけでもなし、ユーザーの企画でユーザー作品の写真をあしらって無償配布するのに許諾など要るだろうか?と思うのだが、なかなか許諾をもらえず、やきもきさせられた。
 クリプトンはユーザーの二次創作頒布には寛大な会社なのだが、この場合は運営支援企画なので、企業の商業利用として扱われてしまう。そうなると対応が大変渋くなる。運営支援枠はあくまでユーザー本位の企画なので、包括的な許諾をするなど、改善を望みたいところだ。

 前回、馬車を利用したいのに受付の場所やメンバーがわからなくて戸惑っている人がいた。そのため運用隊は受付に目立つデジタルサイネージを置き、腕章を着用した。
 運用隊は前回に引き続き、あず氏・ををつか氏が中心になって動いてくれたが、メイド隊をアシストにつけてもまだ人手不足で、二日間てんてこ舞いだった。だが、当人たちには最高に充実した時間だったようで、面白かった、次はこうしよう、と言ってくれた。
 超乗合馬車は次回も企画申請する予定だ。次はもっと人員を増やしたい。二日間てんてこ舞いしてもいいという人は、ぜひスタッフとして名乗りを上げていただきたい。
 スタッフになれば他の企画は見られなくなるが、かわりにこれまでの超会議とはちがった一面を見られるはずだ。そして「全員主役」というコピーに嘘がないことを実感するだろう。
来場者の多くに全員主役の気構えがあってこそ、超乗合馬車は成立するからだ。


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