カートのブロマガ

ストレンジ・デイ

2014/06/14 21:22 投稿

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「Death makes angels of us all,and gives us wings.」という詩が入ったジム・モリソンのポスターと、
「I hate myself and I want to die.」という言葉が入ったカート・コバーンのポスターと、
「You'll Believe a Man Can Fly.」というコピーが入った1978年に公開されたスーパーマンのポスターを14年前ある大学の文化祭のフリーマーケットで購入した。
1つ1000円だったのだが、3つまとめて購入するという理由で、ドレッドヘアーの目の焦点が合っていない男性に2500円にまけてもらった。

 
 その大学に僕達はバンド演奏をしに行ったのだった。
会場に着くと僕達にオファーをしてくれたサイコビリーカットの男性が待っていて、自動車から機材を降ろすのを手伝ってくれた。全部片付けて、芝生に寝そべりタバコを吸っていると、サイコビリーカットの男性は何も告げず、急にいなくなってしまった。
そうしたらヒップホップファッションに身を包んだ男性が急に現れて「今日はお互いベストを尽くそうぜ~。DO THE BEST!DO IT YOURSELF精神にリスペクトメ~ン!」と言い僕の隣に座り、水パイプを吸った。
すると今度はヒッピーファッションの男性が現れて、「君達はここで何をしているんだ?君達はここの学生かい?届出はしているのかい?証明書は持っているかい?」と服装に似合わず固い口調で話しかけて来た。
「僕達はここで演奏してくれと頼まれてやって来たんだよ。それ以外の事は正直一切知らないよ。演奏して出演料を貰えれば、それで良い。しかしお金を貰わなければ、帰る訳にはいかない。他のライブ出演をキャンセルしてまでやって来たんだ。金さえくれれば、演奏なんかしないで、直ぐにでも帰ったって構わないけどね。」と僕は嘘を交えながらしらっばくれた。

 そこにサイコビリーカットの男性が女性2人と手を繋いで戻ってきて、ヒッピーファッションに状況を説明して、ヒップホップファッションはサイコビリーが連れて来た女性2人をナンパしていた。
この状況の何もかもが面倒くさくなり、僕達はその場を離れた。
「刺激的でワクワクするファッキン糞ヤロー共が集まる大学だなぁ…。」とバンドメンバーのベースが何故か股間を押さえながら言った。

 僕達はそのまま構内の端から散歩することにした。
馬鹿騒ぎが異様なグルーヴを生んでいた。
オファーを受け何も知らずやって来たわけだが、ひとつだけわかった事があった。
今、この学校の中にいる人間は、一人残らず酔っ払っている、という事だ。

 歩いている最中、焼きそばの模擬店の後ろのほうの茂みの中で、女性が好きで好きでしょうがない男性と、男性が欲しくて欲しくてたまらない女性が、何とか人に見つからないように、うまく最後まで出来ないものかと、不自然な形で絡み合っているのが見えた。

 さらにその後方に目をやると、校舎の影から『魔太郎がくる!!』の魔太郎にそっくりな、恐らく写真部であろうという男性が望遠レンズでその2人を狙っていた。

 「あ~あ…」と呟き、空を見上げたらいつもの青空が浮かんでいた。


 美術部の個展が開かれていたので立ち寄ってみる。辺りはチャンダンの香りが充満していた。
 真っ黒に塗り潰された1枚のキャンバスが目に飛び込んでくる。
この絵画と言っていいのかわからない絵画の作者が近寄ってきて、
「この世界を表現しているんです。僕の寂しさを表現しているんです。」と目玉をグルグルさせて話していた。
バンドメンバーのドラマーが「塗り潰したいのは自分自身じゃないのか?」と少しきつめの口調で言ったら、「そうですかねぇ~。そんな事ないと思うんですけど~。」と言いヘラヘラ笑いながら赤い錠剤を口に入れた。

 僕達は構内のメインストリートを演奏会場に向かって歩いた。
その途中、ドラマーが焼き鳥とビールを購入し、僕は冒頭のポスターを購入した。
「死にたい奴のコピーに天使の話に、トびたいって、こりゃあ今日という日にピッタリで傑作だな。」とバンドのベースがニヤニヤしていた。
僕は「どうせいつか死ぬんだから、それまでは夢を見ていたいって事だよ。」と言葉を返した。


「ねぇー、こんな日はいつまで続くのかなー?。
願うのは容易で、言葉にするのも容易で、瞬間は困難で、伝わるのも困難で、
分かり合うのは難儀だよねー。
…ねぇー、子供が出来たみたい。
…私、妊娠しちゃったみたいだわー。…なんて言われたらどうする?
私は産みたいなー。あなたの子供が欲しいなー。
もう埋まらない穴が開いてしまったような感覚ってわかる?
揺るがない幸せが欲しいんだけど、手に入れちゃったらつまんなそうだよねー。
コーヒーを過剰摂取した日に、『コーヒーを過剰摂取したんだー』ってあなたに聞いてもらいたいだけのような気もするし…。
あなたの身体に触れていたいだけのような気もするし…
それにしてもデッドの『ダーク・スター』って名曲だよねー。」
…なんて事を昨日話していた僕の彼女が、レザーのライダースにレザーのパンツを履いている男性と肩を組んで現れた。

 か細く震えた声で弁明している彼女に全身レザーの男は口づけをし「まぁ、こういう事だから。」と言って来た。
「…そういうことね。」と素っ気なく返事をしたが、僕の言葉を聞いているのか、聞いていないのかわからない程、2人は世界を展開し、舌を絡ます音が微かに聞こえてきた。

「ポスターのカート・コバーンの言葉のような心境かい?」とベースが言い、
僕が苦笑いをしながら空を見上げたら、やっぱりいつもの青空が浮かんでいた。


 会場に着くと、コンサートはもうとっくに始まっていて、「君達は次の出番でお願い。」とサイコビリーがさっき連れていた女性とは違う女性2人を従えて言った。
「いやぁ~、今日もマイクに火を点けたかのようにラップが唸ったぜ。ビートに乗せて言葉を発するって事は誰でも出来ることよ~。誰もが心臓音というビートを持っているからね、YEAH~。」と言ってヒップホップファッションは高い位置から握手を求めてきた。
彼の顔は腫れていて眼が潰れていたが、理由は聞かなかった。

 袖からステージを見るとカントリーをヒッピーファッションで固めた奴らが演奏していて、その中にさっき会った奴も居た。
600人ぐらいの客席は滅茶苦茶になっていた。
ステージに注目しているのは大体半数で、残りの半数は安物のウイスキーをラッパ飲みしながらカントリーに合わせてフォークダンス的な動きや会場を走り回っていた。
「この大学らしいクソみたいな状況だな。」とベースが言った。
主役は客席で、ステージはそのBGMになっていた。
「『90年代はオーディエンスの時代だ!』とジョン・スクワイアが言っていたけど、こういう事なのかね…。」と、僕が言ったら「俺らの出番でこの空気を変えてやる。」とドラマーが言った。

 僕らは控え室に入って打ち合わせをした。サイコビリーに頼んで段ボールと画鋲を貰い、さっき購入したポスター3枚をステージに置くことに決めた。
偉大なる先人達のソウルを受け継いで響かせてやるぜ!…なんて言葉はなく、
冷たく揺れている炎という表現がしっくり来る状態だった。

「『憂鬱な日曜日』と『ブルースを語れ!』と『いつ音楽は終わるの?』と『太陽を待ちながら』を演奏した後、最後は『まぼろしの1日』で締め括ろう。もしもアンコールが来たら、『ありったけの愛を君にあげる』を演奏しよう。」と僕はメンバーに言った。

 カントリーバンドの演奏が終わり、一旦幕が下りる。
幕のこちら側で機材のセッティングをしているとプライマル・スクリームの『Shine Like Stars』が流れてきて、「君は僕の宝物。いつまでも星のように輝いていてね。」の歌詞が僕の心を惑わせた。


「親愛なるあなたへ。
私は常に誰かを愛していたいだけなんだー。
『こういう事』になってしまった事に謝罪はしないよ。
だってこの事を謝罪してしまったら、全ての事柄に謝罪しなくちゃいけないじゃない。
夕焼けに叫ぶ動物のように私は私のままでいたいのよー。
いや、ごめんなさい。
やっぱり謝罪するわ。
他に何をして良いのかわからない。
全てに謝罪するわ。
私は嘘つきよ。
嘘つきだけど、私達はある時期、1つになった。
太陽の光の中で、結婚し、埋葬されるまで一緒にいたいと思った事は真実よ。
あとね、嘘つきのついでに伝えたいことがあるんだけどねー。
昨日の妊娠の話は本当なんだー。
それにしても、ストレンジ・デイズの人生で、
いつまでこんな事を続けたら良いのでしょうね?
こんな日々はいつまで続くんでしょう?」

…携帯が鳴り、さっきまで「彼女」だった女性のメールを読む。
僕は深呼吸をし、空を見上げたら真っ赤な太陽が沈む寸前で、独特な色合いを醸し出していた。
いつもとは違うような気もしたが、こんな景色もいつか何処かで見た事があるんだろう。

ほんとさぁ、こんな日々はいつまで続くんだろうね。

 サイコビリーがやって来て、「ちょっと客席が危なくなって来たので、中止にしようと思うんですけど、どうでしょうか?」と言った。
そこへ恐らく泥酔状態であろう男性がステージに上がってきて勝手に幕を開けた。
そして場内を見渡してみると、実に大変な混乱状態に陥っているのが瞬時にわかった。
手持ち花火をしている人たちや、なぜか胴上げをしている集団、所々では殴り合いの喧嘩が始まっていた。
ステージの前では1人の女性がストリップをしていて、その周囲で男性達が踊り狂っていた。

 別の酔っ払いがステージに上がってきて、僕が使用するはずだったマイクの前に立って、電源が入っていないのに怒鳴り始めた。
「ワールド・イズ・マイン!!ワールド・イズ・マイン!!
世界は僕のものだとしてさぁ、問題は『僕のもの』だと誇れるほど世界は素敵じゃねーってことじゃないか!!」
全く、どういうつもりなんだろうか。

 さっき会った美術部の男がステージにいきなり現れて、やはり目玉をグルグルさせながら「そうなんです、やはり世界は暗く、黒くって…」と話している途中でドラマーにブン殴られた。

 ベースが「どうする?」と聞いてきたので、「しょうがない…もう中止にしよう。機材が壊されたら嫌だからな。」と僕は答えた。

 アンプの前に置いていた、ジム・モリソンとカート・コバーンとスーパーマンを見る。

LOST
SIGH
DREAM

 頭の中で回る全ての出来事が、渋滞を起こしていた。その一瞬、客席に目をやると全てがスローモーションに見えた。「え?」っと瞬きをしたら元の異常な世界に戻っていた。

 大勢の酔っ払いがどんどんステージに上がってきた。
それにしてもあいつら一体何に酔っ払っているんだろうね?

 酔っ払いの1人がドラムセットに座って、スネアを1発叩いた。
「馬鹿!触るんじゃねーよ!」とドラマーは怒鳴り、その酔っ払いの顔面に思い切り蹴りを入れていた。
鼻が折れてしまった酔っ払いがドラマーに「君は夢を持っているのかい?流動的相対的社会に夢を持てるかい?」と言ったら、ドラマーが「俺の夢はヘルズ・エンジェルスのメンバーになる事だ!」と言い、酔っ払いの顔の原型がなくなるまで殴り続けた。

 狂騒、狂乱の中、カート・コバーンとスーパーマンのポスターが破られてしまった。
僕は破った奴を張り倒した。
しかし、頭の中のそろばんがビートを叩き出し、すぐさま機材の片付けの方に集中した。

 パンティーだけになった女性がステージに上がってきた。
「ねぇー、あたし飛べないのよ。だってどうしたって翼が見つからないんだもん。」
「あんた、演劇部だろ?」
「そうだよ。どうして知っているの?あたしの作品を観てくれた事があるの?」
「いや、何となく言ってみただけだよ。」と会話をした。
そして、僕が「ねぇ、飛べないんだったら、素直に落ちれば良いんじゃないかな。」と言ったら、実に素直に客席に落ちて行った。
 僕はほんのちょっと押しただけなのに、それは見事に派手な落ち方だった。
もちろん、女性の乳房には触ってやったよ。それが紳士というものだからね。

 使われなった楽器の片づけを終える。ジム・モリソンのポスターは無事だった。
しかし、騒ぎは収まらない。
サイコビリーに出演料を貰いに行ったが、サイコビリーはいくら探しても見つからない。
「もう良いよ、この場を立ち去ろう。」とベースが言って僕らは会場を出た。
立ち去る途中、僕達は「よしもとよしともの漫画みたいな事をしようぜ!」と言って、石を拾い構内のあらゆる窓に投げつけた。
ガラスが割れて、その破片がスローモーションに散らばっていった。
「ボードレールの『不都合な硝子屋』を何故か思い出すね。」と僕が言ったら、
ベースが「お!人生は美しくなければな!」と言った。
そのまま急いで自動車に飛び乗って、僕達はゆっくりと夜の街の中に溶け込んでいった。

 次の日、僕はジム・モリソンのポスターを部屋に貼った。
ジム・モリソンはいつものようにレザーのジャケットを着て、死んだ目でこちらを見つめていた。

 そのポスターは今、物置きのようになってしまっている実家の僕の部屋に貼ってある。
大学を卒業し、引越しをする際に手伝いに来てくれた姉に「とりあえず預かってくれ。」と渡し、そのまま放っておいた結果である。
 実家に行く度に、今住んでいるアパートに持って来ようか、どうしようか迷う。
そして、いつも持って来ない。
 あの日購入した、カート・コバーンとスーパーマンのポスターは同じものがあれば購入しようと思っているが、どのショップでも見かけたことがない。
 ネットで探しても見つからない。仮に見つかった所で、34歳の僕は本当に購入するのかな?…なんて思ったりもしている。

 ジム・モリソンは、LSDとはLove,Sex,Death だと言った。
僕にとっては、Lost,Sunshine,Day だった。
THE END.

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