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学校祭その②~ENDLESS SUMMER NUDE~ 

2013/08/26 02:15 投稿

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 学校祭の初日は色々あったが、無事終わった。
僕は祭りが終わると、盛り上がるクラスメートを横目に恋人の元へ向かった。

 僕の不安そうな顔を見て、恋人は「なんでそんな顔をしているのかはわからないけど、大丈夫だよ。明日も学校祭に参加するんでしょ?貴方なりに楽しんでね。」と言った。

 恋人がTVドラマ『神様もう少しだけ』と『GTO』が放映される火曜日が待ち遠しいという話から、各ドラマに出ている役者さん達の話をぼんやり語っている所で、僕は横になりそのまま眠ってしまった。

 夢を見た。

 夢の中で僕は、恋人に学校祭で起きた事柄と佐々木さんの事を話し、恋人は僕が不安そうな顔をしている理由を聞いてきた。2人は心の距離を埋めるように、しっかりと足場を固め互いを真摯に見つめ合うように本音を話していたが、映画『キャリー』のプロムでのダンスシーンのように身体は加速度を増して回転していた。

僕が「いろんな事に対して、余計な考えや言葉が先に来てなかなか行動に移せない。」と弱音を吐いたら、
「それはそれで素敵な事だよ。悩んでもがいている貴方も好きだよ。」と恋人が言った所で目が覚めた。


 学校祭の2日目は、山車を引っ張って街を徘徊するのと夜の花火がメインで、あとは出店(露店)をクラス対抗で行うというものだった。
山車での街の徘徊の間、僕とダンプは何もしなかった。山車に一度も触れず、ただ散歩する感じになっていた。
皆の「ワッショイ!ワッショイ!」の声に対して僕とダンプで「虚しく響くなぁ…。」と話していた。

「写真を撮らせて貰っていいですか?」
「僕たちを?」
「はい、昨日のライブ、すごく良かったです。」
…とよく知らない女の子5人組に囲まれる。
「昨日のスーツ姿、かっこ良かったです。昨日に戻って、あの格好で、写真を撮らせて貰いたいです。」
「はぁ…そうですか…。」
「あ!だからと言って今のお2人じゃ嫌だというわけではないです。是非、写真を撮らせてください。」
「……。」
「お2人ともステージ上と雰囲気が違いますね。」
「あれはロックバンドのピエロをやっているだけだから。」と僕が言った。
続いてダンプが「気軽に女の子に話しかけられるなんて、ロック魂も糞もあったもんじゃねーな。ロックバンドとして舐められたもんだぜ。」と独特のロック理論を展開し、
「集合写真になるのはダメだ、かっこ悪い。1対1でなら良いぜ。あと5人組で来たのはかっこ悪い。俺に話しかける時は1人で来い、1人で来ることが出来ないんなら俺に話しかけるな!」と大物ロックミュージシャンばりの偉そうな態度で言った。

女の子もさすがに冷めるか怒るかな?と思っていたら、そんな不安をよそに「かっこ良い~!」とダンプを見る目がハートマークになっていた。
ダンプが「チッ!ほんと舐められたもんだぜ。わかったよ…どのアバズレから写真を撮るんだ?」と大物ロックミュージシャンばりの態度にインフレが起き、毒蝮三太夫スタイルへとトランスフォームしながら言った。
そして「ほんとピエロはきついなぁ…」とダンプが言いニヤリと笑っていた。

僕は写真を拒否し、ダンプと女の子が撮影しているのを離れて見ていた。
すると佐々木さんがやって来て、「昨日の夜は興奮して眠れなかったです。火を見たからですかねー。」と言った。
「さっき女の子達に囲まれてましたよね?少し嫉妬しちゃいましたよ。
でも同時に優越感もあって、昨日のスペシャルな体験は私しか味わっていないよって。」
「浮かれ気分の勢いで僕らに話しかけているだけだよ。」
「…そうかなぁ、少なくても昨日のライブを観ている女の子達だと思いますよ…まぁ、何とも言えないですけど。」
「……。」
「先輩と一緒に写っている写真が欲しい気持ちは私にはわかりますよ。でも、写真はいつか色褪せてしまうじゃないですか?」
「写真だけじゃないよ、言葉も…何もかも色褪せてしまうよ…。」


 山車での徘徊を終え、学校で出店のお手伝いをする。
焼きそばをひたすら作る。僕の休憩時間の前にダンプから注文が入った。
「ロック焼きそばを1つくれ!」
「なんだよ、そのネーミング!」
「ムフフ…お前が思う『ロック焼きそば』を作ってくれれば俺はサティスファクションさ!」
禅問答のような、大喜利のような事を言い残しダンプはコーラを買いに行った。

僕はコストパフォーマンスを無視したお肉だらけの焼きそばを作った。
「休憩行ってきます。」とクラスメートに言ったら、「あぁ、休憩っていうか…そのまま上がって良いよ。」と言われた。

ダンプの所へ焼きそばを持っていくと、僕の分のコーラも用意されていた。2人で乾杯した。
「今は昨日のライブの興奮がまだ抜けてないような気がするんだが、明日になり明後日になったら抜けているんだろうな。
つまり、まだ限界じゃなかったって事だよな…
あれ以上のライブが出来るとは今のところ思えないが、もし超えるライブをやれたら、俺は思い残す事ねーよ。」とやきそばを食べながらダンプが熱く語った。
熱くなりすぎて、肉だらけのいびつな焼きそばにも『ロック焼きそば』にも触れないでガツガツ食べているダンプ。
『ロック焼きそば』の件り、終わっていたのかぁ~という寂しさの後に、ダンプの真っ直ぐな瞳と情熱的な気持ちに男として胸を打たれた。

 ダンプが焼きそば作りの手伝いに行き、僕はブラブラ校舎を散歩していた。
高校生にとって巨大である校舎は僕の気持ちを飲み込んでいた。巨大が故に実体が、実像が見えない不安と、学校祭の後の、閑散と冷ややかな廊下や教室を想像して空虚な寂しさを感じた。

 バンドでドラムを担当していた友達が朗報があると小躍りして現れた。
「まだ、誰にも言っていない話なんだけどね。
今日の学校祭の夜に花火が打ち上がるまで、1時間休み時間があるの知ってる?
昨日、俺等が使ってた楽器が『持って帰るのが面倒くさい』という愛のない理由で全部音楽室に置いてあんのよ。
そんで、先生に『楽器取りに行きます』って言って、鍵借りてさぁ、そこでゲリラライブをぶちかまそうぜ!」
「素敵でイカしたアイディアだね。ダンプに言ったら喜ぶよ!喜び過ぎて泣いちゃうかもね…」
まず、ベーシストに声をかけ、3人でダンプが手伝っている『ロック焼きそば屋さん』に行った。

話を聞いた瞬間ダンプが発狂し、演奏する曲を焼きそばの煙にまみれながらその場で11曲決めた。

「じゃあそれまで各自充電期間だ。たっぷり休んでおけよ。その1時間で俺達の全てを解放させようぜ。俺も出店のモンキービジネスが終わったら充電しておくぜ。」とダンプが言った。


 高揚感と緊張感が混ざり合っていた。
自分を落ち着かせる為にタバコを吸おうと校舎の裏に行った。
そこには佐々木さんがいた。

佐々木さんにゲリラライブの話をした。
佐々木さんは喜んでいた。
佐々木さんは眠れなかった昨日、午前3時に、自分を変えたい、少なくても今のままじゃいけない、何とかしなくちゃ、という気持ちで窓の外を眺めたら花びらが舞っていたように星が綺麗だった、という話をした。

僕は3本目のタバコに火を点けた。

「先輩、聞いて下さい。私の友達がね、Hしたら人は変わるよって言っていたんですけど、それって本当なんですかね?」
「……人それぞれじゃないかな。」
「あと…付き合い始めは初々しいんだけど、男の人にヤらせるとそれしか求めて来なくなるって……
…私はそれでも凄く嬉しいと思うんですけど。
…私もHしたら変わっちゃうんですかね?…
…この考えが変わってしまうんですかね?」
「佐々木さんは多分変わらないよ。そして変わらないで、そのままのピュアな佐々木さんでいてくれ。」
「……泣きそうです。」
「……僕も純粋な気持ちを大切にするから。変わらないから。」

変わってしまうものと、変わらないでいる部分。
変わってしまう人の心と、変わらないでいる景色。
こんな思いも、やっぱりいつか色褪せるのかな?

「私、男の人の弱音が好きなんですよね…」
「そうなんだぁ…」
「可愛いいと思うんですよ~!」
「ふ~ん、そんなもんかね…」
「先輩も何かあったら私に弱音を吐いて下さいね。」
「…まぁ、ここで吐けたら男前なんだろうけど…ごめんなさい。やっぱり僕は吐けないな。」
「…そうですか。」

 朝に見た夢を思い出した。しかし、佐々木さんに発する言葉が僕には出なかった。

 2人で変わっていく夕暮れの空を見ていた。

 風が吹いた。僕たちの不器用なコミュニケーションを優しく包み込んでくれるようだった。
 この生ぬるい風は、どうせ明日も吹いてくれるだろう。
 
「先輩、お願いがあります。」
「…ん?」
「私の事を、下の名前で呼んでください…。」
「……OK!わかったよ。」

 タバコの煙を風がさらっていく。ミー(美依)ちゃんの髪がなびいている。
数々の言葉。はしゃぎ過ぎた場所。永遠に続くと思ってしまう瞬間。



 約束の時間、僕が到着した時点で音楽室はギュウギュウの状態だった。
バンドメンバーの3人は既に機材をセッティングしていた。
「ダンプが張り切っちゃって、ガンガン声かけしてさぁ、こんだけ集まっちゃった…ダンプの奴、ゲリラの意味わかってんのか?」と嬉しそうにドラムが言った。
 僕も準備に取り掛かる。ギターを抱え、鞄からピックケースを取り出そうとした瞬間、VHSが入っているのを発見する。

 そう、18歳の夏の記録こと自主映画だ。
音楽室にスクリーンがある事を確認し、バンドメンバー3人に、演奏中この映像をバックで流したいと話した。
3人は了承してくれた。一応、映像の確認を勧めたが「観なくてもわかる。俺にとって良い映像である事がわかる。」とダンプが言った。続けて「それにしても暑いねぇ、青春だねぇ。」と言いニヤリと笑った。

 5分だけ時間を貰い映画サークルのメンバーの元へ確認しに行く。「せっかくだから!」と満場一致で了承してくれた。
自主映画を撮ろうと提案してくれたメンバーに音楽室での再生をお願いする。「青い春だねぇ。映像の中の人間はフォーエバー」と言い了承してくれた。

 音楽室に戻る。60分1本勝負はリハーサルなしで開始された。
「どうも!行き場のない魂をぶつけに来ましたー!」とダンプが叫んだ。
ダンプ流のコミュニケーションだった。

 異様な雰囲気の中、3曲を終えた。
先生達の姿も見えたが、「しょーがない奴等だなぁ…」と諦めた顔をしていた。
「『いいじゃん、それで。』、『いいじゃん、現状で。』、『いいじゃん、ありのままの自分で。』とかくだらねぇ言葉を吐く馬鹿がいるけどさ、良くねぇーよ。良くないから生きているんだよ。頭蓋骨は、カチ割られるためにあるんだよ!」とダンプが叫んだ!

 曲中、「ぶっとばせ、ベートーベン!ぶっとばせ、モーツァルト!、ぶっとばせ、シューベルト!」と叫びながら音楽室に貼ってある偉大な音楽家たちを指差している、ダンプ。
失笑と掛け声が入り交じる。

その後、5曲を終える。酸素がなくなったのか、叫ぶことをやめたダンプが、
「ロックをさ、今を燃やすとか、生命を燃やすとか思っている人がいるけどさ、それは半分正解で、半分間違いだ。そんなものはポーズを決め込めば誰にだって出来るんだぜ。
実のところ、大した事じゃないんだ。
本当に大切なのは、燃やし尽くせなかったものと真剣に向き合えるかどうかなんだよ。
切なさと、やるせなさと……
だから俺、明日も生きるぞぉー。」と言った。
ダンプ流の美しいコミュニケーションだった。

 最後の曲を演奏する前、完全に酸欠状態になったダンプが僕に「話してくれ。」とジェスチャーで指示を出してきた。
「言葉はすぐ色褪せるから、僕は黙っている事に決めた。夕暮れ時が悲しいのは青が消えていくからだね。」と僕が言い、ダンプがニヤリと笑った。

僕らが演奏している後ろのスクリーンでは、ヒョロヒョロと力弱い若者たちが線香花火を寂しそうに行っている映像が流れていた。
最後の曲を気合を入れて演奏する。
ダンプだけではなく、僕もベースもドラムも酸欠になってしまった。
気絶しても良いという気持ちだった。
狂騒と恍惚が入り混じる中、ライブは終了した。

アンコールを求める掛け声もあったが、「人生同様、アンコールはなし!」と息が切れて聞き取りづらい声でダンプが言った。
ダンプが男女に囲まれる。
そのまま、体育会系の男の子達に胴上げされ顔面蒼白でこちらを見てニヤリと笑みを浮かべるダンプ。
僕やベースやドラムの所にも人が集まり、皆ガンガン話しかけてきた。
僕はあまりの酸欠状態でフラフラになり逃げるように音楽室を出て、人があまり通らない職員室がある方の階段へと向かった。

息を切らし階段で寝そべった。そこにたまたま僕のクラス担任の女先生(26歳)がやってきた。
「凄い演奏だったわね、貴方にそんな真剣な部分がある事に驚いて、感激したわ。」
「……そうですか…」
「おとなしい子だと思っていたから、本当に心から感動したわ。」
「……」
「輝いていたわよ、青春って本当に素晴らしいものよね。」
「…先生、1つだけ聞きたい事があるので、質問良いですか?」
「ん?なぁに?何でも聞いて。」
「人間として…人生の先輩として、答えて欲しい事なんです。」
「ん?私が生徒の力になれるんならこんな光栄なことはないわ。なぁに?」
「Hしたら人は変わってしまうものなんですか?」
「…何馬鹿な事を言っているんですか!くだらない質問にがっかりです。」
「いや、真剣です。すいませんが、教えてください。」
「普段おとなしいと思っていたら、そんなことばっかり考えていたのね!そんな質問答えたくない、馬鹿馬鹿しい。」と言い先生はその場を立ち去った。
僕は心の中でガッツポーズをした。
ぼやけた、モザイクのような返答しか出来ない先生よりは僕達のほうがまともだよ、ミーちゃん。


 呼吸も整い、体力もある程度回復した。外に出て、ダンプと2人で花火が打ち上がるのを待っていた。
そこにミーちゃんがやって来た。
ダンプが「何だよ、お前等、付き合っているって噂になっていたぞ!本当かよ?」と言った。
ミーちゃんは「そんな…恐れ多いですよ。」と言い、
ダンプが「まぁ、付き合っているかはどうでも良いんだけど、Hはしたの?」と言った。
僕は笑って、ミーちゃんは「していないです!」と言った。
ダンプが「それにしても、もう何もないわ!空っぽだわ。この感触は死ぬまで忘れねーだろうな。こんな俺達にも今日みたいな1日があっても良いよなぁ!」と言い、泣きそうな顔になった後、ニヤリと笑い僕を見てきた。
ミーちゃんが「生まれ変わったら、お2人の同級生になりたいです。ここで出会って、この世界を呪った後に、この世界を祝福したいです。」と言った。

 大きな音が鳴った。空っぽの僕らは空を見つめた。
 花火が打ち上がった。
 3人の色々な想いを乗せて。
 一瞬にして消えていってしまう花火。
 もうそろそろ、から騒ぎが終わるんだな。
 さよならだけを繰り返す僕らは、
 終わらない時の始まりを信じていた。
THE END.

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