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L.S.D(Lost Sunshine Day)

2018/05/15 23:39 投稿

コメント:2

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 ここ数日、僕は川本真琴を聴く羽目になっていた。
キリコが購入してきたからだ。
「すごく良い曲だと思わない?露骨で、可愛い声で。」

「僕と君は他人同士 他人同士だからこそ一緒にいられるはずさ」
「(D)だいっキライ(N)なのに(A)愛してる」

…なんかそんな事を唄っていた。僕にはエロい曲にしか聴こえなくて、
「あなたの中のDNA」ってフレーズに、SEXの唄にしては直接的だなぁ、という印象しかなかった。
僕は「ペイヴメントが聴きたい。川本真琴は飽きた。」なんて言うと、キリコは「わたしがいない時に聴けば良いでしょ。2人で一緒に居る時はこれが聴きたい。」って笑顔を見せた。


「ねぇ、あなたの子供が欲しい。」
「カナビスを嗜む人には産んで欲しくないな。」
「真剣に言ってるのよ。」
「……16歳の奴に?」

 今にも泣き出しそうな表情。垂れ流れるSEXの唄。
他人同士だからこそ一緒にいられる決定打。
君の子宮。僕のDNA。ガチャガチャのロックンロール。

「映画ばっか観てて、よく飽きないわね。」
「暇だからね。」
「毎月、生理が来るのが、安心はするんだけど、哀しいって言うかさ…。」
「……」
「あなたが死んじゃったみたいで。」

紅い血、死んだDNA、真夏の太陽。

「…映画が撮りたいな。海をロケ地にしてさぁ。家にボロいけどカメラもあるし。」
「うんうん、良いんじゃない。」
「こんな日常を、深い所で黒く湧き立っているものをちゃんと形にしたいなぁ。もし本気になったら協力してくれる?」
「いいわ。」────────────────────


コーヒーの過剰摂取。キリコの身体。何を忘れる為の涙なのかな?
僕はキリコの部屋で映画の脚本を書き始めた。
深くて厚い雲が僕の上に垂れ込んでくる。
まさかあの向こう側に青空があるだなんて、到底思えない。
僕はだらしなく過ごしている。
その間、キリコは働く。
だけど日が暮れてキリコと再会すると、元気なのは君の方。
些細な出来事をキリコだけはわかってくれると思って、必死になって話していた。
キリコには伝わっていたんだと思う。
このとりとめもない、無意味で深く落ち込んで気分が。
それでもキリコは気づかないフリをして笑っていた。

「全てわかっていたくて。それで眠れないの。」
「夜中まで通して貴方の邪魔をすることは、そりぁ間違っていると気付いているわ。」
「身体の疲れだってさ、誤魔化すのも精一杯よ。」
キリコの言葉が脳内で乱反射する。
「ねぇ、口でシてくれ。」

どうして君は嫌なくせに「いいわ」って言うんだい?

こんな日はいつまで続くのかな?
願うのは容易で、言葉にするのも容易で、
瞬間は困難で、伝わるのも困難で、
分かり合うのは難儀だ。───────────────


「ねぇー、子供が出来た……。
わたし、妊娠しちゃったかも。」
「………」
「ずっと生理が来てないの、多分そういうことだよね。」
「ちゃんと調べたの?」
「ううん。」
「…まぁ、何にせよきちんと調べよう。」
「それにしても貴方、何て顔をしているの?」
あてのない2人。1/2から1/3に。

震えている声、くしゃくしゃの顔、見つめる目、キリコの匂い。
若さをもて遊ぶこと。色褪せるペイヴメントの曲。
昼も夜も越えて、幾つもの日々を乗せて。
欲望の有様、死んだ目、いつかのうみ。

「あなたの事を一生、好きでいられる自信があるわ。
好きな人の子供は産みたい。」──────────────

それから市販の妊娠検査薬を使用した。
陽性反応は出なかった。
産婦人科に行って調べても妊娠はしていなかった。
お医者さんに想像妊娠かもね、なんて言われて病院を後にした。
帰り道、キリコは突然泣き出して「わたしの中に何もなくなってしまったわ。」と言った。
「こんな事になってしまって、なんか埋まらない穴が開いたような感覚だよ。」とも言っていた。
「揺るがない幸せが欲しい。」と言ってキリコは空を見上げた。
それにつられて僕も空を見た。
空はよく晴れていた。
僕らの気持ちや気分なんかはお構いなしの青空だった。

秋の匂い、ちょっと冷たい風。
それから川本真琴を聴きたがらなくなったキリコ。

「太陽を失った感覚だわ。」とキリコは何度も言っていた。

そうこうしている間に、映画の脚本が完成した。
キリコの部屋で脚本を書いている時、コーヒーを淹れてくれては「コーヒーと映画の相性は良いものよ。」と言っていたが完成する頃にはコーヒーがアルコールに変わっていた。

完成した脚本をキリコに見せると「この脚本は映像にしないでね、わたしだけのものにする。誰にも見せない。誰にも共有して欲しくない。」と言った。

男性に汚された女性が太陽に照らされ、
太陽を失った日に、光に抱かれる2人の物語だった。

太陽を失った日。

こんな日はいつまで続くのかな?

To Be Continued…

コメント

極東ブギー
No.1 (2018/05/26 10:20)
前回の更新分が一番好きでしたが、今回の方が好きです。
カートさんのブログは、更新の順番と、書いた順番って一緒なんでしょうか?
カート (著者)
No.2 (2018/05/26 22:22)
>>1 極東ブギーさんコメントありがとうございます。とても光栄です。
「好き」と言って下さって、なおハッピーです。

更新の順番と書いた順番は一緒です。
前回更新分から、だいぶ時間が経ってしまって今回のブログになってしまいましたが無事完成いたしました。
「キリコ」との話は元々3部作にする予定で、今回のが第2編です。
現在、3編目を執筆中なので今月中には上げる予定です。
…でこの3編目を上げて短編小説のようなブログはフィナーレです。
書きたいエピソードもあと何個かあったのですが、今回のように1年以上も滞っている状態が今後もあり得そうなので、手も回らないのでいっそフィナーレと言った具合です。

また「キリコ」3編目を書き終えた後に、僕が19歳の時に書いて原稿料3000円を貰った文章を上げます。
レコードで言うとボーナストラックのような感覚で上げます。
強烈なパンチラインが連発されている文章なので、そちらも読んで下さるとありがたいです。

全ての文章を、全ての言葉を、弱くてだらしがない僕から、弱くてだらしがないであろう人々に捧げる。
本当の豊かさに気づいている人々に捧げる。
愛を込めて。
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