今年1月に開催された大日本プロレスの若手主体興行『問ワズ語り~TO WAS GAT EARLY~』。話題になったのが、メインイベントでおこなわれた野村直矢vs阿部史典の一戦だ。
両者ともいわゆる“U系”のファイトスタイルでありながら、多くのプロレスファンが将来を期待する若手選手。その二人がよく参戦しているハードヒット。ハードヒットを「現在進行形のU」として主催している佐藤光留は、常々「会場の2階から後ろ向きに飛んだりするプロレスもあれば、蛍光灯で殴るデスマッチもプロレス。だったらハードヒットのような格闘技としてのプロレスがあってもいいじゃないか」という旨の発言をしている。
『問ワズ語り』で阿部と、いわゆるバチバチとした試合をした野村は「こうやって同じ考えの人間が、近いキャリアの中でいてくれることは、俺の中で……それだけで心の支えとなります。俺は今のプロレスはクソ食らえだと思ってます。俺は今のプロレスには中指だって立てられるんだよ! 俺はこのスタイルで……自分のこのスタイルを曲げずに上に行ってみせる! 阿部クン、同じ感情なら一緒に上に行こう!」とマイクアピール。
今の時代、U系ルールを採用している団体はほぼない(ハードヒットは団体ではない)。ルチャやデスマッチに比べると、明らかに地味なU系スタイルだが、そんなスタイルを好んで使っている若い選手がしのぎを削り合ってるだけでもビックリなのに、「今のプロレスには中指だって立てられる」とまで言ってのけるのだからすごい話だ。
そこまで言った野村が今年のシングルリーグ戦『一騎当千』で、どんな試合を見せるのか俄然注目だろう。今年の一騎当千はストロングBJ。しかも出場選手がほとんどが所属選手の中、野村の公式戦初戦の相手は現ストロングヘビー級王者の橋本大地。デスマッチにも決して負けないストロングBJの中で、野村がいわゆるU系のスタイルで上に行けるのかどうかを判断するには最適な相手かもしれない。
大地も空手仕込みの蹴りを得意にしているし、IGFで試合をしていた時期もある。だが、野村との対戦は野村vs阿部とはまたひと味違うものだった。さすが「中指を立てる」とまで言っただけあって、野村は大日本プロレスの中でいい意味で“ちょっと異質”だ。個人的には新日本プロレスに乗り込んだときのUWF軍団に近い印象を持っている。
藤波辰爾というライバルを見つけた前田日明。越中詩郎と名勝負数え唄を展開し、時にはタッグを組んだこともあった高田延彦。ヤングライオンとしのぎを削った安生洋二や中野龍雄……今の野村にはあの頃のUWF軍団のように、「お前たちには絶対に負けない! 俺はここで、このスタイルで上に行く」というような気概を感じる。
一方の大地も野村との一戦はUWFインター勢を迎え撃った時の、父・橋本真也さんを彷彿させた。野村からどんなに鋭い蹴りをもらおうが、関節技に苦しめられようが、気合いの雄叫びをあげながら立ち上がり、相手をなぎ倒すような蹴りやチョップを叩き込む姿は、「さすがはチャンピオン」という頼もしさがあった。
新日本に乗り込んだようなUWF軍団のような野村と、Uインター勢を迎え撃ったときの破壊王のような大地の一戦が面白くないわけがない。その一方でメインイベントで行われたCRAZY LOVERS(竹田誠志&塚本拓海)vsFACE OF DEATH(“黒天使”沼澤邪鬼&吹本賢児)のBJW認定タッグ級選手権試合は、デスマッチアイテムが使われる度に観客が悲鳴をあげるという(いい意味で)キ●ガイな試合展開となった。
やはりこのストロングとデスマッチの振り幅こそが、大日本プロレス最大の魅力。今年の『一騎当千』は3・11博多大会から正式に開幕するため、ニコプロで13日の22時から放送する3・8新木場大会は“プレ開幕戦”となる。しかし“プレ”だといって侮るなかれ! この3・8新木場大会を見れば、今年の『一騎当千』は……いや、この先の大日本プロレスをより楽しむことが出来るはずだ。
文●佐瀬順一
文●佐瀬順一
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コメント
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[野村直矢vs阿部史典の一戦だ]は、野村卓矢の誤りではないですか?