観音のブロマガ

七階で出会った「聖女」について(5)

2020/03/27 08:28 投稿

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シーン5


平凡な日々も時間だけはいつもと変わらず流れていく。紅葉の季節は過ぎ、病院周辺には時折積雪がみられるようになっていた。私はというといつもと変わらず、談話室にいた。もちろん私の病状も刻一刻と悪化の一途をたどっており、投薬量も少しずつ増えてきている。発熱も頻回に起きるようになり、昨日も高熱に悩まされていた。しかし熱さえ下がればまだ日常生活を営むことにさして問題は起こらなかった。

 そして姫子さんもまた私と同じく進行する病に蝕まれていった。もちろん詳しいことは何もわからない。ただ顔を見る頻度がさらに減ったのだ。私は基本的に談話室にいるし、私が顔を見ていないということは部屋から出ていないことを意味している。

 他の七階の住人達はというと何人かは亡くなり、何人かは変わらない時間を過ごしていた。顔ぶれが少し変わろうとも大きな変化が起こる事は無かった。

「なんなんだろうね、この七階って場所は」

と柄にもなく独り言を漏らしたちょうどそのとき、姫子さんの病室の扉が開き、彼女が顔を見せたのである。また一段と痩せたようだった。彼女は私の姿を見つけると弱弱しく微笑み、私のもとへとやってきた。

「お久しぶりです。お変わりはありませんか?」

「私も一応七階の人間なんだ。徐々に弱っていくのを感じるよ。」

「まあ、そうですよね。私もいよいよお迎えが近づいてるっぽいです。ほとんど投薬もなくなってきましたし。食事の量も半分以下になっちゃいました。」

彼女は苦々しい表情でそう言った。それは彼女のこけた頬を見ると何となく想像はできた。

「黒田さん、私、時々思うんですよね。今まで好き勝手生きてきたけど、これでよかったんだろうかって。別に今更真摯にカトリックの道に入りたいとか思っているわけじゃないんです。ただ何となく、そう思うんです。」

「私も最近思うことがあるんだ。ただ君とは逆でね、もっと自分の思うように生きていればよかったのかなってね。私は決して不自由な人生ではなかったけど、起伏の少ない生き方をしてきた。だから今の病気の宣告を受けた時も、とくに何も感じることは無かった。だからね、私は思うんだよ。どう生きたって最後はきっと何らかの問題にぶち当たるんだってね。もし君のその思いが心のうちにとどまるならそれでいい。でも抑えきれなくなったときは思うように行動してみたらいいんじゃないか?私たちはどうせ先が短いんだ、失敗しても後悔する時間は短くて済む。」

柄にもなく長々としゃべってしまった。でもこれは真実だと思っている。私のような行動しないものはどんな崇高な思いを抱こうともそれを自分の中にとどめてしまう。逆に自分の思いをしっかりと行動に移せる人もまた確かにいる。行動に移す分後悔もあるだろう。しかし彼らは行動に移した分人の心に刻まれるのだ。そして彼女は私と違い、多くの人の心に残るべき人物だと私は思っている。これは私の勝手な思いだが。それだけ私の中でかつての彼女の「聖女」たる姿が刻まれているのである。

「黒田さんってやっぱり独特ですよね。確かに私たちは先が短いんだし、こんな時こそ思う通りしなきゃね。」

そう言って彼女はロザリオを握りしめた。この時彼女が何を思っていたのか、私には知るすべもない。聞こうとも思わなかった。でも彼女は何か具体的な行動に出るのだろう、という確信はあった。以前彼女は病院を勝手に抜け出し、遠出をしたことがあると聞いた。また同じことをしでかすかもしれない。まあそれも彼女の選んだことであれば、私が口を出す事でもないが。


エンディングに向けて誠意執筆中
・・・がなかなか納得の行く結末が見えない

(註)
・原作者様とは一切関係ありません。表現等に不適切な点があればすべて私の責任です
・実際の諸制度とそぐわない点があるかと思います。そこはフィクションだと割りきって読んでください
・登場人物や医療機関はすべてフィクションです

プロローグ:https://ch.nicovideo.jp/nicobatoukannon3/blomaga/ar1865130
シーン1:https://ch.nicovideo.jp/tool/blomaga/edit?article_id=1866049
シーン2:https://ch.nicovideo.jp/tool/blomaga/edit?article_id=1867533
シーン3:https://ch.nicovideo.jp/tool/blomaga/edit?article_id=1870124
シーン4:https://ch.nicovideo.jp/nicobatoukannon3/blomaga/ar1874969


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