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ねここねこね

お月見

2013/09/20 00:18 投稿

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  • 結月ゆかり
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  • 結月祭
  • 秋ヲ結エル月兎

夏の暑さも衰え、朝や夕暮れには肌寒ささえ感じるようになってきた。暑かった日々と比べると過ごしやすく、時折吹く風の爽やかさは実に心地よかった。季節は秋、だんだんと日は短くなり月の時間が長くなっているようだ。空にまん丸のお月様を見つけてなんだか嬉しくなった。

「おー、今日は綺麗に月が見えるねー。満月かな。中秋の名月ってやつだね。」

そうだ今日はお月見をしよう、お団子が必要だよね、まだスーパーに残っているかな。なんて考えながら、自転車をこぐのが楽になった帰り道をいつもと違う方に向かって行った。

スーパーが閉まるにはまだ早い時間だが、季節の名物である団子がなくなるには十分な時間だったらしく、空っぽな棚を見つけるだけだった。もうすっかりお月見をする気持ちになっていたため、こうなったらもうコンビニでそれっぽいものでいいや、と思いながら出口へ向かうと、見慣れた姿が目に入った。

「ゆーかーりーちゃん。」

飲み物のパックが並んでいる前に立っていた少女に話しかける。少女は少し驚いた感じで振り返り、

「誰かと思えばマキさんですか。一人でスーパーなんて珍しいですね。何かあったんですか?」

こちらをみると安心したようにそう言った。

「お月見しようと思ってお団子買いにきたんだ。」

素直に、そう答えた。いつもならちょっかいの一つも出していたが、今日はたまたまそんな気分ではなかった。

「なるほど、マキさんらしいですね。でも、お団子持ってないようですが…。」

「そうなんだよー売り切れちゃったみたいでさ。置いてなかったんだ。だからコンビニでそれっぽいの何か買おうかなーって思ってたところゆかりちゃんを見つけたんだ。」

「そうですか。」

少し考えたようなそぶりを見せながら、

「うちではお母さんが月見団子毎年つくってるんですけど、いつも余ってしまうんですよ。よかったらマキさんも一緒に来ますか?」

顔がほんのり赤くなっているように感じた。

「えっ、いいの。行く行く。行きたい。」

「それじゃあ、荷物持ちお願いしますね。」

「はーい。」


私たちは家が隣同士で、年齢も近いため、昔から家族ぐるみでのおつきあいがあった。二人とも音楽に興味があり、一時期は同じバンドで活動していたこともあったが、音楽性の違いというか、曲の好みが違うという事に気がついてからは別々に活動することになった。それでも仲が悪くなることはなかったし、二人の時は今でも音楽の話をすることが多い。曲の好みだけでなく、性格も反対だ。大雑把でその時の気分で行動するのに対し、几帳面でいつでも冷静に考えて行動している。よくこれで仲良くなったねって昔は親たちからも言われていたものだ。曲の好みさえ一緒だったら、なんて思う。


途中、他愛のない話をしながら家に着いた。暗くなってから家にお邪魔する、というのは何だか久しぶりだ。もしかしたら初めてかもしれない。おばさんに挨拶して、縁側に二人で座る。そこには山になっているお団子があった。

「こ、これは確かに多いね。いつもこんなにあるの?」

「えぇ、なんだか我が家はみんな月が好きらしく、やけに張り切ってしまうんですよね。マキさんのおうちはあんまりそういうのやらないそうなので、いつも処理に困っていましたが、今年は大丈夫そうです。」

微笑みながらそう言った。確かに我が家はイベント事には疎い気がする。誕生日くらいかな。

「そういえば、お家の方に連絡はしなくていいんですか。」

「来る途中でしたよー。今日はゆかりちゃんちでお月見団子食べてくるって。そしたら食べ過ぎないようにだってさ。」

それならいいです、と言いながら奥に引っ込んでしまった。荷物などを置いてくるのだろう。一人で座りながら月を見上げた。雲もなく絶好の月見日和だ。もう日はないんだけど。月を見ていると友人が思い浮かぶ。ゆかりちゃんには月が似合うなぁ、綺麗だなぁ。心でそう呟いた。

「な、なんですかマキさん。なんて恥ずかしいことを。」

えっ、いつの間に戻って、いや、声に出てたのか。急に声をかけられて驚きはしたものの、なんとか落ち着き、

「いや、ゆかりちゃんには月がよく似合うよ。こうしてみるととてもきれいだもん。」

顔がはっきりと赤くなっているのが見える。なんだか、私も赤くなっている気がしてきた。

「かぐや姫、月のお姫様、かな。」

そう言おうとしたが、なんだか恥ずかしくなって言えなかった。

「そうだね、月のウサギさんって感じかな。餅憑きゆかりちゃん。」

そういうと、赤くなっていたのが嘘だったように普段通りになっていた。

「私が月のウサギさんなら、マキさんは何なんですか。」

わたし?わたしかぁ。うーん。

「狼、かなぁ。」

「なんでですか?」

ただの想像だけれど、狼は月の見える日に空に向かって吠えている印象が強い。まるでその先に愛しいものがあるかのいうに。なんて考えてしまうのはファンタジーに触れすぎたせいかな。

「なんだか強そうじゃない?」

「いや、まぁ確かに強そうなイメージはありますけど、それとマキさんとの関係は…。」

「まぁまぁいいじゃないゆかりちゃん。ほら、お団子食べよ?」

うん、美味しい。晩御飯には物足りないけど、一緒に食べるのはいいよね。

「知ってますか、ウサギは寂しいと死んじゃうっていいますけど、あれって特に根拠はないそうですよ。」

「へーそうなんだ。ゆかりちゃんはそれどう思うの?」

「そんな生き物がいたらびっくりですよ。いたとして人間か地球外の生物です。」

「じゃあ月のウサギさんのゆかりちゃんは?」

意地悪そうな顔をしていたと思う。

「私ですか?私にはこれからもずっと狼さんが付いていてくれそうなので、わかりません。」

涼しい風が二人の間を通り抜けられず、包むように流れていった。


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