こんにちは、すすろです。
リレー小説の第6回を書いていきたいと思います!
第5回はこちら
http://ch.nicovideo.jp/neet-coltd/blomaga/ar657032
リレー小説「勇者の冒険」第6回/全10回
村に戻った俺を待っていたのは、凄惨な光景だった。
踏み荒らされた柵、破壊され黒煙をふく家々、慌ただしく行き交う村人たち…。
悲鳴と怒号、絶望の泣き声。
今日の朝までの日常は、跡形もなく消え去っていた。
俺の足は一直線に、自宅へと向かっていた。
村の奥にある森入口から、自宅のある中心部に向かうにつれ、荒らされ方の度合いが低くなっている。
ついに、我が家に着いた頃には、付近の様子は普段と何も違わない状態だった。
その重苦しい空気以外は。
家の扉を開けると、忙しそうに何かの支度をしている母がいた。
俺が帰ってきたのを認めると、
「あんた無事だったのね! よかった」
と安堵したように言った後、また忙しそうに何やら支度をし始めた。
「まぁ、魔物は村に下りてきてたんだから、逆に森にいるあんたは大丈夫だとは、思っていたけど。村長さんも、そう言ってたのよ。だいたい…」
「父さんは?」
言葉を遮って俺が聞くと、支度のし終わった荷物を大きなかばんに詰めて、母は答えた。
「父さんは、今日は平地での狩りの日だったでしょ。襲撃の時には、ちょうど出払っていて。
聞けば、今日は他の人もほとんど、平地狩りに行ってたそうよ。慌てて戻って来て、自警団の人らと一緒にいる。魔物はもう追い払って、あとは周辺警備の役目をするって。
はい、これ、かばん持って」
突然渡された多量の荷物に、一瞬足をよろめかせたが、すぐに体勢を立て直した。
「どこに行くのさ」
「けが人の救護の人員と物資が全然足りないんだって。
女の人と子どもは、家中の薬やらガーゼやらを持って集まるのよ。
あんたも一緒に来なさい」
俺は子ども扱いされた気がして、一瞬反論したくなったが、このような事態のときに、そのようなつまらないことをどうこう言うことのほうが子どもじみている気がして、言葉を飲み込んだ。
そして荷物を背負い、まだ腰にさしていた試験用の刀を床に置いた。
「襲撃されたあたりが、ちょうど診療所のほうで…、よりによって都合の悪いところがね。
薬も器具も、かなり使い物にならなくなったらしいのよ。
先生も先生で…ペーパーなんだから無理しなけりゃいいのに、立ち向かおうとして、右腕を怪我したとか。それが、魔物にやられたというより、久しぶりで、リプルの使い方をしくじって、自分の腕を焼いたというんだから…。」
壊された診療所代わりに、応急の救護所にしているという村の学校へ向かう道すがら、母はそんなことを言っていた。
俺は現在の状況を、母の話と周囲の状況、俺の推察を元に整理してみた。
今夏の猛暑のため、グリーンドラゴンの主食の木の実がならず、グリーンドラゴンたちは餌不足に陥った。
餌を求めて緑の泉周辺を離れたグリーンドラゴンたちは、人里へ下りてきてこの村を襲撃した。
ちょうどその時間、魔物狩りの主力である男たちのほとんどが、平地とよばれる狩場へ出かけていた。
そのため村は戦闘力不足で、平地から男たちが戻ってくる頃には、かなりの被害を被っていた。
村に一つしかない診療所が襲撃を受け、医者も右腕を負傷したために、負傷者の治療が困難になっている。
その日は、それから救護所に行き、俺は息つく間もなく働いた。
そこで働いているのは女性や小さい子どもが多かったものだから、俺は重宝されて、重い荷物を持つ仕事をたくさん回された。
夜、近隣の町や村から救援物資とともに、応援の医師や看護師が派遣されてきて、やっと一段落したので、俺は家に帰ることを許された。
帰り道、村の寄合所のそばを通りかかると、大人たちが今度の事件について会議をしていた。
結局俺は、今日の試験に合格はできなかったから、まだ寄合に参加する資格もない。
窓の外から、大人たちの声を聞いていると、もっと防御の設備を増強しようだの、森付近に見張りをつけようだの、主力として戦える男の何割かは常に村に残しておこうだの、そのような対策が出されていた。
しかしついに、根本の原因を取り除こうという、つまり魔王を倒そうという意見は、一言も聞かれなかった。
第7回につづく…
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村に戻った俺を待っていたのは、凄惨な光景だった。
踏み荒らされた柵、破壊され黒煙をふく家々、慌ただしく行き交う村人たち…。
悲鳴と怒号、絶望の泣き声。
今日の朝までの日常は、跡形もなく消え去っていた。
俺の足は一直線に、自宅へと向かっていた。
村の奥にある森入口から、自宅のある中心部に向かうにつれ、荒らされ方の度合いが低くなっている。
ついに、我が家に着いた頃には、付近の様子は普段と何も違わない状態だった。
その重苦しい空気以外は。
家の扉を開けると、忙しそうに何かの支度をしている母がいた。
俺が帰ってきたのを認めると、
「あんた無事だったのね! よかった」
と安堵したように言った後、また忙しそうに何やら支度をし始めた。
「まぁ、魔物は村に下りてきてたんだから、逆に森にいるあんたは大丈夫だとは、思っていたけど。村長さんも、そう言ってたのよ。だいたい…」
「父さんは?」
言葉を遮って俺が聞くと、支度のし終わった荷物を大きなかばんに詰めて、母は答えた。
「父さんは、今日は平地での狩りの日だったでしょ。襲撃の時には、ちょうど出払っていて。
聞けば、今日は他の人もほとんど、平地狩りに行ってたそうよ。慌てて戻って来て、自警団の人らと一緒にいる。魔物はもう追い払って、あとは周辺警備の役目をするって。
はい、これ、かばん持って」
突然渡された多量の荷物に、一瞬足をよろめかせたが、すぐに体勢を立て直した。
「どこに行くのさ」
「けが人の救護の人員と物資が全然足りないんだって。
女の人と子どもは、家中の薬やらガーゼやらを持って集まるのよ。
あんたも一緒に来なさい」
俺は子ども扱いされた気がして、一瞬反論したくなったが、このような事態のときに、そのようなつまらないことをどうこう言うことのほうが子どもじみている気がして、言葉を飲み込んだ。
そして荷物を背負い、まだ腰にさしていた試験用の刀を床に置いた。
「襲撃されたあたりが、ちょうど診療所のほうで…、よりによって都合の悪いところがね。
薬も器具も、かなり使い物にならなくなったらしいのよ。
先生も先生で…ペーパーなんだから無理しなけりゃいいのに、立ち向かおうとして、右腕を怪我したとか。それが、魔物にやられたというより、久しぶりで、リプルの使い方をしくじって、自分の腕を焼いたというんだから…。」
壊された診療所代わりに、応急の救護所にしているという村の学校へ向かう道すがら、母はそんなことを言っていた。
俺は現在の状況を、母の話と周囲の状況、俺の推察を元に整理してみた。
今夏の猛暑のため、グリーンドラゴンの主食の木の実がならず、グリーンドラゴンたちは餌不足に陥った。
餌を求めて緑の泉周辺を離れたグリーンドラゴンたちは、人里へ下りてきてこの村を襲撃した。
ちょうどその時間、魔物狩りの主力である男たちのほとんどが、平地とよばれる狩場へ出かけていた。
そのため村は戦闘力不足で、平地から男たちが戻ってくる頃には、かなりの被害を被っていた。
村に一つしかない診療所が襲撃を受け、医者も右腕を負傷したために、負傷者の治療が困難になっている。
その日は、それから救護所に行き、俺は息つく間もなく働いた。
そこで働いているのは女性や小さい子どもが多かったものだから、俺は重宝されて、重い荷物を持つ仕事をたくさん回された。
夜、近隣の町や村から救援物資とともに、応援の医師や看護師が派遣されてきて、やっと一段落したので、俺は家に帰ることを許された。
帰り道、村の寄合所のそばを通りかかると、大人たちが今度の事件について会議をしていた。
結局俺は、今日の試験に合格はできなかったから、まだ寄合に参加する資格もない。
窓の外から、大人たちの声を聞いていると、もっと防御の設備を増強しようだの、森付近に見張りをつけようだの、主力として戦える男の何割かは常に村に残しておこうだの、そのような対策が出されていた。
しかしついに、根本の原因を取り除こうという、つまり魔王を倒そうという意見は、一言も聞かれなかった。
第7回につづく…
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