ライブといってもワンマンではなく、氣志團主催のフェスでのできごと。たったの40分間ではあったけど、それは私の宝物となった40分間。
DJブースまで行ってハイタッチ、狂ったように踊ってしまうほど大好きな曲初めて彼の歌を聴いたのは、おそらく私が9歳か10歳のとき。
そのころ、地元の駅にミスタードーナツがあり、ドーナツが大好きだった私は、母と駅のスーパーへ買い物へ行くときや妹と駅の近くまでおつかいにいったとき、ことあるごとにミスドに寄りたがったのを覚えている。
いつ行っても、何時に行っても、何時間いても、そこではいつでも同じ曲が流れていた。それが1998年に発売された「ドーナツソング」だった。
歌というものをいまほど強く意識する歳ではなかったため、「こればっかり流して、もう聴き飽きたわい!」としか思っていなかったのだけど、いまとなってはこれを流すDJが現れた日にゃ、DJブースまで行ってハイタッチ、狂ったように踊ってしまうほど大好きな曲。
あの映画に出演していたロン毛の男の子、大好きだったなぁもうひとつ記憶のなかに強く残っているのは、映画『ジュブナイル』の主題歌であった『アトムの子』。
映画自体はたしか映画館に観に行ったんだっけ、もう17年も前のことなので思い出せないけど、とにかく映画のDVDを買ってもらったのは覚えている。
繰り返し繰り返し、私以外の家族全員が飽きるほど観た。お気に入りの映画やアニメを何度も何度も観るクセは、いまでも変わらない。
そのころ、車に取り付ける外付けのナビが普及し始めていてCDやDVDを再生することができたので、DVDを持ち込んで車でも無限ループ。もちろん主題歌だって歌詞カードなしで歌えた。
あの映画に出演していたロン毛の男の子、大好きだったなぁ。
山下達郎ってホントに実在したんだー達郎さんの出番まであと20分を切り、なるべくステージの近くで見ようと、私は同じくヤマタツ好きの友だちと出番を待った。
普段はそんなこと絶対にしないし、まず誰かを近くで見たいと思うことすらない。
どんなに好きでも人の多いステージ近くには絶対に寄らないし、豆粒くらいにしか見えなくても声さえ届きゃ十分なタイプ。
氣志團万博では恒例のアーティスト紹介VTRが流れる。そこからの記憶があまりない。登場前から足が震えた。
こんなことってあるだろうか。人の歌を聴いて涙があふれるなんて。
それはいつもイヤホンから流れる声とまったく変わらず、本当に歌っていますかと聞きたくなるくらい音源と寸分の狂いもないトーンで歌う達郎さん。
1曲目が終わり、「山下達郎ってホントに実在したんだー」と、謎の感想が頭に浮かぶ。
『アトムの子』ではなんと竹内まりやさんがコーラスで登場し、これまた大興奮。自分がいちばん最初に好きになった曲を聴けて素直にうれしかった。
『BOMBER』はDJするときによくかける大好きな曲だし、『SPARKLE』も夏のドライブには欠かせない最高のサマーチューン。最後は『さよなら夏の日』で大号泣をかまし、ライブは終了。
空からは雨が降りしきり、少し肌寒い。ライブが終わるとともに、私の夏も終わったなぁとしんみりしながら、ぐちょぐちょになった雨靴で家路につく。
夏の最後の、最高の思い出。
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