「え? 何年も付き合ってるんだから結婚するんじゃないの? 好きだったら結婚すればいいじゃない」なーんて昔は思ってました。
でも、結婚を意識しだしたからこそ「このまま結婚していいのかな?」という疑問が出てくることはよくあります。
女のキャリアをどうとらえるか問題結婚を前にしたときにもめる話の筆頭が「女のキャリアをどうとらえるか問題」です。
とくに、仕事が好きなバリキャリや専門職の女性が「自分の仕事を支えてほしい男性」と付き合って結婚しようとすると、価値観の相違が思いっきり噴出します。
「私はいまの仕事が大好きだし、ようやく希望の編集部に配属したから、毎日終電まで仕事をしてる。彼もそれをわかってくれると思ってたんだけど『結婚するならもう、子育てのことも考えて、少し早く帰れる仕事にしてほしい』って言われて...」
という女性編集者。
「彼の家は代々医者で、専業主婦が家を守るという伝統なんだよね。だから彼と彼の親が同じことを求めてきてるんだよね...理系大学院までいって勉強して専門職になったんだけど、医者を支えるほうが大事ってことなのかな...」
という理系研究職。
「彼に『結婚を考えているから、転勤先についてきてほしい』と言われたんだよね。でも、そうすると仕事を辞めなくちゃいけない。いまちょうど昇進するかどうかの大きなプロジェクトを任せられてるんだよね。いま辞めたら絶対に元のポジションには戻れない...」
という外資プロマネ。
バリキャリ勢ではこのような「キャリアか結婚か、二択を迫られる」話は事欠きません。
「別れなよ、そんな男」と怒る女友だちそういう話がバリキャリ女子会で出てくるたび、会議は大★紛★糾します。
「なんで女が合わせることが前提になってるわけ!? 自分が歩み寄る努力がいっさい見られないよね!? 別れなよそんな男!」
「親の言うことをそのまま言ってくるなんてマザコンだよ! もし結婚したらもっとキャリアとかに干渉されるよ? それでいいの?」
「Aちゃん、学生のころからこの仕事をやりたがってたじゃん! 誰でもなれるものじゃないんだよ? しかも才能あると思うし、本当にもったいないよ!」
仕事をして楽しそうにしていてたくさん努力している彼女たちを知っているからこそ、まわりの女友だちは「努力を否定する男なんてうんこ!」「女のキャリアに理解がない男なんてうんこ!」と怒りをあらわにします。
そして最後はだいたい「話し合え! ダメなら別れろ!」の大合唱。
ふんぎりがつかない女たち彼女たちもそんなことはよーくわかっています。おそらく女友だちがこのシチュエーションにいたら同じことを言うでしょう。
でも、いざ自分の立場になるとそうはいかないもの。「そうね! 私は私の道を生きる! 別れる!」「きっちり納得がいくまで話し合ってだめなら別れるわ!」とすぱーんと決断する女性は少数派です。
理由はいくつかのパターンに分けられます。
1. 「うーん、でも浮気とかしたわけじゃないしモラハラでもないし、私を傷つけてきたわけじゃないし...」
→「わかりやすい別れの理由」ではないから
2. 「彼とはずっと仲良くやってこれたし、すごく居心地がいいんだよね。今回みたいな意見の違いははじめてで...」
→これまで仲のいいカップルだったから
3. 「たしかに彼の言うとおり、女としてはこういう無茶な働きかたは正しくないのかも。子どもを産んだら同じことはできないだろうし...」
→自分の働きかたや「女としての在りかた」に疑問があり、自信がないから
4. 「いま28歳じゃない? いまの彼と別れたとき、次の彼ができるかどうかもわからないし、20代のうちに結婚したいんだよね...」
→別れたあとが不安だから
5. 「これまで付き合ってるときはなにも言わなかったんだよ? 結婚したら、彼もわかってくれるかもしれないし...」
→「彼が変わってくれるかもしれない」という期待があるから
これらの理由が複合的に絡み合い、彼女たちは「いまの仕事は続けたい。でも、結婚もしたい」と悩み抜きます。
「結婚するならいまの仕事を辞めて」と言われた。でも、結婚したい。彼女たちが悩むのは当然です。
仕事も彼との関係も、どちらも数年かけて築き上げてきて、どちらに対しても愛情があります。
恋人関係も仕事も、「人生」における比重がとても高いうえに、これまでの自分を作り上げてくれたものです。急にどちらかを選べと言われても、混乱して迷うのは当たり前。
さらに彼女たちが結婚を意識するアラサーという年齢は、仕事では中堅としてこれからのポジションやキャリアを決める重要な時期。
結婚については言わずもがなで、第二次結婚ブームに乗るか乗らないかの重要な時期。
どちらもいまここで捨てたらこれからの人生に重大なインパクトを及ぼします。
だからこそ彼女たちは「彼が変わってくれるかもしれないし」「わかってくれるかもしれないし」「でも彼のことを嫌いになれないし」「でも仕事は続けたい」「でも、女のしあわせは結婚かもしれない」とアンビバレントに悩み続けます。
お互いが大事にしているものを大事にできるかどうか「なぜ女ばかりが悩まなければならないの?」「なぜ女ばかりに負担を強いるの?」と周囲の女性陣が怒るのはもっともですし、そういう声が上がって世のなかが変わっていくのも超重要です。
でも、だからといって「そんなことで悩むのは軟弱」「戦え!」と彼女たちに迫るのも酷ってもの。彼女たちにとっては人生に甚大な影響を与える決断となるわけです。
悩むのは当然。しょうがない。人間ですし。
彼女たちは不安やジェンダー規範、まわりの意見、愛情などさまざまなファクターを考慮して「結婚かキャリアか」と悩んでいますが、私は「自分が大事にしているものを相手は大事にしてくれるのかどうか」という視点で、彼との結婚を進めるかどうかを考えてほしいです。
なぜなら、結婚相手とは、これから数年もしくは数十年の人生を一緒に過ごすことになるからです。
長く一緒にいれば、さまざまな問題や課題をともに乗り越えていかなくてはなりません。そのとき、「お互いへの敬意」がなければ、どちらかが疲弊して不満を貯め、関係が続かなくなります。
「お互いが大事にしているものを尊重する」ことは、お互いに敬意を持っているかどうかの判断軸のひとつになります。
「仕事を辞めてほしい」と言われて困惑する女性たちの事情はさまざまです。
「自分が仕事が好きだ」ということを相手がそもそも知らなかったり、あるいはもっと気持ちが軽いと思っていた場合。
単純に「女性は結婚したら会社を辞めるもの」という昭和年代の思い込みがあって、アップデートされてないだけの場合。
「女は男に従うべき」という強固な「べき論」があり、それ以外の選択肢を彼が認めようとしない場合。
「自分が変わるつもりはなく、女が変われ」と迫ってきて話を聞かない場合。
もし「そこまで君が仕事を大事にしているなんて知らなかった」というだけなら、話し合いで「私はこれだけ仕事が大事だから、ないがしろにされたくない。大事に思ってほしい」と伝えれば、問題が解消される可能性があります。
一方で「君が大事なものを大事にする気はない」というタイプの場合は、結婚したら同じように「君が大事なものを大事にする気はない。捨ててくれ」と言われ続けるでしょう。
もし話し合いをするなら「この人は、私が大事にしているものを伝えたら、尊重してくれるのか」という視点を持って臨んでほしいです。
「女のしあわせ」だの「結婚は勝ち組」だの「譲るのも愛情」だの「彼を逃したらもういい人は現れないかもよ?」などという言葉はすべてノイズです。無視無視。
フォーカスすべきは「この人と結婚した場合、自分の意思は尊重されるのか、敬意を払ってもらえるのか」という点、言い換えれば「自分はハッピー・ストレスレスに生きていけるのか」という点です。
そこを見誤らなければ、別れる道を選んでも、彼と結婚する道を選んでも、激しく後悔することはないと思います。
正直な話、女友だちの立場としては、別れようが結婚しようが、彼女たちが楽しそうに生きてればなんでもいいのですよ。
だからどんなに悩んでもウダウダもだもだしても、最後は「自分がハッピーになる道」を選んでほしいなーと思っています。
撮影(トップ)/田所瑞穂 撮影/出川光 文/ぱぷりこ
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