とくに、約束の時間よりも少し早く着いて、もうすぐ現れるであろう誰かを待っている時間が好き。
早く会いたいような、でももう少しワクワクを感じていたいような、不思議な気持ちにさせられます。
そんな誰かとの待ち合わせが、もっと楽しくなる場所が、下北沢・南口のRecipe SHIMOKITA(レシピシモキタ)に設置されている「こいぬの木」。
12月3日には、生誕1周年を記念して、「こいぬの木」の生みの親であるリリー・フランキーさんを迎えたトークショーが開催されました。
下北沢には、何かになりたい人が住んでいる1日20万人以上が利用するといわれている下北沢駅。
ところが、これまで駅周辺には目印となるような待ち合わせ場所がありませんでした。
そこで、「会いにきたくなる場所」をコンセプトに、待ち合わせのシンボルとして作られたのが「こいぬの木」。
モニュメントのコンセプトからデザインまでを、リリー・フランキーさんが手掛けています。
何匹もの子犬が、カラフルな木から顔を出している、なんともかわいらしいデザインです。さっそくリリーさんにコンセプトを聞いてみると、
「俺、若いときずっと下北に住んでたんです。下北って、『いつか何かになりたい』っていう人が住んでる街なんですよね。だから、こいぬが木になってて、そこからどんどん大人の犬になっていく、っていうのをイメージしてデザインしました。あと、待ち合わせは基本犬じゃないですか。ハチ公とか」
とのこと。また、
「これね、絶対下北みたいにポップな感性のある街じゃないと許してもらえないオブジェですから。吉祥寺なんかに建てたら、クレームが来ますよ。本当はこういうのを成城とか松濤とかに置きたいもんですけどね」
と、笑いながら話すリリーさんからは、実際に住んでいたからこその下北沢への愛情を感じました。
「いい感じに幼稚になれる街であってほしい」
また、この子犬には、リリーさんの若いころの思い出が詰まっているのだそう。
「この子犬、ペロくんっていうんですけど、俺小学生のときから描いてるんですよ。下北に住んでたイラストレーターなりたてのころも、仕事も何もなかったけど、この犬をよく描いてて...何だか感慨深いですね。そのときは下北の人たちにいろいろお世話になりました」
いまでこそ、イラストレーター、ライター、演出家、俳優など、マルチに活躍しているリリーさんですが、その実力は下北沢での下積み時代に培われたようです。
そんなリリーさんの思い出深い下北沢は、駅前のビルがリニューアルされたり、新しい駅舎が建てられたりと、ただいま再開発真っ最中。
そこで最後に、これから下北沢はどんな街になってほしいか? と聞いてみると...
「下北は、何かになりたい人たちが集まってくる街なので、あんまり物価が高くなるのも良くないし、小さな商店がなくなって、複合施設みたいなものばかりになるのもね...。やっぱり尊重されてきた『個』っていう存在が下北の文化を形成してきたので、"どこにでもあるようなちょっと大きな街"にはならないでほしいですね。いい感じに幼稚になれる街であってほしいかな」
と語ってくれました。
たくさんの人の、それぞれの人生や価値観をやさしく包み込んでくれる街・下北沢。
なんでもない待ち合わせは「こいぬの木」の下で。
撮影・文/グリッティ編集部
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