子どもを産まない選択はタブー?
ことの発端はイスラエルの社会学者オーナ・ドナーテが行った調査にさかのぼります。
近年では女性が出産し、子どもを育てる役割を当然のように期待されていることを彼女は疑問視。オーナの質問は「もしも時計の針を戻すことができたなら、母親であることは大変な苦労をするとわかった上で、それでももう一度母親になりたいとあなたは思いますか? 」というものです。
「いいえ」と回答した女性23人の体験談に耳を傾けることで、現代の母親としての役割は本当に正しいものなのかを考察。女性の立ち位置をもう一度見直すことと、女性に圧力をかけないような、時代の流れにそった社会の在り方について考えることが調査の目的です。
子どもの事は愛してる、でも......
自分の子どもは、いとおしいと感じるけれども「母親である」ことに違和感を覚えていた、といった声も聞かれたとか。子どもが生まれたことで自分の自由が制限されたと感じる女性もいたそう。
「(ジャーナリストのエスター・グーベル氏が考える「母親であることの難しさ」)肩にのしかかる責任感・自分で意思決定できる自由を失くすだけでなく、自分のことを構えなくなること。夫やパートナーとの関係の変化もそうだし、目に見えない自分の体の変化。眠れなくなること、誰も助けてくれないことへの怒り、子どものことをずっと心配しすぎて、不安で、どうしていいかわからなくなること。いいお母さんであることって? 仕事も、母親としてもものすごく努力しているからストレスもたまる。悲しみがこみあげてくる」
(『雑誌Die Zeit』No.12より引用翻訳)
「#regrettingmotherhood」ではさまざまなツイートがなされ、調査そのものの在り方や繊細さを欠くやり方、質問方法そのものに異議を唱える人も多数でました。
・「子どもは3人いるが人生が充実している。(子どもを持たなきゃよかったなんて)ぜいたくな悩みだな! 」
・「私と、パートナー、2人きり。子どもゼロ。子どものいない生活を楽しんでいます。」
・「父親も母親も仕事をしていて、子どもは幼稚園か保育園へ。現代の典型的な家族像のように見える。けれどほんとうはしわ寄せの多くが女性にきている」
・「結婚した相手や就いた仕事......。これらについては後悔した、といっていいのに子どもについてだけは言っちゃだめなの? 」
(「#regrettingmotherhood」より引用翻訳)
子どもを持つ・持たないの選択肢について広く語ることがまだ、思った以上に世界中でもタブー視されていることに気づきます。
女性にとっての本当のしあわせとは?
反響のあったテーマですが、いままでのタブーテーマである「母親になることはしあわせ」ということについて口火をきったことには大きな意味があることと個人的には思います。
同時に、顔を出さずになんでも意見を言えるネット社会という背景や、人生の重要な場面における女性の選択肢が男性に勝るちからを持ってきている、ということもしばしば感じています。それでも「産まなければよかった」と言いきってしまうのは子どもを持つ親としてさびしく思うのです。
日本ではすこし前、女優の山口智子さんが子どもを産まなかった自身の選択肢についてコメントをよせ話題を呼びましたが、「日本」においてはこんなハッシュタグはバッシングされてしまいそう。下手をすれば社会的な地位やあらゆるチャンスの面において、ほかの女性からの怒りや嫉妬をかってしまうこともありそうです。
[#regrettingmotherhood,ACADEMIA]
image via Shutterstock