2015年にドイツで秋公開、大きな反響のあった悲劇的コメディー映画「伝説のマルグリッド」。この映画の主人公は、実在したある一人の女性をモデルにつくられています。

モデルになった女性というのが、フローレンス・フォスター・ジェンキンス。のちに彼女は「伝説の歌姫」と呼ばれるようになるのですが、何が伝説かというと、なんとオペラ歌手なのに、とんでもない音痴だったのです!

なぜ音痴なのにオペラ歌手になれたのか?

幼い頃から音楽を愛していたというフローレンス。1日のレッスンに4〜5時間も割くほど、音楽に没頭していたといいます。

しかしレッスンの甲斐もむなしく、いっこうに歌唱力はあがりません。残念なことに、彼女は音楽的才能がまったくなかったのです。

やがて、フローレンスの夢である歌手になること反対していた両親と前夫がなくなり、彼女のもとに莫大な遺産が舞い込んでくることに。これをきっかけに、音楽への情熱が加速します。

大きなお屋敷に移り住んだフローレンスのまわりにいるのは、たくさんのお手伝いさんや執事など"太鼓持ち"の取り巻きたち。

そう。社会的地位も高かったことから、まわりの誰ひとり、彼女の歌のひどさに触れないという「暗黙の了解」ができあがっていたのです。褒めちぎられるままに自分の歌を過信した彼女は、ついにオペラ歌手としてレコードを出すことになったのです。

気になる観客の反応はというと、ひどすぎる歌が逆に人気を博し、たくさんの人々が彼女の音痴な歌を求めたといいます。

夢をかなえるのに才能は関係ない

夢に向かって邁進し続けたフローレンス。まっすぐに「自分の好きなこと」に食らいついた魂の叫びが、人々の共感を呼び、「自分もこう生きたい」という大きな心の支えとなっていたのではないかと思っています。才能がなくたって、「ただ好き」という情熱が人々の心を動かすことだってあるのです。

一方で、彼女が本当に求めていたのは、じつは(嘘でも)称賛を超えた、それ以上の人とのつながりや、「愛」といった、消えやすく、また目に見えないものだったのかもしれないと感じました。

日本でも、フローレンスをモデルにした映画『偉大なるマルグリット』が現在公開中。なぜフローレンスは歌を歌い続けたのか? 映画を観て思いを巡らせてみては。

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