と言われるようになってきましたが、私の所感だと、ドイツではナチュラルバース志向の人もまだまだ多く、フランスやアメリカほどではないのかなぁ......という感じ。ただし、日本と比べればはるかに「日常的」ではあると言えます。
なぜ無痛分娩が当たり前の選択肢になるの?
大前提として、制度面の違いがあるからだと思います。以前にもお話したとおり、ドイツでは妊婦健診を受ける病院と、お産する病院は基本的に別。
◆妊娠期間中 → 小規模な婦人科医院(分娩施設はない)
◆お産 → 分娩施設のある総合病院・大学病院
無痛分娩するには「硬膜外麻酔」が必要です。つまり背骨と背骨の間から硬膜外腔にカテーテルを刺して麻酔薬を注入するというもの。麻酔医による処置が必要です。
ドイツのお産は総合病院で、基本的に麻酔医が常駐しているため、もともと無痛分娩の予定はなくとも、急に無痛分娩がしたいと申し出ることも可能なのです。しかも、費用は全額保険でカバー。そのときの状況や体調で、比較的気軽に決めることができます。
一方、日本は基本的に妊娠中に通った病院でお産するというのが一般的。街の小さなクリニックでは、無痛分娩のためだけに麻酔医を常勤させるには、コスト・人事面からしても、おそらくとても難しいこと。そのため日本では無痛分娩対応可能な施設が限られており、日常的選択肢にはならないのかもしれません。
無痛分娩の割合はもっと高くていい
先日参加した病院の説明会で、その病院の産科のボスであるドクターが発した言葉がとても印象に残っています。それは、
私個人としては、無痛分娩を選ぶ産婦さんの割合がもっと高くてもいいと思っている。
特に初産婦さんの場合、やはり「痛みに耐えてこそ」の考えからなのか、お産が長引いても麻酔に頼らず頑張ろうとする人が多いのだそう。しかし、そのドクターに言わせると、それは少々ナンセンス。緊張や痛みのあまり、呼吸が浅くなり、赤ちゃんに十分な酸素を届けてあげられないくらいなら、早めに無痛分娩に切り替えてリラックス、深い呼吸でお産にのぞめるほうがよっぽどいい、というのです。
ドイツでは陣痛室にベッドだけではなく、バスタブが置いてあることも。
お風呂に浸かってリラックスを勧められます。
じつは、私自身も自然分娩から途中で無痛分娩に切り替えたうちのひとり。長引く痛みと終わりが見えない不安(いや、絶望?)からの解放、あの麻酔にどれだけ救われたことか。事前に打ち合わせしていなかったにもかかわらず、手早く無痛分娩に切り替えてくれた病院の医療体制が、本当にありがたかったです。
もちろん無痛分娩にもリスクはあるので、無痛分娩にしたほうがいいとまでは言いません。けれど、「いざとなればいつでも無痛分娩に切り替えられるんだ」と思えるこのドイツのシステムは、妊婦さんのお産に対する気持ちの負担を、ずいぶん軽くしてくれているのではないかと思います。
※無痛分娩とは、硬膜外無痛分娩とも呼ばれる麻酔で下半身の痛みをとる分娩方法のこと。 参照:日本産科麻酔学会