という取材がもしきたら、私はこれだな、とよく思うのがこの土鍋です。
これは約27年前に私が初めて買った土鍋で、無印良品のもの。その当時はまだひとり暮らしを始めたばかりでキッチンも小さく、食器なども最小限しか持っていませんでした。
この土鍋は手頃な値段でサッパリしたデザインが気に入って選んだのですが、まさかこんなに長い付き合いになるとは思っていませんでした。大人になったいまでは陶器の手入れの仕方もわかるようになってきましたが、手に入れた当時は本当に無知でしたし、知っていてもたぶん何も気にせずという感じで、かなり大雑把に扱ってきたのです。
普通の鍋料理のほかにもパエリアやパンなどを焼いたり、何度か海外引越をしたときも、服に包んで大型トランクに入れ飛行機で運んだり。でも一度もヒビが入って困ったりすることもなく立派に働いてくれていて、いまでは私の数少ない宝物のひとつになっています。
私はいつからか、白い化粧土をかけて焼かれた「粉引」という種類の陶器が好きになったのですが、もしかしたらこの土鍋の愛着から 粉引が好きになったのかなぁと思うほどです。
手に入れた当時は乳白色でツルリとした鍋でしたが、いつのまにか貫入(細かいヒビの模様)が入って
とてもいい雰囲気になったなぁと思います。
「器を育てる」という言葉がありますが、この土鍋は"ひとりで立派に育ってくれた優等生"といった感じです。
時々、この土鍋をつくった方を知りたいなと思うことがあるのですが、いまとなっては知るすべもありません。まさに『無印良品』だなぁとシミジミ。
これからも長く付き合っていきたい、大切な可愛い土鍋です。