シンプルだけど実用的な手帳
こちらがその母親手帳。自治体ごとに個性があってかわいらしい日本の母子手帳とはうって変わって、ドイツは全国どこへ行ってもこの「ど」シンプルなデザイン。役所へ行って受け取るのではなく、かかりつけの婦人科から妊娠10週目前後に直接手渡されます。
さて、先ほどからわたし、「母子」手帳ではなく「母親」手帳と言っていることにお気づきですか? これ、ドイツではお母さんと子どもが、それぞれ別の手帳をもらうため。日本なら母子手帳1冊ですが、こちらでは妊娠したら、「母親手帳」、赤ちゃんが産まれたら、「子ども手帳」というわけ。また、子ども手帳に加えて「予防接種手帳」なるものもあり、これは生涯にわたって使うことになります。
妊娠発覚から出産 → 母親手帳
誕生~
→ 子ども手帳+予防接種手帳
このように、別々であるがゆえに、母親手帳には各種検査結果データや毎回の検診結果などがかなり詳しく記載されていて、カルテのような役割を果たしています。なので、母親が自分自身で記入するような項目は一切なく(中を開いてもイラストなどは皆無)、書き込むのはドクターか助産師。また、一冊の母親手帳には2回分の妊娠が記録できるようになっています。だからこそ、仮に飛び込みの出産や救急搬送などがあっても、受け入れ側は母親手帳を見ればどんな妊婦さんなのかひとめでわかり、スムーズに対応できるそうです。
妊婦さんの頼れる相棒
母子手帳、というとほんわかムード満載でかわいい表紙のものをイメージしていたわたし。はじめてドイツでこの母親手帳を受け取ったときは、そのあまりの素っ気なさに嬉しさよりも「なんじゃこりゃ!」が先だって、正直ちょっとがっかりしてしまったほど。けれど、その機能性を知り納得! つまりこれは、何かあったとき、どこへ行っても迅速に、最善の対応をしてもらうためのパスポートなのだということ。そう思うと、見た目はどうあれ、この手帳が頼れる相棒に思えてくるのです。
※参考:博報堂生活総合研究所「日本の母子手帳を変えよう」プロジェクト