子どもに話すべき?
まず、今回のような凄惨な事件が起きた時、親として悩むのは、子どもに話して良いかどうかでしょう。これについては、どの専門家も、みな「話すこと」をすすめています。しかも話す年齢は幼稚園に入る3歳ごろからという目安。
たとえ子どもの方から質問してこなくても話すべき、という意見の精神分析学者Claude Halmos(クロード・アルモス)氏は次のように述べています。
「子どもは親の不安を感じるものだし、大人の会話を読み取るものだ。テレビやラジオでも見聞きするだろうし、学校の休み時間、他の子どもたちの話も耳にするだろう。子どもにとって、親の説明は非常に大切だ。信頼をおいている親に話を聞くことで、彼らは、情報を整頓する箱を持つことができるのだ」
(PSYCHOLOGIESから翻訳引用)
周りの重い空気を感じた子どもたちは、もしかしたら、「話していけないこと」だと思ってしまっているかもしれません。ここで重要なのが、
「大人が子どもに話を切り出すことで、子どもは大人に質問しても良いのだと理解する」
(LA PARISIENNEより翻訳引用)
ということ。親からの話を始めることが大事なのです。
どういう風に話すべき?
では具体的にどうやって話をしていくか。それには、「子どもへの質問」がすすめられています。たとえば、「パリで何があったか知ってる?」「どこで聞いた?」「どんなことを聞いた?」という風に始めるのがいいかもしれません。
子どもが話すことで、間違いがあれば直し、できるだけ簡単に、事実を説明するのが望ましいそうです。暴力やパニック現象について詳しく話す必要はありませんし、当然ながら、血なまぐさい描写は避けたいところです。
できるだけ見せたくない映像
アルモス氏の見解では6歳以下、心理学者Anne Bacus(アンヌ・バキュス)氏とAlix Foulard(アリックス・フーラール)氏によれば、7~10歳までは、できるだけテレビの映像から遠ざけることをすすめています。
バキュス氏は次のように言います。
「画像・映像は、言葉よりも大きな影響を心理に及ぼします。(このような状況では)親は、子どものついたて役になり、ひどい画像が、子どものトラウマとならないよう、守ってやる必要があります。」
(L'EXPRESSより翻訳引用)
テレビから遠ざけるのが難しい、もう少し大きな子の場合には、横に座って一緒に画面を観ることがすすめられています。我が家にはテレビがないので、見たくもない映像を流される心配はありませんが、それでも見ようと思えば、インターネット上でいくらでも画像や映像を見つけることが可能なこの時代。視覚情報は確かに魅力的ですが、取捨選択する意思を持たなくては、大人でも目の前を流れる情報にのみ込まれやすくなるものです。子どもが目にする映像には、さらに気を付ける必要があるということでしょう。
思春期に入った子どもとは話し合いを
思春期に入った子どもたちは、すでに、SNSにも自ら参加している場合が多く、彼らに目隠しをすることはもはや不可能です。
アルモス氏いわく、
「(思春期の)彼らには大人と同じように接することが大切です。親も自分の不安や恐怖を隠すことはありません」
(LA PARISIENNEより翻訳引用)
なのだそう。実際こういう状況において、怖いと感じるのは、当然の感情でもあります。その上で、アルモス氏は、「怖さとともに生きていくこと」を学ぶのが大切だと言っています。
「社会科の教科書を参考にして、他の国ではすでにこういう状況であるということや、過去にもこういう状況の時代があったと説明してもいいでしょう。(中略)(そのうえで)、別な国、あるいは、別な時代の人々は、みなこの恐れとともに生きる方法を見つけてきたんだよと教えることです。だからこそ、私たちは皆で協力し、支え合っていかなければならないことを説明しましょう」
(PSYCHOLOGIESより翻訳引用)
この世の中ではテロ事件にあうよりも、車にはねられる危険性の方がずっと高いわけですから、そういうことを具体的に教えてあげて、状況を相対的にとらえることも大事なことでしょう。
こういう状況においては、子どもに語りかける言葉を選ぶことで、親自身が自分の精神の安定を得る効果もあるような気がします。子育ての多くの場面で経験するように、「子どもの手助けをしているつもりで、じつは自分が助けられている」という構図は、ここでも同じなのかもしれません。
我が家でも、何度か今回の事件について子どもと話し合いました。うまく説明できたとは、とても思えませんが、それでもこういう機会に親が考えて、本音で語った言葉は、何らかの形で子どもの心にしみて残るのではないかと思ったりしています。
[LA PARISIENNE,PSYCHOLOGIES,L'EXPRESS]
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