皿洗いを通してのマインドフルネス実験
被験者に皿洗いをさせたこの実験。皿洗いの前に半数には、単なる皿洗いの手順説明を、もう半数には、マインドフルネスを意識した皿洗いの方法を読ませました。その結果、マインドフルネスのイニシエーションを受けていなかった被験者には、皿洗い後、何の心理的変化も認められなかったのに対し、「マインドフルネスを意識してお皿洗いをした被験者の27%にはストレス軽減、25%にはインスピレーションの向上」が見られたのです。この実験結果から、何も特別に時間を取らなくとも、家事をしながらでさえ瞑想は可能だとわかります。同実験の研究者の一人Adam Hanleyも次のように言っています。
「特に興味深いのは、生活の中でいつもしていることが、マインドフルネスに役立ち、ひいては心身の健康を高めることができるということだ」
(Le Parisien より翻訳引用)
無心になれる家事作業がインスピレーションを高める
マインドフルネスを意識した皿洗いで大切なのは、洗剤の匂いや、手にかかる水の温度、皿や泡を触れる手の感触などに集中することで、「今この瞬間、皿を洗っているという作業」にだけ精神を傾けるということです。これを応用すれば、皿洗いに限らず、窓拭き・床掃除などでも「拭く対象と自分」「自分の五感」に集中し、雑多な他の思考に揺れないことで、マインドフルネスに通じる家事はたくさんあるということになります。ぜひとも毎日の生活で、試してみたいところです。そう考えると、お寺の小僧さんの廊下拭きなども、精神修行に役立つものだったのでは? と思えてきます。
日本人の精神の強さの鍵?
じつは、日本の学校の一番良いところは、子どもたちに校舎の掃除をさせることなのではないかと、常々思っていました。というのも、私の知るヨーロッパの国はどこも、校舎の清掃は業者が行うものだからです。そのため、子どもたちは、家庭で教わらない限り、汚したものをきれいにする経験を持たないまま大人になります。言い換えれば、彼らには、私たちが学校の掃除で経験した雑巾がけや、校庭の草ぬきのような、無心になれる作業の経験が全くないに等しいのです。「休暇も少なく、ストレスも多い社会に生きていながら、なぜ日本人は笑顔で平静に生きていられるんだ」と聞かれることがしばしばありますが、もしかしたら、それは、子どもの頃の掃除体験とも関係あるのかもしれません。
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