『百年の愚行』というのは、2002年に刊行されて以来ロングセラーになっている書籍で、20世紀の人類の愚行をテーマに、100枚の写真と文化人類学者の故クロード・レヴィ=ストロース氏ら5人の寄稿家によるエッセイなどで構成された写真集です。
「愚行」というのは、戦争や差別、テロ、環境汚染など、私達が犯してきた愚かな行いのこと。
2014年には『続・百年の愚行』という続編が刊行され、「9.11」のテロやイラク戦争、そして「3.11」の福島第一原子力発電所の事故など、21世紀に入って起きた行いに焦点を当て、写真と寄稿、エッセイ、そして"愚行について考える文献リスト"で構成されています。今回の「百年の愚行展」は、その2冊の書籍から選定された写真を展示したもので、その他に映像展示やトークショーなども実施されていました。
展示されている数々の写真は文章を読む前でも余りに衝撃的で、観るに堪えないものも多くあります。中には引きの風景写真など一見何か分からないものもある のですが、内容を知るとゾッとするものばかりで......それはまるで無知な自分を自覚する瞬間でもあり、とても考えさせられました。
私は続編の『続・百年の愚行』を先に知り、それから2002年に刊行された写真集を後になってから観ました。
写真というのは瞬間的に視覚として情報が入ってくるので、文章にくらべるとてっとり早いところがありますが、でもそれらの映像は私達にとって知ることへの入り口なのだと思います。そういう意味で最初に刊行された写真集も貴重なのですが、続編のほうは、写真や文章の他に「愚行について考える文献リスト」も載っていて、QRコードを使えばオンラインのブックストアに簡単にアクセス出来るようになっていたりなど、人類が犯した愚行を私達自身が自覚してそしてどうやったら愚行を少しでも減らしていけるか、という現在進行形の問題を手助けしてくれる、とても素晴らしい本です。
「百年の愚行」のウェブサイトでも、書籍に収録されている寄稿エッセイの原文や読者からのメッセージに加えて、「愚行」に関する言葉と本、海外の新聞、雑誌、ウェブマガジンなどに発表された記事の梗概や翻訳を掲載して、随時アップデートされています。本離れ、活字離れが叫ばれる時代にリアルとバーチャル、書籍とネットを接続するひとつの試みだと、本の最後に書かれていました。
私にとって「人類の愚行を知る」こと以外のことも考えさせてくせる大切な本です。展示会は9月27日まで開催されていますので、気になった方はぜひとも観に行ってみて下さい!
[百年の愚行展]