そんなうまくいかない理想と現実について考えていたときに出会ったのが、よしもとばなな原作の映画『海のふた』です。かつては観光地として栄えていた西伊豆の町を舞台に、かき氷店を開くために故郷に戻った主人公と、大切な人を亡くし、心とからだに傷を抱えた「はじめちゃん」の心の交流と、ひと夏の成長を描いた物語となっています。
主人公のつくるかき氷は、「糖蜜」と「みかん水」のふたつのみ。「私は私がいいと思うものしか出したくないの」と語り、手間暇をかけて丁寧に作り上げるそのかき氷は、本当においしそう!でも物語が進むにつれ、定番の「イチゴ氷」を作るようになる主人公。その姿に、彼女の変化や成長が表れているのかなと感じます。
好きなことに向き合う「時間づくり」また、舞台となっている西伊豆ののんびりとした風景やスローなライフスタイルも、参考にしたいポイント。この映画の主人公のように、かき氷のシロップ作りを時間をかけて丁寧に行うというようなことも、時間に追われた生活をしていると叶いません。好きなことに割く時間を作ることも、理想の暮らしをするためには必要なんだなと実感しました。
自分の「好き」を追求した生き方は、一見楽しそうに見えるけれど大変なことだって多いものです。まずは、「好きなことにこだわっていたい」という思いを忘れずにいることが大切なのかもしれません。
『海のふた』全国公開中
(c)2015 よしもとばなな/『海のふた』製作委員会
(イトウウミ)