なかでもおすすめは、ジュリー・デルピー監督の『スカイラブ』。ジュリー・デルピーといえば、『ビフォア~』シリーズなど女優としてもチャーミングな実力派ですが、この作品では彼女の監督としてのセンスが光ります。
テーマは、「祖母の誕生日を祝うために親戚たちが集まった週末」。殺人ドラマでもなければ、劇的な展開は想像できない内容ですが、実際、大きな盛り上がりもないまま、どこまでもたわいのないおしゃべりが続きます。料理や服やテレビ番組などのどうでもいい話のなかに、互いをけん制しあうような会話が急に始まったり、過去を蒸し返して険悪なムードになったり。隙あらば自己主張! なあたりがいかにも「親戚の集い」なのです。
なかでも、政治の話とセックスの話があけすけに語られるあたりはさすがフランス! と思いましたが、それにしても、脈絡のなさ、急に空気が変わる展開がいかにも「親戚の集い」でとてもリアル。どうでもいいはずの話題にぐいぐい引き込まれていき、自分も参加している気分になってきます。
「親戚の子どもたち」の世界も興味しんしんストーリーの主人公は、あるイケてない娘。彼女の目から描かれているのもまた、作品の面白さのひとつ。子どもたちにとっても「親戚の集い」というのは、親が無防備になるのでいつもより自由になれるいっぽうで、「親戚の子どもたち」という「友だち」とは違う子どもの世界にいきなり放り出される、不思議な体験。
価値観の違いにうんざりする感じと、開放的になって、行動が大胆になるようなドキドキ感が混ざる気持ちを、主人公の少女に重ねるのもまた、懐かしいような気持になれるのです。
「いいエピソード」などをあえて盛り込まず、平板に思えそうな構成ですが、まったく飽きずにむしろ胸に残るのは、実は監督によって計算しつくされた結果なのかなと思います。
上映は3日間ですが、毎日トークショーも予定。上映場所の「エスパス・イマージュ」もフランスの雰囲気たっぷりなのがいいですね。
上映期間:7月17日(金)~7月19日(日)
会場:アンスティチュ・フランセ東京「エスパス・イマージュ」(飯田橋)
料金:一律800円
上映作品:いまもっとも注目されるフランスの女性監督たちによる3作品を紹介
『グッバイ・ファーストラブ』2011年 監督・脚本:ミア・ハンセン=ラブ
『スカイラブ』2011年 監督・脚本:ジュリー・デルピー
『ベルヴィル・トーキョー』2011年 監督・脚本:エリーズ・ジラール
(c)Paolo Woods