鉄道の最寄り駅は、日本の感覚で捉えてはいけません。しかも、前回ご紹介したホテル・モフレンの最寄り駅、マルクドルフから、次なるホテル・ローズの最寄り駅、リートリンゲンまで電車があると思っていたら、その日は途中の駅止まりで、そこからバスに乗らねばならないそう。ようやくやってきたバスは、学童たちで満員、私たちもモミクチャ状態(写真はカメラマンの山下さん)。まあ、こんな珍道中もなかなかない体験デスネ。
このルートは、シュヴェービッシュ・アルプ街道と呼ばれ、ジュラ紀の化石が発掘されることで知られる、いわば地質オタクの聖地だそうです。
まずはホテルの近くの鍾乳洞へリートリンゲンまで迎えに来てくれたホテル・ローズのオーナー、 インゲ・トレスさんが、まず連れて行ってくれたのも、シュヴェービッシュ・アルプにある鍾乳洞「フリードリヒの洞窟」(ちなみに隣の男性は、洞窟のすぐ脇で、食堂を経営する息子のダニエル)。
この鍾乳洞は、120〜150万年前にできたもので、1803年、このあたりを治めていたヴュルテンベルクの王族フリードリヒが訪れたことにちなみ、この名がつきました。ドイツで唯一ボートが入れる洞窟で、955メートルのうちの70メートルの地点までガイドさんが案内してくれます。中の温度は8度で、薄着の我々はたちまち風邪を引いてしまいましたが。
面白かったのは、このあたりの人たちが、昔、子どもたちが最も楽しみにするクリスマスケーキを、ここで保冷していたというお話。温度はもちろん、つまみ食いを防止していたのでは??
スターシェフの料理宿としても人気洞窟から、山道を北上したハイージェンの村にあるホテル・ローズは、ホテル・モフレン同様、料理宿として知られています。
オープンは約40年前、その後1950年から、デメーターのメンバーとなり、スローフード運動にも深く関わっています。10年ほど前にインゲの夫が他界し、現在は息子のサイモンが料理の指揮を執っています。サイモンは多数のレシピ本を出版し、テレビなどにもよく出演するドイツのスターシェフ。ホテル・ローズでも定期的に料理教室を行っています。
料理教室は、むしろ試食が目当てという人も多いそう。
野菜はほぼ自家農園のものを使用。ドイツといっても、フランスのアルザス地方と同じぐらいの緯度でとても温かく、野菜の成熟には最適な気候なのです。
もちろんパンも手作りです。オーガニックの小麦、スペルト小麦、ライ麦を仕入れ、こちらの昔ながらの粉挽き機で粉にして生地を作るのです。インゲもサイモンも、いったい、いつ寝ているのやら?
ハーブが爽やか。軽やかな料理さて、お待ちかねのディナーです。サイモンは、伝統的なドイツの料理に、旅からインスパイアされたエッセンスを盛り込むのが得意です。最近ではアメリカやインドなどに旅し、とくに「インドのマサラ使いには影響を受けた」と話しています。
前菜、メイン、デザートのコース(40ユーロ)のコースを注文しました。前菜には、ターキーをズッキーニで巻いて、スペルト小麦のリゾットに載せたもの。ハーブのソースが爽やかです。ドイツでこんな軽やかなお料理に出会ったのは、初めてです。
連日、お肉が続き、胃が疲れていた私は、メインにベジタリアンメニューをチョイス。レンズ豆のキッシュの滋味深いこと。ゼッポリーニというピッツァの生地を真棒状に丸めて揚げたもの、さらに山羊のチーズのダンプリング(おだんご)まで載って満足感たっぷり。
付け合わせには、先ほど案内してくれた農園で摂れた旬の野菜たっぷりのサラダ。ライ麦がみっしり詰まったパンも絶品です。第一回目にご紹介したブルグンダーホーフ同様、シュペートブルグンダー(ピノ・ノワール)の銘醸地で、おいしいワインとともにいただきました。
次回はぜひ、サイモンのお料理教室に参加したいです!
[Biohotel-Restaurant Rose (Familie Tress)]
Aichelauer Strasse 6
72534 Hayingen-Ehestetten, Deutschland
+49 (0)7383 949 80
文/中濱潤子、写真/山下郁夫
協力/ビオホテル協会