『ちいさなうさこちゃん』(第2版、1963年)原画
子どもから大人まで、世界中で愛されている「ミッフィー」(うさこちゃん)の絵本。シンプルな線と色で描かれた、このキャラクターの秘密に迫る「誕生60周年記念 ミッフィー展」が、4月15日(水)から松屋銀座で始まります。
世界初公開「ファースト・ミッフィー」に会える『ちいさなうさこちゃん』(第1版、1955年原画)
オランダのグラフィックデザイナーで、絵本作家のディック・ブルーナさん。彼女がミッフィーを初めて描いたのは1955年のこと。本展ではミッフィーとブルーナさんの60年を、貴重な直筆の版画やスケッチでひも解いていきます。
絵本『ちいさなうさこちゃん』(第1版、1955年)
見逃せないのは、ブルーナさんが息子のために初めて描いたミッフィーの原画です。なんと世界初公開という「ファースト・ミッフィー」は、現在のミッフィーとはすこし違う、ずんぐりとした素朴な姿。1962年に第2版として出版されたときの洗練されたスタイルとくらべると、その変化に驚くはず。
ささやかな日々を慈しんだ作家の素顔「大切なものがそばにあって、あたり前に毎日がすぎていくささやかで温かな幸せ」。
本展ではこのテーマに沿って、ミッフィーの絵本から7タイトルを選び、約300点の原画やスケッチを展示しています。なかにはブルーナさんの若いころの油彩画や、妻イレーネさんのために描いたメモもあるのですが、どれも作者の温かい人柄を感じさせるものばかり。
ブルーナさんが奥さんに贈った「朝食メモ」
もともとは、アーティストを志していたブルーナさん。父が経営する出版社を継いでほしいと望まれていましたが、グラフィックデザイナーとしてなら、という条件つきで入社し、本の装丁などに才能を発揮していきます。
『りんごぼうや』(第1版、1953年)原画
やがて、絵本作家としても活動を開始。初期の作品を見ていると、フランスの画家アンリ・マティスや、原色を用いるオランダの抽象美術運動「デ・ステイル」の影響を受けたことがよくわかります。ミッフィー以前の作品を知ることで、ブルーナさん自身が大切にしているものや人柄に触れることができるのも、本展のみどころのひとつです。
まるで心臓の鼓動、震える線の秘密会場でぜひ注目してほしいのが、ブルーナさんの「線」です。子どものころは気がつきませんでしたが、実は
1.トレーシングペーパーに下書きをする
2.トレーシングペーパーを紙の上に置き、なぞって跡をつける
3.その跡を、点でつなぐようにして筆で描き、線にする
という、とても手のかかる手法で描かれているのです。ブルーナさん自身が「心臓の鼓動のよう」と語る、ちいさく震えるようなライン。無駄のないデザインのキャラクターが、生き生きと親しみ深く感じられるのは、この線のおかげのような気がします。シンプルなのに温かい、ミッフィーの世界観の重要な構成要素のひとつです。
シンプルであることが、なにより大切「気仙沼で編んでもらったミッフィーちゃん」気仙沼ニッティング&ほぼ日刊イトイ新聞
会場には、さらなるお楽しみが。180cmの真っ白なミッフィー60体に、オランダと日本のアーティストが装飾を施した「ミッフィー・アートパレード」が企画されています。「気仙沼ニッティング」のニットを着た巨大ミッフィーなんて、想像するだけで楽しくなりますね。
「デザインはシンプルであることが一番大事。完璧であるだけでなく、できるだけシンプルを心がける。そうすれば見る人がいっぱい想像できるのです。これがわたしの哲学」
そう語るブルーナさんの作品の世界は、今も多くのアーティストに影響を与えています。子どもがひと目で好きになるのは、本当に優れた芸術作品だからなのかも。かわいいミッフィーの底知れないパワーに、たくさんのヒントをもらえそうな展覧会です。
会場:松屋銀座8階イベントスクエア
会期:2015 年4月15 日(水)~5月10 日(日)会期中無休
入場料金:一般1,000円、高大生700円、中学生500円、小学生300 円
時間:10:00~20:00(入場は閉場の30分前まで。最終日は17時閉場)
Illustrations Dick Bruna © copyright Mercis bv,1953-2015 www.miffy.com