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人にも自然にも素直になる。やりたいことを実現させる方法

2015/03/19 19:30 投稿

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登山家の栗城史多(くりき・のぶかず)さん。酸素ボンベをつけず、ベースキャンプからひとりで8000メートル峰の山頂を目指す「単独・無酸素」という方法で、エベレストなど過酷な山に挑戦する姿をインターネットでライブ配信......。そんな独特の登山スタイルを続けている栗城さんの登山のテーマは「冒険の共有」。その思いについてうかがいました。

リアルタイム配信にこだわる理由

登山家というと、どれだけ高い山に登るか、をテーマにしているイメージがありますが、栗城さんが目指すものは、登頂に成功することだけではありません。

 誰もが、自分のなかに「やりたいこと」つまり「目指す山」を持っていると思うんです。その気持ちを応援したい、自分のなかの山に向かう人を増やしたい、というのが僕が山を登る大きな理由です。僕の冒険を共有して何か感じてもらいたい。それでリアルタイムの動画配信をはじめました。

ネットでの中継を始めたのは、2009年のこと。ヒマラヤなどの高い山を目指すたびにそのようすを伝えてきた栗城さん。途中であきらめて下山する場合も、隠さずに配信してきました。

何かに挑戦するときは、失敗のリスクもある。その失敗を隠すのではなく、むしろ見せていきたいと思っています。天候が悪くなって、途中であきらめて下山することもありますが、それを含めて共有したい。結果を見せるだけではだめで、すべてをリアルタイムにさらけ出すことに価値があると思うんです。

実際に栗城さんの動画を観ると、登山靴の音から息づかいまで聞こえる臨場感に、ぐいぐいと引き込まれます。こんなふうに、目の前のことに挑戦している人がいる、という事実。それがリアルタイムの配信ということであればなおさら、観る人たちのなかに力強いメッセージを残すはずです。

栗城さんの活動をきっかけに行動を起こす人がいることが何よりの励み。動画のコメント欄に書かれた「勇気をもらった。自分はこんなことをやろうと思う」といった熱い想いから「伝わった」という手ごたえを感じることが、栗城さんにとっては登頂成功以上に価値あることなのだそう。

苦しい状況をポジティブにとらえる力

2012年、登山中の事故で重度の凍傷になり、栗城さんは9本の指の第二関節から先を切断するという大きな試練を経験しました。

苦しみのなか、栗城さんを力づけたのは父親の言葉だったそう。

指を手術して退院する直前、父に電話で「おめでとう」と言われたんです。いままで何度も登頂成功してきましたが、ここまで強く言われたことはなかった。

生きて戻れたこと、またチャレンジできることに対して。また「苦しむ」という経験が、人の痛みを知り、人として成長するうえでは大切なことだから、「おめでとう」なんだと。

指の切断はショックでしたが、凍傷にならなかったら死んでいたでしょう、と栗城さん。事故をきっかけに、これまでの過密だったスケジュールを見直し、自分とじっくり向き合う時間を持てるようになった。マイナスな経験から学ぶことは多いということを実感したのだそう。

そして、2年間のリハビリののち、昨年、事故後はじめてのヒマラヤで、8047メートルのブロードピーク登頂に成功した栗城さん。苦しい登頂だったはずですが、感想をうかがうと、意外にも「楽しかった」という答え。

山の先輩に、「楽しくなければ下山しろ。楽しくなくなると、気持ちが追い詰められていい結果が出ないものだ」と言われたことを思い出して、今回の登山はとにかく楽しむことだけを考えて登ったのですが、実際に楽しかったんです。

これは以前には感じられなかった感覚で、ケガをしたことで、成長の度合いがグンと上がったのかもしれません。「大きな事故のあとにいい山登りができるようになる」。これも先輩に言われたことですが、たしかにいまが自分のベストだと思えます。

復帰を果たし、今年はいよいよ、エベレスト登頂へ向けてチャレンジ。現在、着々と準備が進んでいるそうです。

いちばん大切なのは「素直さ」

栗城さんが山に向き合うとき、いちばん大切にしているのは「素直さ」だそう。

天候などはもちろん調べますが、あれこれ理屈で考えるよりは、自分の気持ちに素直になることが大切。いまは行かない方がいい、と感じたら行かないし、多少天候に不安があってもいいと思ったら行く。

直感には従いますが、『いつまでに帰らなければいけないから行く』『自分はきついけど、みんなが行くから行く』といった理由では行かない。山ではそれが生死を分けることになりますから。

そのことは、人との付き合いにも共通する感覚なのだそう。

講演活動や資金集めの活動などで、企業のトップのかたにお会いする機会も多いのですが、立派な企画書を持って行っても、作った話は見透かされます。結局は本音で話せるか、人として信頼できるかが重要かなと思っています。

自分が本音で話せば相手も本音で話をしてくれる。そうやって、応援してくださるかたに巡り会えたり、ほかの企業を紹介していただいたりと、活動を広げることにつながりました。

「素直であること」は、シンプルなようでいてとても難しいこと。知識や経験が増えた大人になればなおさらです。判断を間違えれば死に直結する登山の世界で「素直さ」を鍛えている栗城さんだからこそ、純粋な素直さを持ち続けていられるのかもしれません。

著書も多い栗城さんですが、最新刊『弱者の勇気』では、閉塞感のある社会のなかでも勇気をもって自分のやりたいことを実現させるための考え方を紹介しています。参考になる言葉が多いのですが、いいなと思ったのが「ラストチャンス」とは言わない、という考えかた。

 「これが最後」と思うと、気持ちが追い込まれて正しい判断ができなくなる。表情も硬くなりますよね? 「ラストチャンス」と考えるよりは、生きている限りは挑戦できる、とチャレンジを楽しんだほうがいい。やりたいことに1歩踏み出す勇気をいつまでも持ち続けてほしいんです。

大人になると、仕事や恋愛でもつい「これが最後のチャンスかもしれない」などと考えがち。そのことが自分に制限をつけて、逆にチャンスを遠ざけてしまっているのかもしれません。常識的な制限をすべて外して、生きている限りは大丈夫、と考えれば、見える景色が変わってきそうです。

「どんなおじいさんになりたいですか?」という質問に「『何かで成功した人』になるのではなく、『常に何かをしている人』でありたい」と答えてくれた栗城さん。生涯にわたって挑戦し続ける姿が、これからもずっと私たちに勇気を与えてくれそうです。

◎今秋のエベレスト再挑戦に向けて、栗城さんを応援するクラウドファンディングがスタートしました>>

[栗城史多オフィシャルサイト]

mount-everest via Shutterstock

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