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新しい時間のはじまりに。季節を「ちゃんと」迎える

2015/03/10 13:30 投稿

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寒さのなかにも、あたたかさがにじんでくる早春。社会的には年度替わりが近づいて、会社でも家庭内でも、何かとあわただしく過ごしてしまいがちです。でも時節の変わり目は、心を落ちつけてちゃんと迎えたいもの――。とはいえ、「ちゃんと」って、どうすればいいのでしょうか?

そこで思いついたのは、和の伝統です。

ひな祭りや五月の節句など、春先の日本には様々な「しきたり」があります。なんとなく知っているのは、人形やお菓子で祝うこと。でも長く伝えられてきたことには、きっとこめられているこころがあるはずです。

和歌にこめられた「ちゃんと」のこころ

旧家に学ぶ知恵としきたり』(冷泉貴実子、杉本秀太郎、田中昭三、千宗守 著/小学館 刊)という本によると、藤原定家の孫を祖に持ち、800年の歴史を誇る和歌の家、冷泉家では、いまでも旧暦に添って季節ごとの行事をとりおこなっているそうです。

廃れることなく続いてきた季節を言祝ぐ和歌の世界。そこにある「ちゃんと」のこころとはどんなものでしょうか。

見渡せば柳桜をこきまぜて 

都ぞ春の錦なりける 

(古今和歌集 五六『旧家に学ぶ知恵としきたり』 P13より引用)

春を優しいパステルカラーのイメージでとらえていた私でしたが、この歌の「こきまぜて」と「錦」という言葉が、「力強く大地から猛然とわきたつエネルギーこそ春」と捉えていいのだと教えてくれました。

四季折々によまれた和歌や季節を詠うという行為は、自分の感覚を「ちゃんと」使いなさい、外からの情報でイメージづけられた春ではなく「自分自身の春」を言葉にしなさい、と教えてくれるようです。

お雛様で、豊かさを分かち合う

また、もう一つの「ちゃんと」を教えてくれるのは、京都の商家、杉本家です。江戸時代から続く呉服商であった杉本家では、雛飾りを一般に公開しているそうです(「平成27年度 春の特別一般公開 旧暦で祝う『上巳の節句 雛飾り』展 」2015年3月31日〜4月5日)。

桃の節句と言えば、家族で雛を飾って女の子の成長を祝う......といった認識しかありませんでした。でもこの杉本家では、雛飾りを多くの人に見てもらい、満たされた気分になって帰ってもらうことを大切にしているそうです。季節の行事をただ執り行うだけではなく、その行事を通して「みんなが豊かになれますように」という祈りを込めているのです。

季節ごとに和歌をよむ、雛を飾る――そんなしきたりが今も守り伝えられているのは、そこに素敵な祈りや思いがこめられているからなのでしょう。

時節のしきたりを愛でること、それは、季節の移り変わりや暮らしの喜びを「ちゃんと」感じ取ることでもあるのかもしれません。

旧家に学ぶ知恵としきたり奈良屋記念 杉本家保存会

sakura via Shutterstock

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