焼きあがったばかりのパンの、香ばしい香りやフカフカした食感。私たち日本人は「焼きたて」という言葉そのものにすでにドキドキ、ワクワクしてしまいます。けれど、ドイツに住んでおどろいたのは、「パンは焼きたてが最高!」という概念がまったくないこと。なんと、焼きたてを出すパン屋さんは皆無です。その理由をドイツ人に聞くと「焼きたてパンは消化に悪く、カラダに毒だ」というのです。
言い出しっぺはだれ?「焼きたてのパンはカラダに悪い」という説が巷に広まる原因をつくったのが、ドイツ人のシルベスター・グラハムさんだと考えられています。彼は全粒粉を使った製品(グラハムパン、グラハム粉、グラハムクラッカー)の発明者。ベジタリア二ズム(菜食主義)や禁酒運動提唱者でもあり、健康には薄力粉でなくて全粒粉が良いとの信念をもった人です。
焼きたてのパンがカラダに悪い......、危険なほどカラダに毒だとはよく言われることです。健康改革者であるシルベスター・グラハムは、最低でも焼いてから12時間以上経ったパンを食べたほうが良いと主張しました。
(中略)
熱い食べ物はすべて、虫歯を引き起こし、胃に大きな負担をかけると彼は信じていたからです。
(「David Walbert」より引用)
これが今日、極端に冷たいものや熱いものをさけ、室温の食べ物・飲み物が良いと言われる所以のようです。
本当? ウソ?「Focus」の記事によると、「焼きたてのパンがカラダに毒」である理由として、それが腹痛を起こす可能性があることを指摘しています。
焼きあがり直後のパンのイースト菌は活動していませんが、パンに含まれるチラミンという物質が、温かい生地のなかで炭酸ガスを発生。そうして、できたてのパンを食べた人が腹痛を起こすこともあるそうです。
さらに、焼きたてのパンの香りにより偏頭痛を起こす人もいるのだとか。焼きたての香ばしい香りによる頭痛のメカニズムは解明されていませんが、なにかしらの根拠があるのでは、とこの記事は結論づけています。
自分の好きなものを、好きなように食べたいというのが本音です。けれど、長いことパンを主食としてきたドイツ人に「焼きたてのパンは消化に悪い」と言われてしまうと、やっぱりそうなのかな、とも思ってしまうのです。
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