東ヨーロッパの国、ウクライナ。国土のほとんどが平原や草原で占められた、自然豊かな土地です。
そんなウクライナ北部の町に生まれた、ヴャチェスラフ・ミシチェンコは、地元新聞社のカメラマンであった父の手ほどきを受け、子どもの頃からカメラを手にします。そして時を経て、彼自身も写真家への道を進むことに、そして美しい地元の自然を撮り続けるようになります。
急がない、抗わない。カタツムリの哲学そんな彼が魅了されたのが、カタツムリの生き方。
かわいいだけでなく、彼らには独特の哲学があります。(中略)
カタツムリという存在は「急がないこと」「抗わないこと(あらがわない)」の究極の象徴です
「誰よりも、ゆっくり進もう カタツムリの物語」P79より引用
また彼はこうも言っています。
カタツムリは、のろいのではありません。ただ「生」を、じゅうぶんに感謝しつつ味わっているんです
「誰よりも、ゆっくり進もう カタツムリの物語」P79より引用
カタツムリは夜行性ですし、都会に住むのであればさらに出会う機会は少ないでしょう。彼が故郷で出会ったカタツムリの写真を眺めていると、その幻想的な姿に驚かされることと思います。そこには、カタツムリへの溢れんばかりの愛情をひたひたと感じます。
心に沁みこむメッセージさらにこの本にアクセントを添えるのが、作家でコピーライターのひすいこたろうさんからのメッセージ。最初にミシチェンコの写真を見たときに「世界は美しいよ。だからボクは誰よりもゆっくり歩くんだ」というカタツムリの声が聞こえたのだといいます。
今日という1日をあまりにも忙しなく過ごし、やりくりすることだけに意識が集中してしまう私たち。長い触覚を天に向かってながく延ばし、ゆったり悠然と動くさまは、忘れかけていた本当の時間の流れを取りもどしてくれそうです。