冬は雪が降る日が多く寒さも厳しいけれど、標高が高いため夏は涼しく、秩父宮雍仁親王(ちちぶのみややすひとしんのう)、西園寺公望、岸信介などの皇族や政官界の要人、黒澤明や白洲正子ら文化人、さらには一帯がアメリカ村と呼ばれるほど外国人も別荘を築き、昭和の時代は東京から近い閑静な別荘地としても知られていました。
東山旧岸邸の書斎兼応接間。壁には岸信介のポートレイトが。
東山旧岸邸の顔となる居間。庭に向かって配置された岸信介愛用の椅子に座ることができます。
東京から東名高速を使えば、車で2時間ほどで到着できるのです。
私の母は御殿場生まれで、祖父母が長く暮らしていたため、年に幾度も訪れていた第二の故郷。成人してからしばらくは遠ざかっていたのですが、数年前からまたたびたび、御殿場へ足を運ぶようになりました。
東山旧岸邸の玄関ホールの椅子も、吉田五十八の手によるもの。
それは「東山旧岸邸」が公開されるようになったため。
東山旧岸邸は、第56・57代内閣総理大臣を務めた岸信介が、昭和45年より17年間を過ごした邸宅。設計は近代数寄屋建築の祖といわれる建築家・吉田五十八。来客の多い政治家の家の、接客用の和室や、もてなしと家族の団欒どちらにも使用できる居間や食堂、小川が流れる庭などを、見学することができるのです。
東山旧岸邸の広く使い勝手のいい厨房。
私は普段から「かつて誰かが暮らしていた歴史的価値のある家」を見学するのが趣味のひとつ。
その部屋に置かれていた家具や、食卓の風景、家族の語らいを想像しながら、部屋の隅々まで眺めます。
水平垂直の線を際立たせ抽象的な印象に仕上げた東山旧岸邸も、吉田五十八設計の椅子や、床の板張り、階段や居間の照明、窓辺の工夫、台所の電気のスイッチと、細部まで見どころあまた。東京から建築好きの友人を案内するため、定期的に足を運ぶようになったのです。
東山旧岸邸の庭。小川やビオトープが。
東山旧岸邸と同敷地内には「とらや工房」もあって、見学のあとはおやつを食べたり食事をしたり。たっぷりゆっくり寛いで過ごします。
東山旧岸邸と、とらや工房には、この茅葺きの門をくぐって進みます。
とらや工房で味わえるどら焼き。富士山の焼印が。
とらや工房の設計者は内藤廣氏。
そんな大好きな施設で開催されるイベントで、監修役を担当させていただくことになりました。
2月23日は「富士山の日」ということで、2015年2月20日(金)~3月6日(金)に、東山旧岸邸で「富士山とくらし展」を開催します。
邸宅の中のそれぞれの部屋に、美術家・持塚三樹さん、陶芸家・吉田直嗣さん、型染め作家・kata kataさん、静岡生まれの3方の作品を展示します。
2月22日「東山旧岸邸 富士山とくらし展」関連イベント「東山あるき」で立ち寄る、YMCA東山荘。礼拝堂・黙想館からは、神々しい富士山を臨めます。
2月21日には、館内ツアーと富士山旅のトーク。2月22日には、東山旧岸邸集合→秩父宮記念公園→YMCA東山荘(昼食)→松岡別荘陶磁器館をめぐる東山ウォーキングのイベントもおこないます。
ちなみに、秩父宮記念公園も、松岡別荘陶磁器館も、皇族や政治家の別邸でした。
YMCA東山荘は、大正4年開設の宿泊・研修施設。複数のモダンな建物が敷地内に点在。ロビーはクラシックホテルのような雰囲気。
秩父宮記念公園内にある、秩父宮雍仁親王旧別邸。物語の世界のような洋間。
秩父宮雍仁親王旧別邸の展示室には、殿下が敷地内の窯で焼いた陶器作品も飾られています。
この機会に富士山の麓の長閑な土地・御殿場へといらしてみてください。御殿場は『電車でめぐる富士山の旅』で周辺案内をしています。
2月23日には、東山旧岸邸も紹介している『ポケットに静岡百景』も発売されます。
2月23日は「富士山の日」です。東山旧岸邸では「富士山とくらし」をテーマに展示を行います。岸邸の中に、くらしとともにある富士山を見つけにきてください。
開催日程:2015年2月20日(金)~3月6日(金)
※2月24日(火)、3月3日(火)は休館
時間:10:00~17:00(ご入館は16:30まで)
会場:東山旧岸邸
入館料:一般300円 小・中学生150円(20名以上の団体の場合、50円引き)
コーディネーター:甲斐みのり
参加作家:持塚三樹、吉田直嗣、kata kata
協力:MISAKO&ROSEN
会期中にはコーディネーター甲斐みのりによる2つの関連イベントを実施いたします。詳しくはこちらをご覧ください。