そしてカカオの歴史と切っても切り離せないのが、色恋との濃い関係性。バレンタインにチョコを贈るというしきたりが生まれる何世紀もまえのことです。それまでは単に苦く、健康目的で飲まれていたカカオペースト。砂糖をいれ甘くしたチョコレートドリンクはヨーロッパ中の貴族たちに流行しました。人気の恋愛小説では、裏切られた恋人を毒入りチョコレートで復讐するという件が欠かせなかったそう。
マリー・アントワネットはオーストリアからフランスに嫁いでくる際に、専任のチョコレート職人を連れてきたといいます。彼女のお気に入りの朝食は、職人が手を凝らしたチョコレートドリンクと甘いブリオシュという組み合わせで、お風呂のなかでガウンのまま食べることが多かったようです。
貴族たちの優雅な「朝チョコ」習慣
マリー・アントワネットもそうだったように、貴族たちには「朝チョコ」の習慣がありました。お風呂にゆったり入りながら、もしくはベッドのなかで寝間着のままホットチョコレートを飲むことが、上流階級の間で優雅なこととされていました。
そのようすは当時の絵画からうかがい知ることができます。
同じ頃の絵で、湯上りのからだにガウンをまとった美女、召使がチョコレートとラブレターを運んでくるものがあります。これもまた、いかにも18世紀を感じさせます。この絵には「ドイツの美女にとって、朝風呂は必ずラブレターと一杯のチョコレートで終わる、と決まっていた」と説明があります。
(「COCOA REPORT」より引用)
また、こんな記述も。
媚薬にもつかわれたチョコレート風呂の中でボーイにひげを剃らせながら、チョコレートを飲んでいる男の絵(略)には「フランスのプレイボーイたちにとって、湯舟に浮かぶチョコレートは健康な朝の儀式である」とあります。
(「COCOA REPORT」より引用)
そんな貴族たちは、カカオを媚薬としても使っていたという記録も残っています。確かに、チョコレートを口にすると、ほんのすこし高揚した気分になったことがあるかもしれません。その理由はチョコレートに含まれる、フェニルエチルアミンという物質。この物質、またの名をラブ・ケミカルといい、人間が恋に落ちたときに脳から分泌される成分と同じものなんです。
効能など知らない貴族たちも、チョコに秘められた不思議なパワーを感じていたのかもしれません。優雅でエネルギッシュな貴族たちの「朝チョコ」習慣、バレンタインの日に試してみるのもいいかもしれません。