「小説は、それを読んだひとが『これは私の物語だ』と思わせることができたら成功作だ」。そんなことを聞いたことがあります。
ペネロープ・バジュー著のフランスの漫画『ジョゼフィーヌ!』は、その意味では相当の成功作だと言っていいのではないでしょうか。
アラサー女性の日常に、共感しきり主人公のジョゼフィーヌは、姪から、
「ねえねえ どうしてジョーおばちゃんはひとりなの? 子供がいないの?」
とたずねられて、
「おなかにギョウ虫を飼ってるからよ。」
(『ジョゼフィーヌ!』P18より引用 )
と答えるシニカルなユーモア感覚の持ち主。
彼女は胸が小さくて、お金もたいしてなくて、男運もさしてよくないアラサー女性。アパートが水漏れした日も、失恋した日も、会社には行かなければならない働くひとり暮らし。
せっかく知り合った男性が既婚者でがっかりしたり、元彼の結婚式に出席しなくてはならなくて荒れたり、せっかくいい雰囲気になったのに下着に穴があることを思い出して慌てたり、トイレで大泣きすることだってある。
でも「わかってくれる」友達がいて、ブラッド・ピットという猫がいて、気づいたら立ち直って次の日はまた会社に行く。
そう、ジョゼフィーヌの物語は、まさに「私」の物語。
ほかでもない「私」の物語
「私」の物語だから、ファンタジー映画のように白馬の王子様は出てこないし、日常生活は「たいしたことない」「さえない」ことが多い。でもそんなありふれた日々が、かけがえのないおもしろさと「小さな奇跡」に満ちていることを、ジョゼフィーヌは教えてくれます。
なによりこの漫画が成功しているゆえんは、共感できるあたりまえの女性を描き、そのあたりまえの生き方で愛や友情を獲得できるんだと教えてくれること。
ちょっと冴えない人生のなかにあっても、奇跡にめぐり合えるって信じていいんだ、といちばん最後のページを読んで思いました。
[ジョゼフィーヌ!]
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