軽い落ち込みならそれで解決できることも、深く落ち込んでいるときは、前向きな言葉を投げかけられることさえ受け入れられないこともあります。
あえて絶望の言葉を読んでみるギリシャのアリストテレスは、「そのときの気分と同じ音楽を聴くことが心を癒す」といいました。その言葉にならって、落ち込んでいるときに、絶望と呼べるほどの言葉を読んでみるのはどうでしょうか。
将来にむかって歩くことは、ぼくにはできません。
将来にむかってつまづくこと、これはできます。
いちばんうまくできるのは、倒れたままでいることです。
(『絶望名人カフカの人生論』P34より引用)
これは偉大な小説家、フランツ・カフカの言葉です。クンデラ、安部公房、サルトル、ナボコフ......カフカは、世界中の小説家たちから尊敬される作家です。それでも彼は、こう言うのです。
書く試み、それもたいてい失敗した試みから成り立っていました。
書かないときは、
ぼくは床に横たわり、
箒で掃きだされて当然といった状態になるのでした。
(『絶望名人カフカの人生論』P142より引用)
ここまでネガティブになられると、たとえ自分が落ち込んでいてもカフカの肩を叩いて励ましたくなります。
笑いがこみ上げてくるカフカの世界ぼくは人生に必要な能力を、
なにひとつ備えておらず、
ただ人間的な弱みしか持っていない。
(『絶望名人カフカの人生論』P78より引用)
「そんなこと言わないで!」とぎゅっとカフカをハグしたくなる、そんなセリフです。
カフカのネガティブなセリフを読み続けると、そのあまりの絶望っぷりに笑うしかなくなって、気づいたら自分の落ち込んだ気持ちを横に置いて彼を励ましたい気持ちでいっぱいになっていたりします。
カフカの絶望には、そんな読む人の気持ちを復活させる効果があるのかもしれません。
forest road via Shutterstock