小さないじわるは、匿名性があり、日常的には他者も自分も著しく害するものだと思うのです。
(『小さないじわるを消すだけで』p20より引用)
ダライ・ラマ14世とよしもとさんとの対談を集めた『小さないじわるを消すだけで』の中で、おふたりはこのいじわるの害について、いじわるをする相手が悪くて自分が被害者だと、自分と他人を隔てているかぎり、何も解決しないと言います。
ではどうすればいいのか。その答えは、「自分と他者を分けないこと」。
目の前の人を自分の一部だと思うことができれば、その弱さを理解することも、人を攻撃することはすなわち自分に対する攻撃だということもわかり、相手に対する怒りもなくなるはずです。
(『小さないじわるを消すだけで』p34より引用)
他者と自分はひとつの「人類」という生命体の一部、と考えてみると、おたがいが一部分として補いあい、大切にしあう気持をもつことができる。小さないじわるをされたら、その相手のつらさを思いやり、その攻撃的になってしまった相手のこころを慈しむこと。それが生きづらさを減らしていく鍵だそうです。
この本の冒頭には、一行の謎かけが示されています。
小さな棘、ささいな悪意を徹底的にとりのぞくと、何が起きるのだろう。
(『小さないじわるを消すだけで』p8より引用)
この問いかけを読んで、「特別な才能も権力もない自分が、小さないじわるを消したって、いったい何が変わると言うのだろう。世界で起きている悲劇的な事件が解決できるわけでもないのに......」、そんな気持がよぎるかもしれません。
そんな思いに対して、おふたりは言います。ひとりひとりが小さないじわるをなくしていくことで、人の身体の細胞が古いものから新しいものへと入れ替わって行くように、これまでのありかたから、「いじわるのない世界」へと変わっていけるのだと。
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