古くなってしまった牛乳をどうしていますか。お風呂に入れてミルク風呂にする、あるいは、捨ててしまうという人もいるでしょう。「ブレーメンの音楽隊」で有名な都市、ブレーメンでは、研究チームが牛乳の画期的なリサイクルを行っています。
おどろき! ミルクからつくられた服
それが、古い牛乳から繊維を取りだし服を生産するというもの。研究チームを率いるのは、アンケ・ドマスケさんという女性。31歳という若さでミクロ生物学者でありながら、アパレル会社の代表取締役もつとめています。ミルクで服をつくるきっかけとなったのは、彼女の親戚の繊維アレルギー。袖を通すすべてのものに肌が反応し、腫れとかぶれがとまらないほどだったのだそう。
この頃、いろんな文献に目を通していたドマスケさんは、1930年代にすでにミルクから繊維を取りだす技術があったことに注目します。しかし、この方法は大量の化学物質と電気代がかかるというのが問題でした。
その問題をクリアすれば現代でミルクの服がつくれるのでは、と考えた彼女。2011年にブレーメンにある繊維研究所のサポートを得ることに成功。研究が軌道に乗ったあと、「QーMilk(Qーミルク)」という会社を立ちあげ、いまでは3,000m²という大きな工場と20人の研究員を抱えるまでに成長しました。
彼女のデザインした服「ミルク・モード」はインターネットでも購入が可能になり、2015年から大量生産がはじまる見込みです。
環境にやさしい、ミルク服の魅力
ミルクの繊維ができるまでのプロセスはというと、まず牛乳にふくまれるカゼインを丁寧に採取、粉状にします。これに水、企業秘密の薬品を加えたのち80度の熱を加えながら混ぜることで糸状の「ミルクの糸」ができるのだそう。
このプロジェクトの素晴らしさは、通常ならば廃棄されてしまう古いミルクを「リサイクル」できるところにあります。ちなみに、ミルクの布1キログラムあたりのお値段は25ユーロ。木綿よりは高値ですが、シルクよりは安値です。
手触りは大変やわらかくシルクなみにサラサラで、木綿とおなじくらいの強度をもっています。汚れ落ちもすばらしく、洗濯量1キログラムにつき使う水の量はたったの2リットルですみます。電気代、水道代もかなり節約でき、環境にもやさしいのです。
なんと、口にいれても安心!?多くの人が心配するようなミルク臭はなく、服が腐ることも、ましてやカビが生えることもありません。いちばんのメリットは、この服からでる「ミルク繊維」が食べられること。
認識のない化学製品がまったく使われていないため、敏感肌にやさしく、安心して身につけることができます。
包帯かぶれを起こす患者さんのために「ミルク包帯」、敏感肌につける自然派ミルク化粧品も登場。将来はアトピー用の肌着なども期待したいものです。
[QーMilk]
photo by Thinkstock/Getty Images