ドイツ人とケンカをして学んだことは、「無視する」という行為は相手の存在そのものを否定する、最大の侮辱だということ。
常に自分のこころ・自分の考えを非常に大事にするドイツ人は、誰とでも、どんなに小さなことでも、納得いくまで話しあうのが、誠意ある行動と考えています。そして、小さい時からディスカッションをして育ってきているので、どんな場面でも自分を失わずに「上手に」ケンカをする術を身に着けているようです。
そんなドイツにも、ケンカが不得意な人はいるもの。上手く自分の意見を出せずに苦しい思いをする10代の若者を中心にケンカセミナーを開催する「ケンカ・トレーナー」ラルフ・シュミッド氏によると、正しいケンカとは「構築的な話し合い」を、悪いケンカは「短期間で答えを出そうとするが、感情的になりすぎて、結局答えが出ない無駄な話し合い」のことを意味するそうです。
正しいケンカのポイント「ケンカ・トレーナー」ラルフ・シュミッド氏のサイトを見ると、正しいケンカをするために大事なポイントがいくつかあるようです。
・ケンカ時間の設定
食事時間、朝の出かける前、夜寝る前など、リラックスしたい時間にケンカをしてしまうと、小さなことでも必要以上にエキサイトしてしまう傾向が。したがって、これらの時間帯を避け、ケンカのはじまり時間と終わり時間をあえて設けることで、「売り言葉に買い言葉」を避けることができると氏は言っています。
・ケンカのための散歩
ケンカの場所を変えることも有効。人がいる場所では言葉を選ぶために派手に「やりあう」ことが避けられるため、家の中ではなく、散歩をしながらのケンカにも利点があるということです。
・ケンカの合間に休憩を入れる
正しいケンカの最大の敵は、感情的になりすぎることです。ケンカ中は横やりを入れたりせず、一人一人が話す時間を設けることで、フェアであることが守られます。誰かが話している間、相手はただ聞くのみ。次に話役と聞く役を 交代し、同じことを繰り返すだけ。だんまりを決め込むことはルール違反で、自分の言いたいことはすべて言うことが原則です。そして「休憩タイム」をとって、一時クールダウン。お互いの意見を頭でフィードバックする時間と余裕も生まれ、かつ自分の意見をまとめ、どのようにうまく伝えることができるだろうか考えることができるのが特徴です。
シュミッド氏は「ケンカの仕方は誰にでも学ぶことができる」と言います。上記のことに気をつけつつ、相手の「怒りのスイッチ」や「ツボ」などを見極めることができるようになれば、それらを避けながら実りのある話し合いができるでしょう。勝ち・負けだけを焦点にした言い合いから脱出し、本当の意味での大人の話し合いができるようになると言っています。
とはいえ、そもそもケンカの目的は「自分をわかってほしい」気持ちからであって、答えが出るかどうかは二の次のようにも思われます。合理的なケンカのシステムから学ぶことはありますが、国ごとの人々の性格やメンタリティーによっても、結果には違いが出そう。これが正解、とは言えないところが、ケンカの難しさかもしれません。
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