紙袋に槙田商店の生地で作ったバッグカバーをつけたところ。
雨の日にデパートで買いものをすると、「紙袋に雨よけカバーをおかけしますか?」と聞かれます。帰り道に買ったばかりの服や雑貨や食料品が濡れてしまわないよう、「はい」とお願いしていたのですが、同時に家に到着したら捨てることになるビニール製の雨よけカバーを「もったいないなあ」という気持ちがありました。
スーパーで買いものをするのにマイバッグが浸透してきたように、マイ雨よけバッグカバーがあれば少しでもビニールを無駄にしなくて済むのにと、ずっと思い続けていたのですが、長年の思いがとうとう形になりました。
槙田商店のご好意で、バッグカバーと同じ生地で傘をプレゼントしていただきました。傘は非売品です。
優麗な富士山を仰ぎ豊かな自然に抱かれた山梨県南都留郡西桂町。江戸時代に創業し、明治時代から傘生地の生産をはじめた槙田商店。織物の産地で伝統を守りながら最先端の織機も導入して、傘生地、傘、服地などつくる甲州織の老舗を訪ねる機会を得たのです。
山梨を訪問し、槙田商店を見学。こちらは織工場。紙製の糸巻きに巻かれた色とりどりの糸。
甲州織とは、傘専用の生地として発展した織物のこと。井原西鶴『好色一代男』にも登場するほど、長きに渡り粋で洒落た人の心を魅了してきました。その特徴は、織りあげてから染色するのでなく、糸を染色してから織っているので、縦糸と横糸が独特の風合いを織りなし、エレガントに仕上がります。
織りあがった生地を傘用に三角形にカットするための木型。
こんなふうに木の型を生地にあてて傘生地をカットしていきます。
当たり前のように傘が使い捨てされるようになったいま、見た目よく、使い心地も格別な槙田商店のたおやかな傘が生まれる現場を見学させていただき、美しく上等なものを丁寧に使い続けることこそ、おしゃれの原点だとあらためて感じることができました。そうして、私たちを雨から守ってくれる傘の生地で、大切なバッグや荷物も守れる雨よけカバーが作れたらと相談をして、実現できることに。
傘作りのあまり布で、娘さんのためにリボンのヘアゴムを作ったそう。生地を無駄にしないすてきなアイデア。
傘を閉じるときにまきつけるボタン。ひと工夫すればブレスレットにもなります。
傘や傘生地からまだまだいろいろなものが生み出せそう。
槙田商店に、小降りになった雨の隙間から太陽の光が差し込む景色をイメージした、水色とピンクの縞模様で傘生地を作っていただき、それをバッグ(紙袋)カバーに仕立てました。持ち手がついた平均的なサイズの紙袋やバッグに合わせた大きさで、何度でも繰り返し使えます。これからは雨の日の買いもので「雨よけカバーをおかけしますか?」と聞かれても「結構です」と胸をはって返事ができます。
[雨よけカバーの販売 フェリシモ「チケッティ×甲斐みのり 日本のふるさと工芸マルクト」]
(甲斐みのり)
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