すっかり秋になって、また、厚めのお布団の出番がきました。
昔は財産の一つだった布団昔、布団は支配階級だけのもので、庶民が使うようになったのは江戸時代からなんですよ。それもとても高価だったのです。花魁の身請けには、旦那様が豪華な布団を用意して遊郭の人びとにお披露目したと言いますから、布団は財産だったんですね。
庶民は綿布団を何度も打ち直して代々使ったものでしたが、昭和になっても、それは普通のことでした。今でも還暦のお祝いにと親御さんに布団をプレゼントする人もいます。
「万年床 いろんなものが住んでいる」
ネムリのイロハカルタ ナカニシカオリ
そんな大事だった布団、今ではベットパッドも加わり、素材も増え、誰でもいろいろなものを手に入れられるようになりました。けれど意外に、布団については関心が薄くなっているようです。 ずいぶん前から買ったっきり、慣れすぎてしまってどうでもよくなっている、たかが布団だからお金はかけたくないなどと思っていませんか? しかし、ベッド派にとっても布団派にとっても、寝具の状態は安眠には欠かせないポイントなのです。
「寝床内気候」という言葉があります。これは寝具と体の間の空間の温度や湿度などの環境を言います。
睡眠中の体の発熱や発汗で、その気候は室内とは全然違います。冬、電気毛布を使えば暑くなるし、夏は発汗が多く多湿になります。また睡眠中の体温の変化も関係します。
皆さんは風邪で熱が高い時、頻繁に寝返りして苦しんだ経験はないですか? それは、寝返りで布団内の空気を入れ替え、温度や湿度を調整しようとするからなのです。
安眠のためには寝床内気候を快適に保てる寝具が必要です。一般的には温度が32~34度、湿度が45~55%が快適な環境と言われます。でもでも、まさか寝具内に計測器を入れておくわけにはいきませんよね。やはり、よい寝床内気候を作るにはよい寝具が必要です。
ポイントは下記の通り
1.通気性・吸湿力・適度な弾力(柔らかすぎず硬すぎず)
2.冬のための保温力、隙間風を防げるフィット性
3.寝返りしやすいすべりのよい布地
これらの条件を考えると、やはり天然素材が優れています。羊毛や羽毛はもともと動物たちの体を守っていたものですから。夏以外の季節はは敷布団もパッドもウールはおすすめです。ウールは調節力に優れ、適度な硬さもあるので老人や病人用にもよく使われているんです。
掛け物は軽く、暖かな羽毛が最適。ただし、羽毛は産地が寒いところ(主にヨーロッパ)の表示があるかどうか要チェック。(暖かいところの鳥の羽を使っていると保温力がない)また、掛けるときは一番上にします。羽に重みがかかってつぶれてしまうと、せっかくの保温力がなくなります。
シーツはコットンをおすすめします。化学繊維については、静電気が起こりやすいもの、起毛がモコモコして寝がえりしにくいもの、洗ううちに毛羽立つものも多いので、注意!
夏は薄手のウール布団や綿のパッドに通気性のよい麻のシーツがいいと思います。
保温・吸湿性に優れた綿布団これから冬に向けては、伝統的な綿布団もいいものです。ちなみに私は、畳派で綿布団を使用しています。純綿布団は保温力と吸湿性もよく、適度な硬さが寝返りにもよいようです。
注意点はへたりやすいので、こまめに湿気をとること。布団に挟みいれるだけの乾燥機があるので便利ですよ。おばあちゃんの使っていた綿布団など一度打ち直しに出してみてはいかがですか? 不思議なほどフカフカになって、そこに横たわると何ともいえない懐かしさが感じられて、癒やされますよ。
さあ、一度みなさんの布団を見なおしてみてください。マットについては次回お話しましょう。
【今月のねむまめ】
①布団の歴史の研究をしている方のサイト「渡辺寝具」では伝統的な綿布団の優れた性能がよく分かります。昔ながらの寝具のよさを見直してみるのもいいかもしれません。
②大手寝具メーカーの寝具セミナーや快眠セミナーも自分にあった寝具を見つけるのに最適。寝具を扱う「東京西川」では、全国各店の店頭にて、眠りのセミナーを随時開催。ぐっすり眠るためのポイントや、寝具の正しい選びかたなど、わかりやすく教えてくれます。サイトをチェックして出かけてみてはいかがでしょう。
(橋爪明子)