仕事で重要なポストについたり、または結婚・出産をしたり。学生時代のように気軽に友だちと会える時間が減ってくる30代。この先ずっとこんな感じかと思うと、ちょっぴり寂しく思うもの。そんなときに心に響いたのが、サン・テグジュペリの「星の王子さま」です。
作中に出てくるキツネが、星の王子さまに仲よくしてほしいと頼むシーンで、星の王子さまは、キツネと仲よくなりたいけど暇がないといいます。そんな王子さまにむかって、キツネはこう言いました。
「人間ってやつぁ、いまじゃ、もう、なにもわかるひまがないんだ。あきんどの店で、できあいの品物をかってるんだがね。
友だちを売りものにしているあきんどなんて、ありゃしないんだから、人間のやつ、いまじゃ、友だちなんか持ってやしないんだ」
「あんたが友だちがほしいんなら、おれと仲よくするんだな」
「しんぼうが大事だよ」(「星の王子様 オリジナル版」岩波書店 P.98より引用 )
友だちは店で買うように簡単にはいかないから、辛抱強く少しずつ距離を縮めていけば仲よくなれるというのです。
そしてしだいに仲よくなった2人でしたが、わかれる時がきました。わかれを悲しむキツネをみて、王子さまは言います。わかれて悲しむくらいなら、仲よくなってもいいことはないと。でもキツネは否定します。この先、王子さまの髪の色に似た麦畑をみるたびに、王子さま思い出してうれしくなると。
学生時代の友だちって、こういう関係なのかもしれません。ずっと会っていなくてもときどき思い出してうれしくなる存在。一度本当の友情が芽生えたけど、もう会えなかったり、お互いの環境が変わってなかなか会えなかったり、それでも今も大切と思える人。そんな特別な存在が人生の糧になるんだなぁと思いました。
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(知恵子)