シワやシミを隠すために、厚くなっていく化粧。そんな自分に気づくたび思うのが、「年を重ねるごとにキレイになりたい」ということ。でもそんなことって可能なのでしょうか?
実はその不可能を可能にした女性がいました。彼女は40歳のときに、パートナーからこのように詠われていたのです。
「あなたはだんだんきれいになる」
をんなが附属品をだんだん棄てると
どうしてこんなにきれいになるのか。
年で洗はれたあなたのからだは
無辺際を飛ぶ天の金属。
見えも外聞もてんで歯のたたない
中身ばかりの清冽な生きものが
生きて動いてさつさつと意慾する。
をんながをんなを取りもどすのは
かうした世紀の修行によるのか。
あなたが黙つて立つてゐると
まことに神の造りしものだ。
時時内心おどろくほど
あなたはだんだんきれいになる。(『智恵子抄(高村光太郎著/新潮文庫)』P.74より)
これは詩人・高村光太郎が妻の智恵子のことを詠んだ詩です。「時時内心おどろくほど あなたはだんだんきれいになる」女性なら、誰もがこう思われたいのではないでしょうか。
智恵子が年を重ねるごとにキレイになった理由
ですがその背景では、結婚後お金に困った智恵子が、独身時代の着物をだんだん着なくなり、ついに無装飾になり、家ではセーターとズボンで通すようになったのだとか......。そして光太郎氏にとっては、それがかえって美しい調和を持ってると感じていたようなのです。
智恵子の場合は、仕方なく質素になりました。ですがお金があろうとなかろうと、無駄を省いた女性はキレイに見えるのかもしれません。
モノだけでなく、必要以上に自分を飾り立てる見栄や虚栄といった附属品を捨て、外聞も歯がたたないくらいに凛とした姿勢を保つことが、女性を美しくさせていくのですね。「年を重ねる」という言葉より、これからは「年ごとに洗われる女性」をめざしたいものです。
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(知恵子)