人類の歴史上「イビキ」は熟睡のサインであったようです。
快眠を妨害しているイビキ
世界中の民話や伝説の中で、男が寝入ると、必ず「大きなイビキをかいて寝ています」という描写が出てきます。蛇や狼までがイビキをかいて眠る、「ジャックと豆の木」の話でも「大男がイビキをかいて眠っているすきにジャックが金の鶏を......」という具合で、「イビキ=熟睡」という図式は子供の頃にしっかり植えつけられています。
「いびきで発電 お父さん 大忙し」
ねむりのイロハカルタより 切り絵:ナカニシカオリ ©ナカニシカオリ スタジオ・ソムニナ
ここで問題です。○か×で答えてみてください。
□イビキは深い眠りに入った証拠である。
□イビキをかくのは太ったおじさんだけである。
□イビキが死に至る病気につながる。
どうでしたか? 答えはすべて×です。
実はイビキは、熟睡どころか、眠りが完全に妨害されている状態。イビキの主は記憶にないようですが、苦しくなって目覚め、胸を掻きむしったりするケースもあるんです。
重度の睡眠時無呼吸症候群を長い間(10年)放っておくと、10人のうち4人の割合で循環器系の病で死に至といわれています。だってイビキは、一晩中誰かに頚(くび)を絞められていると同じ恐ろしい状態なのだから。空気が吸い込めず酸欠になり、睡眠が妨げられて睡眠不足になる。一時的ならいいのですが、慢性になると「酸欠と寝不足」のセットでは体にイイわけがないですよね。
顎の大きさや歯並びもイビキの原因に!
イビキは、気道が狭まり、空気が通りにくくなって音が出る仕組み。肥満で口蓋に脂肪がついた場合のほかにも、顎が小さい、歯並びが悪い、口呼吸をする、などもイビキの原因になるので、イビキストには、太った男性だけでなく、痩せた人も女性も子供もいます。
特に女性は、女性ホルモンのエストロゲンが加齢で少なくなると、首の筋力が落ちて、イビキに繋がるんです。そんな理由からも、50代以降は女性の方がイビキストの割合が増えるのですって!
でも女性は恥ずかしがって、イビキストであることを隠している人も多いようです。確かに昔は、イビキが原因で結婚できなかったり、離縁されたりということがあったのです。男性はお咎めなしなのに......。
女性のイビキストは友人との旅行でも部屋を別に取ったり、電車の中で絶対寝ないようしたりと心のストレスも大きいですよね。
そんな人に朗報があります。イビキが重度でなければ、マウスピースという方法があるんです。これは口にはめるだけで顎の位置をイビキが出ないように変えてくれるのです。値段も手ごろで、ポシェットにポイと入れて持ち運べるので、おすすめです。
酸欠と寝不足では体の修復がうまくできません。ツヤツヤお肌の健康美人であるためにも、自分はイビキストかな? と思ったら、恥ずかしがらず睡眠クリニックを訪ねてみましょう!
【今月のねむまめ】
イビキのことをもっと知りたいなら、世界的なイビキ博士・池松武之亮氏の研究資料が見られる「いびき研究所・資料館」へ。そして、睡眠のために落語を聞いてみるのもおすすめ! 笑いは快眠に繋がります。「いびき駕籠」は、「いびき=熟睡」と考えられているの典型的な噺。眠る前にぜひ!
住所:千葉県野田市中野台226
TEL:04-7123-0123
入館料:無料 ※ただし、見学は電話による予約が必要(予約制)
photo by Thinkstock/Getty Images
(橋爪明子)