今でも象牙を得ようと、野生のゾウの密猟が続けられています。今回は、そんな野生のゾウに関わった一人の女性のお話をご紹介します。
130頭もの身寄りのないゾウの赤ちゃんを育てた女性
アフリカ・ケニヤに住むダフネ・シェルドリックという女性は、ツァボ国立公園で様々な野生動物の生態を見てきました。1977年に同士であった夫が亡くなった後は、動物の孤児のための保育園で精力的に働き、130頭もの身寄りのないゾウの赤ちゃんを育て上げました。そのなかには、親が象牙の密猟によって亡くなってしまった赤ちゃんのゾウも含まれています。
ゾウの保育は、2年間もの間ミルクをあげ続ける必要があります。ダフネは、長年の経験から導き出した独自の方法でミルクをあげています。またゾウの保育をする一方で、赤ちゃんのゾウが野生の中でも生きていけるようにリハビリもしなければなりません。こういったダフネの活動の裏には、「エレファント・キーパー」と呼ばれる赤ちゃんゾウの受け入れ先の人たちの涙ぐましい協力体制があるから。そして、約50年にもわたって、ゾウに向き合ってきたダフネの専門知識は、アフリカ全般のみならず、インドやタイ、スリランカのゾウをも助けるための役立っています。
「人間と同じように感情を持った動物」であるゾウを救いたい
約50年間、ゾウを守り続けたダフネは、最近出版された自伝「ユニストワール ダムール アフリケンヌ」の中で、アフリカゾウの危機についてつづっています。アフリカでは、長きにわたってその象牙のためだけに、ゾウの密猟による迫害が行なわれてきました。最近では、中国の富裕化につれ、その価格もはねあがってくる現象が見られ、象牙の需要が一層増してしまっているのだそう。
「ケニヤに生息するゾウは、昔は10万頭いたのが、最近ではたったの3,000頭にまで急速に減少してしまいました。この現象は、ケニヤだけにとどまらず、アフリカ全体で多くのゾウが日常的に命を落とし、絶滅の危機に瀕しているのです」
と、ダフネは著書のなかで訴えています。さらに、
「ゾウ達は、その社会の中で、私たち人間と同じような生活をしています。人間と同様に、家族との絆を大事にし、感情をもっています。そんなゾウの自然の社会組織が、密猟者たちによって脅かされているのです」
ともダフネは語っています。そのため、密猟によって与えられるゾウへのストレスははかりしれません。密猟によって殺されてゆく年寄りのゾウの知恵がなければ、人間と同様に家族は崩壊してしまい、生き残ったゾウたちに取り返しのつかないトラウマを与えているのです。
ダフネはこの危機に立ち向かうべく、今もゾウの保護に取り組んでいます。また、ダフネ独自の鋭い観察眼や野生動物の心理への知識、誠実さ、共感の深さなどで野生動物のために動いてきた偉業は、数々の受賞へとつながり、その功績はエリザベス女王からも賞賛を得ているほど!
ひとりの女性のちからが国全体への活動に影響を及ぼしたという例とも考えられます。その正義感と行動力、継続力はまさに偉大です。
[Daphne Sheldrick]
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photo by Thinkstock/Getty Images
(下野真緒)