今回中村さんに教えてもらったのは、「火鍋」のレシピ。スパイスを少し買い足せば、おうちでも本格的な火鍋を簡単に楽しむことができます。おうちで食べて温まりましょう。
野菜をたっぷり摂れて調理は簡単!鍋は忙しい日にピッタリ
まだまだ寒い日が続くなか、食べたくなるのが鍋料理。ひとつの鍋で食材を煮るだけなので、調理がとても簡単です。野菜や肉、魚、豆腐などの食材をたっぷり入れて、栄養バランスよく食べることができます。
鍋のスープは、食材のうまみを味わうことができ、野菜から溶け出した水溶性成分(ビタミンCなど)も摂ることができます。
また、空気が乾燥する時季は、気づかぬうちに体内の水分が奪われる隠れ脱水になることも。温かいスープは、体を温めて代謝を促すとともに、水分補給にもなります。鍋の蒸気で部屋の加湿にもなり、喉や肌も潤します。
鍋料理にはぜひコレ入れて!おすすめの食材
ひと鍋に何種類もの食材を入れて食べられるのが鍋料理のいいところ。
牡蠣は、2個でおよそ1日分の亜鉛を摂ることができます。冬が旬のぶりは、DHAやEPAが豊富で血流を促す作用も期待できます。鍋によく入れる春菊や、ほうれん草、小松菜などの緑の葉野菜は、食物繊維やビタミン、ミネラルの摂取に。きのこにはビタミンDが含まれることも注目です。ビタミンDは紫外線を浴びて体内で生成することができますが、日照時間の短い冬は生成量が減りがちに。食事でも意識したい栄養素です。
牡蠣…亜鉛が豊富で、2個で約1日分の亜鉛の摂取が可能。亜鉛は不足すると味覚障害や貧血リスクが高まります。 えび… 高タンパク低脂質。赤い色素成分アスタキサンチンは抗酸化作用があります。 ぶり… 脂がのった旬のぶりは、血流を促す作用のあるオメガ3脂肪酸のDHA、EPAが豊富。血合いの部分は鉄を含み、貧血予防にも。 ねぎ… 血行促進作用や殺菌作用があり、体を温める効果が期待できます。風邪予防にもおすすめ。 春菊、ほうれん草、小松菜など… 食物繊維やビタミン、鉄やカルシウムなどのミネラルが豊富。緑の色素成分「クロロフィル」は抗酸化力が強く、活性酸素を除去する働きが。病気を予防しデトックス効果も期待。 きのこ類… 食物繊維が豊富な低カロリー食材。カルシウムの吸収を助ける働きを持つビタミンDも含みます。普段あまり使わない食材も鍋なら手軽に取り入れられます。さまざまな食材を使ってみるといいですね。
鍋料理、脂質や塩分の摂り過ぎには気をつけて
鍋で気をつけたいのが、まず脂質の量です。タレや鍋つゆは油脂が多く含まれるものもあり、脂質の摂りすぎにつながることも。豚バラ、鶏モモ肉など食材によっては脂質を豊富に含むため、食材選びや食べる量には気をつけましょう。
また、鍋料理は汁(スープ)も摂るため、塩分にも気をつけたいものです。塩分の摂りすぎは、むくみの原因になりますし、高血圧にもつながります。肉や魚、野菜など素材からとれるだしをいかしたり、スパイスを活用したりすることで薄味でもおいしく仕上がります。
おうちで作る火鍋の決め手はスープにあり!
今回ご紹介するのは、体が温まり代謝が上がる火鍋レシピ。中国の家庭料理として親しまれていた味を、家でも手軽に味わえるようにアレンジしました。
火鍋は、にんにくやしょうが、唐辛子、数種類のスパイスを使って作ります。食べるとポカポカあたたまり、寒さで体が冷える時季や疲れがたまっているときに特におすすめです。
ただ、アツアツで食べたり辛くしすぎたりすると、粘膜がやけどすることもあります。胃腸が弱っているときは特に気をつけましょう。また、辛いものに加えて火鍋は香辛料を使います。香辛料を控えたほうがいい妊娠中は気をつけましょう。
「五香粉」はあると便利。火鍋のスープの作り方
火鍋の決め手はスープです。作り方さえ知っていれば、好きな食材を入れていつでも簡単に味わうことができます。
これは火鍋スープに入れる定番の材料(※すべてを用意しなくてもOK。詳細は本文に)。右の皿の大きな実はナツメ、その下はクコの実。左の皿にあるのは、下からシナモン、八角、クローブ、赤唐辛子、花椒。中央下の皿は「五香紛」。五香粉は左の皿の赤唐辛子以外に陳皮などが入ったミックススパイスなので、1本あると便利。火鍋は、ナツメやクコの実、しょうが、にんにく、香辛料をたっぷり使うのが特徴。ただ、いろいろな香辛料を用意するのはちょっと大変です。そんなときに私が使っていて便利なのが、「五香粉」という中国のミックススパイス。シナモン、クローブ、花椒、八角(スターアニス)、陳皮(みかんの皮)などがブレンドされていて、持っているととても重宝します。
まずは火鍋のスープの作り方から見ていきましょう。
<材料>
だし汁(中華だし、和風だし)…1ℓ
しょうが…1カケ(10g)
にんにく…1カケ(10g)
五香粉…小さじ1
粉唐辛子…小さじ1
ベニナツメ…4個
クコの実…大さじ1
しょうゆ…大さじ3
酒…大さじ2
ごま油…適量
<作り方>
1.鍋にだし汁、スライスした生姜とにんにくを入れ、中火にかけゆっくり沸騰させる。
2.沸騰したら、五香粉、粉唐辛子、ナツメ、クコの実、しょうゆ、酒を加える。5分ほど煮たら出来上がり。
<ポイント>
スープは冷蔵で1週間ほど保存可能。多めに作って冷蔵庫に入れておき、必要なときに鍋に入れて使います。余った食材をさっと煮るだけで一人鍋も手軽にできます。スープをお好みで、唐辛子や豆板醤を入れて、香りや辛さの調整をしてもいいですね。
一人分300kcalで大満足!ヘルシーで美味しい火鍋の作り方
「火鍋スープ」があれば、あとは簡単! 豚肉や豆腐、白菜やしめじ、長ネギなどの身近な食材で作る火鍋のレシピを紹介します。野菜たっぷり、たんぱく質もしっかり摂れて、なんと1人分287kcal。簡単レシピをぜひ参考にしてください。
<材料(2人分)>
えび(殻つき)…100g
豚肉(しゃぶしゃぶ用)…100g
豆腐…100g
白菜…200g
チンゲン菜…100g
しめじ…100g
長ネギ…50g
…500ml
<作り方>
1.えびは背ワタを竹串などでとる。豚肉、豆腐、野菜、きのこは食べやすい大きさに切る。
2.鍋(土鍋など)にを入れて煮立たせる。
3.1を加えて火が通るまで煮る。アクが出ればすくう。
■ 「火鍋」栄養量
エネルギー287kcal、タンパク質28.1g、脂質12.3g、糖質17.3g、食物繊維4.3g、食塩相当量3.2g
スープの辛さはお好みで調整を。最後にごま油を回し入れて香りづけをしたり、豆乳(100mlほど)を加えてまろやかに仕上げたり、アレンジも楽しめます。火鍋スープは「やや辛いかな」と感じるぐらいでも、食材の水分やうまみが加わることでマイルドに仕上がります。ぜひご自身で作って好みの味に近づけてみてください。
中村美穂(なかむら・みほ)
管理栄養士、フードコーディネーター、プラントベースフードアドバイザー、国際薬膳調理師、ローフードマイスター1級。料理好きから管理栄養士となり、おいしく楽しく体にやさしい料理やお菓子を探求。商品開発や保育園栄養士の経験を活かし、料理教室「おいしい楽しい食時間」を開催。食事講座や栄養相談、書籍・雑誌・企業のレシピ提供も多数担当している。
撮影/中山実華、 構成・編集/小林ゆうこ