こころとカラダの調子にまつわる素朴な疑問に、専門家が答える連載「こころとカラダQ&A」。今回は、「必要以上に自分を責めてしまう」という人に、公認心理師の佐藤セイさんがアドバイスをくれました。

すぐに相手の表情や態度をうかがって、疲れてしまう……

Q:相手の表情が浮かなかったり、LINEの返事がそっけなかったりすると「何か、悪いことしたかな」と気になります。また、何かにつけて「自分が悪い、自分のせい」と自分を責めてしまいます。考え方のクセでしょうか。気持ちがラクになる考え方のコツが知りたいです。

A:悪くないのに自分のせいにしすぎるときは「視点」と「視野」を調整して

「自分が悪い」「自分のせいだ」と自分を責めるのは苦しいことですが、本当に自分が悪かった部分について「自分が悪かったな」と反省することには意味があります。ただし、自分が悪くない部分にまで「自分が悪い」と感じるのは問題です。「自分が悪い」と思うことの意味と、過剰に「自分が悪い」と思ってしまう人に試してほしい対処法を紹介します。

「自分が悪い」と思うことにも意味がある

友達や家族と険悪になったときに、「自分が悪い」と一切思えず、相手のせいにしてばかりいる人は、自分に問題があっても気がつかず、いつまで経っても成長できません。

一方、「自分が悪い」と思える人は、「自分の言葉がきつかったかも」と反省できる人。「次からはもっと優しい言い方にしよう」と、これまでの自分とは少し違った自分へと成長することができます。つまり「自分が悪い」という思いもほどほどであればより良い自分になるために必要なスパイスだと言えます。

しかし、「自分が悪い」と思い過ぎて心身の調子を崩したり、日常生活に支障をきたしたりするのなら、対策が必要です。

多角的な視点と、広い視野を持つことが大事

過剰に「自分が悪い」と思ってしまう場合には、次の2つの方法を試してみてください。

1. 気持ちを紙に書き出す

1つは「自分が悪い」という思いを紙に書き出すこと。 「自分が悪い」から派生する「全部自分のせいだ」「申し訳ない」「明日嫌がらせされるかも」など浮かんでくる気持ちはどんどん紙に書き出すのです。

頭の中だけで難しい計算をしようとしても途中でわからなくなってしまいますが、紙に書くと意外と簡単に解けることがありますよね。気持ちも頭の中だけで整理することは難しいですが、紙に書き出してみると「これはネガティブに考え過ぎていたな」と客観的に分析しやすくなります。

2. 「自分が悪い」以外の可能性を考える

「自分が悪い」と考えてしまうのがクセになっている人は、「自分が悪い」以外の可能性をいくつか考えてみるのもよいでしょう。「友達と険悪になったのは自分のせい」と思ったら、まずはそう思う根拠を分析してみます。

【根拠】
・友達に上司の愚痴を言ったらつまらなさそうな顔をした
・別れ際にいつもなら手を振ってくれるのに今日は振ってくれなかった
・「今日はありがとう」とLINEしたけどスタンプしか返ってこない

いくつか「根拠」をピックアップしたら、一つひとつの根拠に「反論」してみましょう。

【反論】
・友達に上司の愚痴を言ったらつまらなさそうな顔をした
「つまらなさそう」と思ったけど、本当は単に眠かったのかも
・別れ際にいつもなら手を振ってくれるのに今日は振ってくれなかった
バッグが重くて手を振りたくなかっただけかも
・「今日はありがとう」とLINEしたけどスタンプしか返ってこない
スタンプが返ってきたんだから本当は怒っていないかも

大切なのは「反論」の意見に100%納得できるかどうかではなく、いろいろな視点から考えることです。「自分が悪い」という考えに固執した状態から視野を広げるだけでも、心がラクになります。

「自分が悪い」と感じてつらい場合には、ぜひ試してみてください。

佐藤セイ(さとう・せい)
臨床心理士、公認心理師。精神科・心療内科、神経内科(もの忘れ外来)、リハビリテーション科、児童相談所、療育施設、刑務所などに勤務。現在はスクールカウンセラーをしながら、ライターとしても活動する。

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