「言霊」をポジティブに作用させるには
Q:ネガティブなことを口すると、本当にその通りになってしまいそうで、慌ててポジティブに言い換えたりします(笑)。言霊って本当にあるのでしょうか。ポジティブに作用させる方法はありますか?
A:心理的な観点からすると、言霊は「ある」と言えます。
日本では古くから「言葉には霊的な力『言霊』が宿り、現実の生活に影響を与える」と信じられてきました。本当に言葉に霊的な力が宿っているかはわかりませんが、少なくとも心理学的な観点からは言霊が実在することが証明されています。
心理学の観点から「言霊」を解説すると……
言霊を実現する心理学的な観点として「プライミング効果」と「認知的不協和理論」が挙げられます。
1. プライミング効果
プライミング効果とは、事前に示された情報に影響を受けて、行動や思考が変化する効果のこと。
例えば、子どもの頃に「ピザって10回言って」と指示して「ピザ、ピザ、ピザ……」と繰り返させたあと、ひじを指さしながら「じゃあここは?」と尋ねるといった「10回クイズ」をやったことはありませんか?
これは「ピザ」という事前情報に影響を受けて、ひじを見ても「ひざ」という言葉が浮かびやすくなるプライミング効果を利用した遊びです。
このプライミング効果を代表する実験が「フロリダ効果実験」です。
この実験では、被験者である学生に「提示された単語を使って文章を作りなさい」と指示が与えられました。その中の一部の学生には「しわ」「忘れっぽい」「薄毛」など、高齢者をイメージする単語をたくさん混ぜました。
その後、学生たちの歩く速度を測定したところ、高齢者をイメージさせる単語を多く提示されたグループは、そうでないグループに比べ、歩く速度が明らかに遅いことが判明しました。
高齢者をイメージさせる単語が、学生に高齢者のような行動を取らせたのです。
つまり、普段から「どうせ自分にはできない」が口癖だったり、「あなたにはできない」という言葉を投げかけてくる人が身近にいたりすると、プライミング効果によって「できない自分」としての行動を無意識に取ってしまう可能性があります。
2. 認知的不協和理論
言霊の実現に関わるもうひとつの心理学的な考え方が「認知的不協和理論」です。
私たちの脳は自分の言葉(考え)と行動が一致していないと、その葛藤に耐え切れずに無理やり言葉か行動のどちらかを変え、葛藤状態を解消させることがあります。
例えば、本当はスムーズに発表できるのに「私の発表なんて失敗するに決まっている」と発言していると、
・【言葉】私の発表は失敗する
・【行動】本当はスムーズに発表できる
という2つの間で葛藤が生まれます。
このとき、「いや、私はスムーズに発表できるんだ」と【言葉】を変えられればいいのですが、そうできない場合には、【行動】のほうが変更されてしまいます。
つまり、「私の発表は失敗する」という【言葉】に合わせるように、無意識に発表で噛んでしまうなどの【行動】を取り、「できない自分」に言葉と行動を一致させる形で葛藤状態を解消してしまうかもしれないのです。
言霊を上手に活用するためのアイデア
ここまで、ネガティブな言霊によって無意識に「ネガティブな行動」を取ってしまう例を挙げてきましたが、逆にポジティブな言霊を上手に使って「ポジティブな行動」を増やすことも可能です。
そのために試したい2つの方法をご紹介します。
1. 「ほめ日記」をつける
ほめ日記は自分で自分を褒めるポイントを探して、ほめ言葉を書く日記です。
私たちの脳は同じ失敗や危険を回避するために、ネガティブな出来事は記憶に残りやすくなっています。一方、ポジティブな出来事は忘れてしまいがちです。
しかし、ほめ日記を毎日書く習慣があれば、「自分なんてダメだ」と感じ、口に出してしまっても、ほめ日記を見返すことで「自分にもちゃんとできていることがある」と気づけて、ネガティブな言霊から解放されます。
2. ポジティブな言葉を見えるところに置く
ポジティブな言葉を目に入りやすいところに置くのもおすすめです。
・「こうなりたい」と思えるような偉人の言葉
・これまでにかけてもらったうれしい言葉
・大好きな本で見つけた素敵なフレーズ
など、自分の心を支えてくれる言葉たちを集めてみましょう。
これらのポジティブな言葉は、手帳に書き写す、スマートフォンの待ち受けにするなどして、いつでも見られるよう準備しておきます。
ネガティブな言霊に引っ張られそうになったときには、ポジティブな言葉を声に出して読めば、前向きな自分を取り戻しやすくなります。
言霊は心理学の「プライミング効果」や「認知的不協和理論」と関わりがある現象です。どちらも言葉が行動に影響を及ぼすことを示しています。
つまり、「こうなりたい」や「自分にはできる」という前向きな言葉にふれれば、行動もその言葉に近づいていくということ。
自分を輝かせてくれる言葉にふれるよう心掛けてみてくださいね。
佐藤セイ(さとう・せい)
臨床心理士、公認心理師。精神科・心療内科、神経内科(もの忘れ外来)、リハビリテーション科、児童相談所、療育施設、刑務所などに勤務。現在はスクールカウンセラーをしながら、ライターとしても活動する。
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コメント
言霊は客体ではなく主体を研究する学問らしい。
コトタマ学で検索すると色々出て来る。
公認会計士に面白いこと聞くなぁって思ったら公認心理士だったでござるの巻
公認心理士は新しい資格だからね仕方ないね
プライミングと認知的不協和なんて学部生でも説明できる内容だけど
(ID:516756)
バナーは心理士なのに記事は心理師で齟齬のチェックもできてない記事だけどね 仮にも言葉扱ってる記事でさー